語学書ですが映画の原作でもあります。
皆さんは『天下無賊』という映画をご存知ですか? 2005年正月に公開されるやいなや、初日から3日間の興行収入で同時期に公開された『カンフーハッスル』を上回り、二週間で八千万人民元(およそ10億円)を稼ぎ出した中国の大ヒット映画、それが『天下無賊』です。
監督・脚本は「正月映画」の第一人者として中国の大衆から大きな支持を集めている馮小剛(ファン・シャオガン)。主演は『インファナル・アフェア』(つい最近、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモン主演で『ディパーテッド』としてリメイクされたことでも有名)や『LOVERS』(金城武や日本でもお馴染みのチャン・ツィイーとの共演)、『墨攻』(日本の小説及び漫画が原作の中国映画)などの話題作で知られる劉徳華(アンディ・ラウ)。ヒロインは台湾で演技派女優・歌手として知られる劉若英(レネ・リウ)。脇を固めるのは馮小剛監督映画の常連、葛優(グォ・ヨウ)と、若手の注目株、李冰冰(リー・ビンビン)。かなり豪華な顔触れです。
この大ヒット映画がついに日本でもゴールデンウィークに『イノセントワールド−天下無賊−』として公開されます。公開の時期や映画館など詳しくは映画の公式ページをご覧ください。
弊社ではこの映画の原作となった短編小説『天下無賊』を中国語でそのまま読んで味わうための語学教材を刊行しています。
この本そのものは2005年6月の発売です。前半は中国語の本文にピンイン(発音表記)と語注、後半は中国語の本文と日本語訳。音読教材としても活用できるように全編を朗読した音声CDが付録でついています。私は中国語はまったく読めないのでこの本の日本語訳の部分だけしか読んでいませんが、純真な心とは何かを考えさせてくれる味わい深いストーリーには心を打たれました。
企画の段階から「映画の原作」ということは強く意識していましたが、日本での公開がなかなか決まらないこともあり、映画の原作としてよりも読解の教材として地道に手堅く営業をかけてきました。教材としての質は多くの方に認めていただけたようで、幸いなことに発売から一年を待たずに増刷となっています。同じタイプの読解教材を望む方の声も多かったため、この3月には
『中国語で短編小説を読もう 〜靴屋と市長〜』も刊行となりました。
語学というのは学習参考書や実用書と重なる部分の多いジャンルです。なので、映画やテレビなどの華やかな話題とはなかなか接点はありません。そんな弊社で映画の原作ですから、社内的にはすっかり舞い上がってしまって……、ということもありませんでした。テレビにしても映画にしても、盛り上がりはあっけないものです。書籍はそれよりもう少しばかり長いスパンで考える必要があります。世の中の流行り廃りに流されない書籍作りと販売、言うは易く行うは難しですが弊社ではそういう方向を目指しています。
中国語に限らず、語学の学習を始めるきっかけは人それぞれではないかと思います。仕事で必要だからとか留学するためにといった実用的な動機だけでなく、映画を字幕無しで見たいとか小説を生の文章で読みたいとか、そういうことも立派な動機だと思います。今回の『イノセントワールド −天下無賊−』をきっかけに中国語の学習をはじめようという方がいらしたら、弊社の『中国語で短編小説を読もう! 〜天下無賊〜』のことも思い出していただけると幸いです。
ところで、今回気になって調べてみたところ、版元ドットコムのデータベースに登録されている多数の書籍の中には他にも映画の原作がいくつも、と思ったら、原作だけでなく映画そのもののDVDまでありました。版元ドットコムの検索機能をうまく使うと思いがけない本(やDVD?)との出会いも生まれるかもしれません。画面上の「本の検索:」というところに探したい文字を入力して「検索」ボタンをクリックするだけです。狙ったものを確実に探すためには若干のテクニックと慣れが必要になりますが、なんとなく関心のある本との出会いであれば逆に面白い結果が得られるはずです。是非、お試しください。
『幌馬車の歌』(台湾映画『非情城市』の原作)
『アマーロ神父の罪』(メキシコ映画『アマロ神父の罪』の原作)
『サンサン』(中国映画『草の家』の原作)
『ケス』(イギリス映画『ケス』の原作)
『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』(アメリカ映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』の原作)
『チョムスキー 9.11 Power and Terror』(2002年アメリカ、2002年日本で公開のドキュメンタリー映画、DVD)