地方の話題、市町村合併
昨年の夏から何本かの企画と平行して、『岡山県の総合観光情報誌』を制作している。岡山県観光物産課が、これまで行政資料として2年に1回つくっていたものを、書店で販売して広く県民にも掲載情報を利用できるようにと提案し、コンペの末に業務委託で受けたものだ。A4判で400ページを超えるデータ集のため、昨年の秋から市町村の観光担当者とデータの確認などで資料のやりとりを繰り返している。
岡山県内に市町村は78ある。これだけあると世帯数2000戸以下、人口5000人以下などという町村は少なくない。こうした小規模の町村の住民は、役場に勤めている人をほとんど知っている。役場のおじさん、おばさんである。
78の市町村それぞれに役場があって役人がいる。中には事務処理が苦手な方もいらっしゃるのか、送付したはずのデータを「受け取っていない」とか、「無くした」とかという行政マンの方もおられる。小さな弊社の社内で、「この人は普段はどんな仕事ぶりだろう」と憤りながら言うと、その町村の出身のスタッフがいて、「ああ、その人の家は・・・・」などと、家庭の事情が情報収集できる。それで、「そうなの。その人もたいへんなんだ」という話になる。
偶然とはいえ、地方を象徴するようなエピソードの1つであるかもしれない。県内エリアで「友達の友達」というケースはよくある。東京などでは考えられないでしょう。ちなみに岡山県の世帯数は、約70万戸、有権者数約150万人。
これまで、岡山県内の市町村数78が多いか少ないかをあまり意識することはなかった。今回の「岡山県の総合観光情報誌」の仕事をしてからは、明らかに多いと思う。最近の行政改革に伴う市町村合併の流れにのってしまうが、行政も仕事の量と質を考え、それに即した人員数、効率を考えなければならならなのは当然である。
全国的にも、今まさに市町村合併が推し進められている。現在、全国で3000を超える市町村を1000程度にしたいらしい。国と地方合わせて借金700 兆円という財政状況が、合併推進の理由のようだ。行財政の効率化をし、地方分権の受け皿づくりに対応していくという。
合併自体に大きな無駄が生じるだろうし、国による「アメとムチ」をかざしての強引ともいえるやり口に批判の声もあるが、やらないわけにもいかないだろう。ただ、効率を追求しすぎると、行政サービスが低下するだろうしから、難しいところだ。
岡山県内で、市町合併をめぐり住民投票をした町村がある。結果は7割反対と出た。田舎の村で、住民間に町村合併の論議を起こさないまま住民に直接聞けば、反対が多数を占めるというのは事前に予測できる。
大事なのは、住民一人ひとりが、どんな行政を望んでいるか、地域の将来をどう描いていくかを考えることができる意識改革をすることだろう。そして、その頭で投票する政治家を選んでいかなければ、合併をしたところで大きな違いはないだろう。
岡山県でも県内全域にわたって市町村合併が検討されている。どことどこがくっついて、どこが離れたなどと、男と女のような話が地方紙をにぎわせている。