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第3回 長崎書店「ナガショ通信」

熊本駅前から出ている市電に乗って数駅。人通りの多いにぎやかな商店街が町の真ん中を走っている熊本の中心街には、歩ける範囲にすてきな本屋さんがいくつもあります。

長崎書店は、そんな書店激戦区の熊本のお店のなかでも、もっとも古くからあるお店の1つです。上通商店街にある現在の店舗は、明治創業の老舗とは思えないようなおしゃれな外観で、商店街を行き来する人の目を引きます。すばらしいのは外観だけではありません。品ぞろえ、店内のレイアウト、本の並べ方、いずれも隅々まで工夫がこらされています。とにかく居心地がいいので、ついつい長居をしてしまいます。

そんな同店で、毎月1日に発行されているフリーペーパーが「ナガショ通信」。サイズはB6判で、毎号、カラーのイラストが表紙を飾っています。特集に、連載に、おすすめ本に、マンガに、編集日記にと、情報量も十分で、作り手が楽しんで作っていることが伝わってくる、にぎやかで楽しい内容になっています。

しばらく前のことになりますが、この紹介記事を書くために、同店のブログ「ながしょブログ」をチェックしていたら、こんな記事が目に留まりました。「♪出した!ナガショ通信2016年5月号、縮小版で配布中♪」(5/2 ながしょブログ)。

「ながしょブログ」から本文の一部を引きます。《地震後、長崎書店もバタバタとしておりまして5月号は縮小版となってしまいましたが「ナガショ通信」を作りました!!》
いやはや、驚きました。「縮小版となってしまいました」も何も、4月の震災発生以降、記事の日付になっている5/2までの半月ほどの熊本がどんな状況だったかを考えれば、通常営業ができているだけでも驚きです。店舗業務を日常復帰させるうえで必ずしも優先順位が高いとは言いにくいフリーペーパーをこのタイミングで発行していること自体、ふつうでは考えられないことなのに、お店の方が気にしているのは《いつものナガショ通信らしさを醸しだせているでしょうか……?》と、あくまでもお客さんから見てどうなのか、ふだんと同じものをお客さんに提供できているかどうか、ということだったりするのです。頭が下がります。「ながしょブログ」、6/3付の記事タイトルには「ナガショ通信6月号はいつものナガショ通信です!」とあり、翌月にはもう通常号に戻っているのですから、驚くほかありません。

お店がどれだけ大変なときでも、お客様への情報発信を、それも店頭での情報発信を大事にする。それが長崎書店です。そんな思いでつくられたフリペがおもしろくないわけはありません。ぜひ、実物を手にとって、ご覧いただければと思います。レジと、店頭の「木」看板のところで配布しているそうです。

同店の無料配布物には、毎年開催されている同店独自の文庫フェア「La! Bunko!」の冊子もあります。こちらも、フェア冊子としては大変に力の入った、読み応えのあるものになっています。店頭でフェア「La! Bunko!」を見かけたら、冊子も合わせてチェックしてみてください。
 
 
なお、この連載では、読者の目線で紹介することを大切にするため、取り上げるフリペについては、事前にお店に取材をしたり、連絡したりはしていません。ただ、今回は震災後の現地の状況を考え、事前に長崎書店の社長、長﨑健一さんに連絡し、フリペを紹介したい旨をお伝えし、了解をいただいています。また、同店のスタッフ、児玉真也さんに「ナガショ通信」5月号のデータを提供いただきました。この場を借りて、同店のみなさんにお礼を申し上げます。

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発行店:長崎書店 熊本市中央区上通町6番23号
発行頻度:月刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

sorainu_ico空犬太郎(そらいぬたろう)
編集者・ライター。主に新刊書店をテーマにしたブログ「空犬通信」やトークイベントを主催。著書に『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)、『本屋図鑑』『本屋会議』(共著、夏葉社)、『本屋はおもしろい!!』『子どもと読みたい絵本200』『本屋へ行こう!!』(共著、洋泉社)がある。
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