小社にとって欠かせない「おまけ」
小社では「ホンのおまけ」という、目録と通信を兼ねた読者向けの小冊子を作っています。先月、最新号が完成し、なんとかお盆休み前に発送を終えました。新書判16頁一色刷りのささやかなもので、表紙イラストと印刷以外、原稿書きから汗と糊まみれの封筒づめ、最後に近所の郵便局に出すまで、助っ人の手を借りつつもほとんど社内手作業でやっています。
10年前、オフィスエムは出版活動をはじめました。それまで多少の経験はあっても、「ゼロから自分たちで出版をはじめる」ことについては、すべてが初めての体験でした。暗中模索が続くなかで、ある大先輩が教えてくれたことが、読者へのDMです。「砂に水がしみこむようで結果がすぐに見えないけれども、出し続けなさい。きっと財産になるから」と。
以来、不定期刊ながらも12号となりました。「謹賀目録」「暑中目録」などと言いつつ年2回発行することもあります。新刊が出るたびに新しい読者=送り先も増え、DMを出すことが作業的にも経費的にも、一年のなかでそれなりの大仕事になっています。
発送後すぐ、注文ハガキが返りはじめます。おもしろいのは、メインでPRした新刊ばかりでなく、わりと地味というか、正直、普段あまり動かない既刊本の注文も多いこと。ベストセラーともロングセラーとも違うので、勝手にオフィスエムのスローセラー…ゆっくり売れていくので…と呼んでます(“今週のスローセラー”としてサイトで公開も考えたですが、売れないリストに思われてもマズイし…、躊躇してます)。一枚のハガキで5点、6点と注文を下さる方も多い。目録ならではの選び方というか、限られた情報を細部までじっくり読んで買って下さる方が、まだまだいることを実感します。
そして注文とともに、メッセージ欄に書かれた読者の声援がありがたく、なによりも嬉しいものです。目録には社員全員(4人)が書くコーナーがあり、社長からして零細出版社のキビシイ現実を正直に書いたりしますから、応援のメッセージがけっこう届きます。本の感想とは違って、出版社に対する意見や声援は、小さな版元であるほど貴重なものだと思います。もちろん全員でまわし読みして、「よおし今日も頑張るぞー!」と。ほんとうに、力が湧いてくる気がします。
こうして考えると、目録づくりから返信をいただくまで、「おまけ」とは言え小社にとっては大切な意味がある。読者とある程度直につながり、存在を意識することで、本づくりや営業といった、自分たちが出版活動をする上での心の拠り所を得ていると思うのです。自分たちの仕事や方向性を確認するいい機会にもなっている。
個人情報の関心が高まるなかで、DMという形態も変化しているようです。小社「ホンのおまけ」もどんどん送り先を増やすことから、読者との、より確かなつながりのための通信手段という段階に来ているような気がします。これからはインターネットが担う部分もあるでしょうし、すでに活用されている版元さんも多いのではないでしょうか。ぜひ参考にさせていただきたいです。