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地方に広がる検定試験

 「倉敷のある県は何県?」「オダギリジョー、B,zのボーカル稲葉浩志、MEGUMIの出身県は同じ県ですが、それは何県?」 ご存じの方は、かなり「岡山通」でしょうか。吉備人出版があるのは、その答の岡山県。
 こんなやりとりをすると、小社のことを覚えやすいし、より印象に残る。クイズを出題する手法をうまく使えば、企業や自治体のPR手段にも使うことができる。最近、地方都市についての問題を試験にする「ご当地検定」が全国各地に広がっている。大手の旅行代理店も、地方の観光都市に検定を核とした地域活性プランなるものを提案しているという。
 昨年の末(2004年12月)に京都商工会議所が実施した「京都・観光文化検定試験」は約1万人が受験し、公式テキストは5万部売れたという。この「京都検定」は全国の観光都市や大手の旅行会社を刺激した。観光振興と地域経済の活性につながればと、福岡、札幌、長崎、鹿児島、伊勢、奈良、鹿児島など全国各地の商工会議所主催で、検定実施が計画されている。
 岡山でも第1回「岡山文化観光検定試験」が、今年12月4日に実施される。「岡山検定」実施の実行委員会で試験日などが決められる中で、「受験する人が勉強するテキストも必要」と小社に参考書作成の要望があった。岡山は今年10月に国体が開催されて県外客のお迎えムードもあり、作るならできるだけ早くとのことで、要点整理の参考書を短期間で制作した。
 参考書の内容は観光、歴史、行事、自然、その他の5章の構成で、450項目のキーワード解説とした。現時点では試験申込の締め切り日前ということもあり、売れ行きは好調。岡山市内の主要書店では、数週間連続して上位にランクされた。この参考書の発刊1カ月後には、練習問題集(ドリル)も制作して緊急出版し、これも好調だ。
 このご当地検定が全国に拡大しているのは、地域経済の活性につながればという主催者の意図もあるが、雑学やうんちくブームなども背景にあるようある。テレビでも出題形式のバラエティ番組が多く、「忠臣蔵通検定」や「大人力検定」など様々な“雑学検定”も急増している。
 受験の対象者を、観光や旅行業の関係者を中心に想定していたが、実際の受験者や参考書の購読層の中心は、50、60歳代の中高年のようである。もちろん、腕試しに挑戦する若者も多い。観光関連の会社などへの就職活動にも、この資格を取得して積極的に自己アピールしてもらいたい。
 中高年などある程度歳をとれば、自然に自分が住む地域の歴史や文化に目を向ける人は多い。団塊の世代も興味を持つ方は多いだろうし、数年後の受験者増加の期待もできる。
 地元の人でも地域のことは、意外に知らないことは多い。これまで史跡の写真撮影に出かけて地元の人に場所をたずねても、名前も知らなくて困ったという経験は何度もした。この検定で、地方の人たちが地域のことを見直す契機にもなるだろうし、地域のことを知ることはその地域の活力になっていくだろう。それは個人だけではなく、企業や自治体でも地域の個性を知らなければ、自社商品の開発や販売戦略、地域PRもできない。地域のことを知る意味は大きい。
 小社としても、これまでの出版活動で蓄積してきたものを活用できるし、なにより自分の住む地域のことだから編集作業が楽しい。将来、2級や1級の検定を実施してそれぞれの参考書と問題集などができたら、次第に受験者が少なくなっていく……数年後が見えるような気もするが、今後は検定ムードをさらに盛り上げると同時にブームに終わらせない地道な取り組みも併せて考えていかなければならない。
上記の参考書『岡山文化観光検定試験

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