出版流通4題
1、取扱高別正味制の可能性
他業種では、基本的には取引高に応じて条件も変動する。ところが、出版界は、特に出版社と取次との取引条件は、口座を開設した当初からほとんど変更がなく、「封建的な身分制度にも等しい」(と慧眼にも指摘したのが、元新泉社社長の小汀良久さんだった)。
この硬直性について私が言いつづけているのが、取扱高別正味制とでもいうものだ。A取次との取引高が3年間連続して年○円以上○○円未満ならば正味を△にする、その後の3年間で年間取引高が○○円以上○○○円未満ならば正味を△△にする、しかし逆に売上が落ちれば▽にする。
これは小出版社には目の前にぶら下がったニンジンである。好条件めざしてがんばります、という次第だ。もちろん、そんなことを取次が簡単に契約するとも思えない。しかも、えさに釣られるなんて、と矜持を疑う向きもあるだろう。それを承知でなお、これは、「頑張れど頑張れどわれらが正味上がらずじっと手を見る」という小出版社の歯ぎしりだ。「取次は、小出版社を育てる立場に立て」と言いたい。
取次−書店間の取引条件についてはここではふれないが、正味の上限も下限も設定したなかで変動するのは、少なくとも新興の小出版社にとってはいい刺激だ。もっとも、再販制がなくなれば、いやがおうでも新刊ごとに売り値・買い値の交渉をすることになる。正味の変動も、定価販売をしてもいいという温室のなかでだけ可能な案ではある。
2、集品便を有料でも希望社に
客注品を一日でも早く届ける、そのために自社で品出しをして取次への納品を専門業者に委託している。その一方では、取次の集品便が、無料で毎日立ち寄る社もある。ところが、有料の取次集品便があるそうだ。
ここのところ取次の集品・返品業務が大きく様変わりをしてきている。いずれは遠方まで納品することになるのではないか、と言われている。そうなったら、いまの料金では専門業者も引き受けてくれまい。かといって、自社の負担も限界だ。
もしそうなるのだとすれば、取次の責任として、有料でもいいので集品便を回せ、と強く訴える。
3、定価表示
奥付から定価表示が次々と消えている。再販見直しの激動期に、「奥付に定価を明示しないのならば、カバープライスを変えるだけでいつでも定価を上げられるではないか」と激しく批判していたその団体の頭目の社自身が、奥付から消し去っているのだ。再販擁護を口にするのならば奥付に明記してはどうだ。なんたる自己矛盾だ。
同様の主張は、この日誌の北川明氏「奥付定価表示の重さ」http://www.hanmoto.com/diary/diary040324-1.html を見てもらいたい。
4、出版社−取次間の締め日を5・10日(ゴ・トーび)に
使い回しだが、http://www.hanmoto.com/diary/diary010115.html を読んでもらいたい。