「版元デキマシタ。」
トランスビュー、2001年7月に出版活動開始。
島田裕巳著『オウム−なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』/山中和子著・養老孟司解説『昭和二十一年八月の絵日記』/老松克博著『サトル・ボディのユング心理学』の3点を刊行しました。いわゆる人文書の出版社です。
旅行関係やオンデマンド本は出していません、念のため。
事務所は間借り(約四畳半)、家具は中古&貰い物でスタートした我社の運命は?続きを読む
実はここまでの文章は、版元ドットコムへ参加後、初めてこのコーナーに書かせて頂いた時のもの。
月日が経つのは早いもの、今年で創業5年。刊行点数は39点になりました。
>事務所は間借り(約四畳半)、家具は中古&貰い物でスタートした我社の運命は?
は、事務所はやはり間借り(少しずつ間仕切りをずらして今では約六畳半)、書棚を2つ買いました。
職場の風景はあまり変っていないけれど、一年一年着実に年月を重ねています。流通上の問題はほぼ解消。既刊本での売上げ基盤に目処が立ちはじめ、なんとか書籍出版社らしくなってきました。これも草創期に“トランスビューは、オモシロイ”と、弊社との直接取引に手を挙げてくださった書店の方々に頂戴したご支援の賜物と、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
本年は、そんな書店の皆さまへの近況報告の意味も込めて、7月6日〜9日に開催される「東京国際ブックフェア」に出展いたします。会期中限定の特別低正味“トランスビューお試しセット”(『14歳からの哲学』など弊社の売行き良好書基本セットに加え、ご希望により他の書目を追加選択可能、卸正味55%)のご案内もありますので、ぜひご来場下さい。
さてこの5年間、僕自身は営業担当者として若さゆえの楽観で、結構気楽にやってきた。けれど編集担当者の苦労は想像に難くない。年間制作部数のノルマこそないが、トランスビューには「配本」というシステムもない。最低でも刊行の一ヶ月前には、装丁を含めた全ての情報を決定(ホントはもっと早くきめたいのだけど)し、書店さんへFAXでご案内する。ここでの注文が勝負を決するのだ。あたりまえだが、注文のない本は出荷することすら出来ない。
書店の方は、自分の棚に必要な本は仕入れをする。いらない本は注文しない。FAXの新刊案内なんて見ていないとも言われるが、そんな事はない。必要ないから、注文しなくても勝手に入荷するから、返事をしないだけなのだ。
書店の棚は出版社の物ではないので、ムリを言って置いて貰おうというつもりはない。一人一人の書店員さんへ、大仰なキャッチフレーズなんてなしで、一冊の本の個性を伝え、必要とされる本を必要な部数だけ、出来るだけ早くお届けしたい。それがトランスビューの営業方針だ。
これだけしか注文を取れないのかと、作っている編集者は面白くないこともあるだろう。また日本全国どの書店にも陳列できる訳ではないので、著者からの不満も受けるかも知れない。そのかわり、トランスビューの本を仕入れてくださる書店さんは、「この本を売ろう」という意志を示してくれた方々だけなのだ。その本にとっては、なんて幸せなことではないだろうか。
買って後悔しない本をつくり、売って喜びを得られるような本を流通させる。そんな商業出版が僕たちの理想だ。先日某書店を退職された女性からいただいた挨拶状に、こんな添え書きがあった。
「トランスビューの本は、いつも売りがいがありました・・・」
きっと編集担当者も胸に刻んだに違いない。
追記)
先の女性は、子育てがひと段落したら復帰されるそうです。その頃までには間借り生活を脱出(か、間仕切りを向こうの壁までこっそり移動させる)しよう。これからの5年間の目標です。