日本でいちばん小さな出版社
版元ドットコムに参加して1年になりました。自己紹介を兼ねて「どういう出版社なのか、どういう本を出しているか」を語りたいところですが、これがなんとも「好き勝手にしている」としか言いようがありません。
なぜかと申しますと、うちは突然ひょんなことから出版業を始めてしまった異業種からの参入組で、5年目の今でも「どういう出版をしていくか」を模索しているような状態だからです。
知識も経験もコネもないのに出版社になると、それはもうわからないことだらけです。おまけに出版不況なんてことも当時は知らず、出した本が返ってきてようやく「ゲッ! こりゃ簡単じゃないかも…」と思ったくらいでした。
それでも、もともと本好きだったこともあり、半年に1冊の新刊というペースでなんとか続けてきました。目の前の疑問を片付けていくだけで精一杯なので、業界の大きな課題などはどこ吹く風。知らぬが仏とでも言いましょうか、携帯電話もインターネットも電子出版もほとんど気にせずに、今に至っています。
他業種から参入すると、「せっかく本を作ってるのに、何もわざわざ…」という気持ちがあるのです。ネットとの融合ならネット業界から仕掛けるほうがラクそうだし、一般的に言う金儲けだって他の業界でするほうが簡単そう。
そんなことより「本の世界」に対する憧れのほうが強いのです。戦後の混乱とか、表現の自由と規制とか、作家と編集者が銀座のバーでどうのこうの…とか。ただの読者だった頃に想像して楽しんでいた「出版界」にいるのだ!と思うだけで幸せを感じます。
というわけで、大流通に揉まれながらひとりで(あ、うちはひとり出版社です)細々と本を作り続けています。なんとか続けていけるだろうと目処が立った時点で、版元ドットコムに参加しました。
そしてなんと(ここから宣伝)、「版元と名乗るのは少々気が引ける」状態だった頃の私のドタバタ振りなど、取次口座取得から現在に至る顛末が一冊の本になり、この4月下旬に晶文社さんから出ました。「慣れない出版の世界で孤軍奮闘する著者の“なせばなる!”実録ライフストーリー」です(←ちょっと恥ずかしい)。
『日本でいちばん小さな出版社』(晶文社)
ISBN978-7-7949-6709-1 C0095 本体価格1600円
どうぞ、笑ってやってください。