編書房の一週間
<2007年3月X日>
◎X市立図書館からお話会にあわせて本を売りたいので、150冊あずからせてください、と依頼される。あわてて裏の倉庫まで取りに行く。『お話会のプログラム』『三分間で語れるお話』『明かりが消えたそのあとで』『語ってあげてよ!子どもたちに』の4種類を詰め合わせて荷造り。このところ、委託本はほぼ100%完売。今度はどうだろう? いくらなんでも150冊完売は無理だろうな。
<3月■日>
親しくお付き合いしている著者の佐藤凉子さんから、「次はこんな本を翻訳したいけど、どうかしら?」と提案されてアマゾンで原書を買ってみた。私でも訳せるような簡単なものだったので、電子辞書を片手に最後まで訳してみる。あまり面白くないし、絵が好きになれない。この本はパスしてもらうことに。企画していてダメになった本が他にもあり、編書房は企画力が弱いなあと思う。
税理士から電話。「國岡さんの確定申告の件ですが、お金が戻ることになりました。どこの銀行に振込みますか」と聞かれる。毎年税金を支払いに行っていたのに、今年は戻るという。給料を大幅に下げたからか。毎年、毎年わたしの給料は下がる一方。「ところで今年度の編書房の売上はどうですか?」と言うので、「いつものように赤字路線を突っ走っていますよ」と笑って答える。この人は、決算説明に来るとかならず深刻な顔をして「今年も赤字です」と悲しそうに言うので、悔しいから「うちはわざと赤字にしているんです」と強がりを言うことにしている。
<3月△日>
前から箱詰にして売りに行こうと思っていた本を1箱、裏のブックオフに売りにいく。ほんとうは、売りに行きたい本がもっともっとあるが、とりあえず、置き場がなくてどうしようもなくなったものだけを持っていく。計算してもらうと4200円になったので、そのお金でまた、本を買ってしまう。それも一度読んで捨てたものを、また読みたくなり、ブックオフの100円コーナーで。100円コーナーで買ったのは『ミッドナイト・コール』『神の汚れた手 上・下』『イエスのビデオ 上・下』など。ブックオフでもらったお金がまだあるので、今度は新刊書店で『日本人の死に時』『相剋の森』『5』『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』『編集者という病』を買う。本を売ったお金では足りないが仕方ない。読みたいものは買う。アマゾンで買った古書も到着していた。
<3月▲日>
『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』(立花隆著、文藝春秋)を読み始める。あまりの面白さに読み続けて序論を読了してしまう。この本は序論がすばらしい。序論といっても本の半分(p238まで)を占めている。立花隆の猫ビルの中を歩き回りながら語りおろしたという形式になっている。文春の編集者がいっしょに歩き回り質問する。本棚のブロックごとに魅力的な本をごっそり紹介してくれる。二人の会話がたまらなく楽しい。立花隆はまったく博覧強記。そして天才。タイトルの『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』は比喩。500冊どころか、1000冊以上の本が詰まった宝のような本。
<3月▼日>
T社から連絡があり、「学校巡回見本」借用のお願いが来た。来年度も小社の本を学校巡回見本に加えてもらえた。うれしい。これに採用されると定期的に注文をいただける。見本用の本にラベルを貼り、荷作りをする。
<3月◎日>
二人のかたから原稿を読んでいただけますか、と電話があった。一人は小説を出したいとのこと。もう一人の方はビジネス奮闘記を出したいらしい。「それは自費出版として出版するのですか?」と聞くと、二人とも「出してほしいのです」と言う。それぞれ、ふさわしい出版社を紹介して、小社はお断りする。本を出したい人は相変わらず多い。
こうして、この週も終わった。編書房 國岡 克知子)
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