重版すべきか、返本を待つか……
某中堅出版社に勤める友人は「重版って、札束を刷るようなものよねー」と言っていたが、残念ながらロゼッタストーンでは、まだそのような体験をしたことがない。本が足りないからと喜んで重版しても、刷り終わった頃には売れ行きがピタリと止まり、最初に委託配本したものもどっさり返品が返ってきて、結果的にたくさんの在庫に頭を抱える……なんていうケースもあるのである。そうなると、初版で出ていた利益を重版の印刷代が食いつぶすことになり、「あー、もうちょっと待っていれば、返本だけで在庫は十分だったのに…」と後悔することになる。
ロゼッタストーンが11月に出版した本は『誰にでもできる極真カラテ 入門編』(長谷川一幸著)と『困中記』(菅野良一著)の2点。そのうちの1点である『『困中記』は、著者が所属する演劇集団キャラメルボックスの公演で予想以上に売れ、劇団から追加注文が入ったのだが、在庫をかき集めても100冊くらい足りなかった。当然、即重版したいところだ。しかし、公演はもうすぐ終わり。著者が次に出演するのは1年後で、しばらくは劇団からの大量注文は期待できない。書店の注文だけなら、おそらく返本分で回していける……というような状況で、重版すべきかどうか非常に悩んだ。
書籍をはじめた当初は「本が足りな~い♪」と、単純に喜んですぐに重版していたが、苦い経験を重ねると、どうしても慎重になってしまう。今回はもう少し様子を見ようか……と考え始めていた。ただ、本を欲しがってくれるお客さんが100人いるのに、肝心の本を提供できない…というのは、出版社としては非常に辛いことなのだ。
そんなとき、小部数印刷が得意な印刷会社の人がたまたま訪ねてきてくれて、500部だけ増刷することができた。これまでは500部も1000部もほとんど印刷費用が変わらないので、最低1000部は刷らないと割に合わなかったのである。損をしないというだけで、あまり利益にはならないのだけど、たった500部でも、重版できるのはやっぱり嬉しい。
これが零細出版社の重版事情である。いつかはロゼッタストーンでも「札束を刷る」感覚を味わってみたいものだ。さて、いつになることやら……。