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縁の積み重ね

 八千代出版株式会社は創業53年目となっている。創業者である現会長の実家は水道橋にある古書店の老舗、そんなところから大学の先生方からの情報も入り、もしかして大学のテキストを作ったら売れるんじゃないかと思って創業したというのが小社創業のきっかけということである。八千代出版の名は、さまざまな分野のものを手がけていこうと思いから付けられている。

 専門書、学術書、大学のテキストをつくり続けて50年余、著者はほとんどが大学の先生方である。これだけ一定の歴史があると、最初に執筆をしてくださったときは大学院に通っていた方が専任になり教授になり、なかには退職を迎えられた方々もいらっしゃる。かつてテキストの一部を執筆してくださった方が研鑽を重ねられ、今度は編者としての労をとってくださることもある。本の企画を相談しに行って、かつて若手の頃に丁寧に編集をしてもらったから引き受けましょうという言葉を言ってもらえるのは何よりうれしい。専門書、学術書の製作においてもやはり人と人のつながりがどのように未来でつながってくるかはわからない。

 さて、そんな著者たちとのエピソードを交えながら小社の既刊近刊の紹介をしたい(^-^;

 1冊めは二神恭一・二神常爾・二神枝保著『シルクはどのようにして世界に広まったのか―人間と昆虫とのコラボレーションの物語―』(2020年1月刊)である。

 著者の二神恭一氏は、早稲田大学名誉教授で、早稲田大学を退職なされた後、愛知学院大学でも教鞭をとられていた。かつて小社で刊行した経営学講座12巻の監修をしていただいたこともあり、その講座に執筆してくださった方々とのご縁をつけて下さった方でもある。大学を退職されてからも荒川区自治総合研究所所長などを務められ、それまでの研究成果を踏まえ社会貢献にも奔走されてこられている。共著者の二神枝保氏も研究者(横浜国立大学教授)で、村木厚子氏との共編で『キャリア・マネジメントの未来図』(2017年刊)

をまとめてくださっている。
 そんなご縁もあり、ご自身の集大成として出版の相談があったのが上記本である。実は、恭一氏の趣味は蝶の採集である。これまで小社で執筆された本のカバーにお気に入りの蝶の写真を入れてほしいという要望をいただいてデザインしたものもある(すでに品切れになっているので書影は小さいものしか残っていないが、掲載する)。


なかなか経営学と蝶というのは重なる部分もなく、研究と趣味は別のものとして過ごして来られたところ、蝶ではないが昆虫つながりで、かいことシルクと産業を追ってみようと執筆されたのである。この本を書き終えて、「今回は自分の研究だけでなく好きな昆虫のことも追えて楽しかったですよ」卒寿に近い温顔を湛えておっしゃった。かいこ、シルク、シルクロードにまつわる本はあるものの、養蚕、シルク産業の世界への伝播を広く扱った類書はない。気になった方にはぜひ手に取ってもらいたい。

 長くなっているが、もう1冊紹介したい。田畑康人・岡村国和編著『読みながら考える保険論』(4月6日発行)である。

 編者の田畑康人氏は、私が入社する前に(何年経っているかは想像にお任せ!)既刊としてあった経営会計事典の項目を執筆してくださっていた方である。ということは、小社とはかれこれ30年以上の(あっ!)おつきあいのある著者である。そして、もう一方の岡村国和氏は大学、大学院と同じ指導教官のもと、ずっと切磋琢磨、ゼミなどでもずっと交流を続けてこられた間柄である。

 田畑氏に保険論のテキストをつくりたくてお願いにあがったところ、ちょうど構想されていたところで、初版は2010年7月に上梓している。この度上梓するのは増補改訂第4版となる。この10年の間の社会変動は激しく、東日本大震災と福島第一原発事故をはじめ大きな自然災害に見舞われ、そのたびに社会保障と保険の見直しを迫られることになっている。そして、制度改正や最新の資料データを付加しつつ、増補と改訂を重ねてきているのである。改訂といえども改訂の程度はさまざまだと思う。この本にはほかに3名の執筆者がいらっしゃるが、4回を重ねる増補改訂には全員が毎回全力で取り組んでくださっている。新しいデータの漏れはないか、制度の記述にミスはないか、もっとわかりやすい説明ができるのではないか。限られた時間内で、しかも執筆、校正とも締切日に1日たりとも遅延することなく足並みをそろえて作業をしてくださるのである。著者として「当たり前」かもしれないが、諸般の事情によりなかなかできないことでもある。版元のみなさんにはどれだけありがたいかはおわかりであろう。

 初版から数えるとこの度の4版で48頁増になる。これもいかに著者たちが増補改訂に真剣に向き合ってくれたかの証である。「難しいことを易しく、易しいことをより深く」をモットーに、保険の成立から現状、理論、経営まで幅広くカバーされている。これもかつての縁がとりもち改訂を重ねてきたものなのである。

 出版業界は厳しい状況にあるけれども、そして小さな出版社ではあるけれども、続いてきた年数と同じだけの縁もあるのは小社の一つの財産である。最繁忙期の3月につらつらと思い、さあ、また縁をつなぎつつ本づくりをしていこうと思うのである。

八千代出版の本の一覧

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