死亡届
出版業界で言うところの「品切」にはかなり色々種類があるようですが、弊社では通常「品切重版未定」つまり在庫がなくなってしまった上に増刷(再生産)の予定は全くない、という状態のことを「品切」と呼んでいます。つい最近、こういう状態になったものがあったのでその処理を行いました。と言ってもいっぺんに作業を行うのではなく、随分時間をかけてじわじわと作業を進めています(その理由は後ほど触れます)。下記のような手順です。
- 新刊や増刷の際に挟み込む「出版案内」から書名を除きます(出版案内はすぐ古くなってしまいますが、あまりに古い情報になってしまうのを避けるためにそうします)。
- 次に、営業の使う一覧注文書に在庫僅少の印をつけます(営業が自分の判断で受注を調整するためです)。
と、上記の手順までが完全に品切になる前、つまり「在庫僅少」状態での作業です。次からの作業は完全に品切になった状態で一気に行います。
- Webページの注文ボタンを外して注文できなくしてしまい、表紙画像に「品切」という文字を乗せます。
- Webページの品切一覧に加えます。また、全点一覧では「品切」と明記します。
- 版元ドットコムに登録してある書誌情報のデータ区分を「2=絶版(実際は絶版ではないんですがそれ以外に対応する区分がないためそうしています)」に、在庫ステータスを「33=品切れ・重版未定」に変更し、書協・トーハン・日販・大阪屋・bk1に送信します。
以上のような手順で一通り作業は終了です。ちなみに5の手順を経ることによってamazon.co.jpを始めほとんどのオンライン書店にも品切情報は行き渡ります。また、取次の書誌情報やPOS端末を使っている書店にも情報が行き届いたことになります。これがやりたいんで版元ドットコムに参加したんですが、思っていた以上に便利で重宝しています。
さて、1・2の手順と3・4・5の手順の間に時間を置く理由ですが、5の手順はいわば本の「死亡届」を提出しているのと等しい行為です。5の手順を経てしまうと、途端に全く注文が来なくなってしまいますが、悲しいことに返品だけはダラダラと返り続けてきます。つまり、5の手順を行う前に市中(店頭)在庫をなるべく枯らしておかないといけないのです。そのため、徐々に受注を絞り、最終的に「品切」とした以降にはなるべく返品が返ってこないように仕向けているわけです。
というような地味な作業を行なっているわけですが、本来こういった在庫(品切)情報は出版VANといった業界のネットワークを経由して行なわれています。ですが、出版VAN導入にはある程度の初期投資が必要なため、弊社では参加していません。が、ここへ来て初期投資の不要な形態、つまりインターネット経由でのWebEDI(いわゆる新出版ネットワーク)が現実のものとなったため、弊社でも導入の予定です(今、申し込みの書類を書いているところです)。
とはいうものの、取次や書店と在庫情報が共有できたところで、読者に対しての告知を行わなくて良い、ということにはなりません。弊社ではWebで品切一覧を掲載するようになってお問い合わせが激減しました。
電話に関して言うと、版元ドットコム経由で取次にも品切情報を流しているため、品切のものに対する書店さんからのお問い合わせも激減しました。小さい会社なので電話が減るととても助かります。弊社で電話が減っているということは書店さんから見ると品切を確認するためだけに版元に電話するお金と時間が減っているわけです。小さいことかもしれませんが品切情報を公開することによって書店さんの手間軽減に少しは貢献できているのかもしれません。
というように、品切、と一言で言ってもそれに付随する作業は色々ありますが、新刊の時、つまり本が生まれる時には随分手間をかけるわけで、それを考えると本が死ぬ時にかける手間はまだまだ足りないのかもしれません。
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上記のような品切に関する問題をはじめとした書誌及び在庫情報の問題に業界として取り組むべく、出版インフラセンターでは「在庫情報整備研究委員会」というのを立ち上げ、関係者が集まって解決策と今後に向けた具体的な提案を考えています。版元ドットコム幹事社のポット出版・沢辺さんと私(語研の高島)も委員として参加しています。ご意見などある方は是非是非お寄せ下さい。業界外の方からのご意見も大歓迎です。
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弊社の宣伝も少し。
10月15日から開始した「音声教材無料配信」(顛末についてはポット出版のWebサイトに書いたこちらをご覧下さい)ですが、ようやく注文も上がり始め、ホッとしております。次は11月15日から「英会話50の公式」「初めての英語プレゼンテーション」「初めての英語ネゴシエーション」「基本から学ぶフランス語」の4点の音声無料配信を開始します。ご期待下さい。詳細は弊社ホームページをご覧下さい。http://www.goken-net.co.jp/
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宣伝をもう一つ。
11月20日(木)、大阪にて恒例の「大阪しゃぶ会」が開催されます。書店と取次と版元の三者が一同に会してお互いの意見を交換しようという会です。今年は新文化の連載などでもおなじみの遊友出版の斎藤さんを講師に迎えての講演会もあります。業界関係者の皆様の参加をお待ちしております。詳細はこちらの Webページをご覧下さい。
http://www.goken-net.co.jp/sbk/top.htm