芸能スキャンダル報道の未来は明るい?
2005年4月に創刊し、それからまもなくの同年7月に代表が逮捕、向かい風のなかでなんとか刊行を続けている鹿砦社と月刊『紙の爆弾』なんですが、それでもなんとか続けられているのは「芸能」部門がまだまだ持っているから。「ジャニーズと裁判した鹿砦社」「芸能暴露本の鹿砦社」という弊社のイメージも多分にあって、例えば私が編集長として関わっている『紙の爆弾』にしても、芸能と同じく、いや、それ以上に力をいれている、「伊吹文明文科相の地元アーケード工事談合疑惑」や「御手洗キヤノン」、あるいは「9.11“捏造”テロ」などの社会問題の追及より、「藤原紀香結婚の裏側」や「吉本興業の内実」などの芸能ネタをトップに入れたほうが、売上が伸びます。
ただ、これは「鹿砦社だから」とは一概に言いきれない部分もあって、たとえば石原真理子の暴露本『ふぞろいの秘密』(双葉社)の成功や、朝のニュース(ワイドショー)番組「スーパーモーニング」が、これまで税金のムダ使い問題を中心に“硬派路線”を貫いてきたのを、4月の改編で芸能ニュースを増やしていくらしい、といったことにもみられるように、芸能報道、芸能スキャンダルはまだまだ需要がある、ということです。東国原宮崎県知事にしても、芸能報道の延長線上ですし。
いずれにしても、ちまたで言われるような「芸能が売れなくなった」ということは決してありません。出版全体の流れとして、「何かしら仕掛けが必要になった」ということは言えるかもしれませんが、その程度。結局、名誉毀損の賠償額の高騰だったり、大手事務所によるメディア支配だったりの報道・スキャンダルの封じ込めにより、自ら露出機会やインパクトを減らしてしまった芸能界やタレントそのものが元気をなくしただけで、読者や視聴者の潜在的な需要はそれほど落ちていないんです。
スキャンダルを隠し、「ただの人」の“フリ”をしつづけた芸能タレントたちは、いまや本当に「ただの人」になってしまいました。一般人の犯罪報道がやたら過激化したり、あるいは地方都市の税金使い込みの追及が派手になされたりする中で、存在感をどんどん失っていく彼らが、再び注目を取り返すためにやっているのが、まさに「ただの人」の人生で最も大きなイベントである「結婚・離婚」。しかし、これではチョウチン記事や、世間話のネタにしかなりません。それでも、今、一番の話題が藤原紀香—陣内智則の結婚ですが、その内幕については現在発売中の『紙の爆弾』にて報じていますので、ぜひお読み下さい。
ただ一方で、先に触れた石原真理子暴露本や朝のワイドショーの例をみると、多少、楽観的な展望もあるかもしれません。いわゆる“小泉劇場”の終幕で、後に残ったドロドロの政治、企業ネタに疲れてしまった読者、視聴者の存在があるのでは、というのが私見です。もっとも、芸能ニュースばかりが盛んになって、その裏に本当に報じられるべき問題が隠れてしまう、となればいただけませんが、真実の隠蔽なんて現時点ですでに起こっていることで、ならば、日常生活に対する「非日常としての芸能界」という状態に戻すことは、社会のバランスとしても良いことなのでは? などと考えています。