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皓星社二代目を引き継ぐにあたって

 昨年2017年9月、株式会社皓星社の創業者・藤巻修一より社長職を引き継ぎ、二代目になりました。
 現在は藤巻と私の共同代表制で、藤巻は会長、私が社長です。これから数年をかけて、日常業務を行いながら経営面の引き継ぎをしていきます。いってみれば、私は今「社長見習い」のようなものです。
 私が最後にこの版元日誌を書いたのは2015年6月、ちょうど2年ほど前のことです。自分が会社を継ぐことになろうなどとは、夢にも思っていませんでした。この間のことを、少しく書き記しておきたいと思います。

◆雑誌記事索引データベース「ざっさくプラス」のこと
 前の版元日誌「三つの代名詞」は、出張先の新潟で書いていました。出版と同時に、弊社では「ざっさくプラス」というデータベースを製作・運営しており、その営業に出ていたのでした。自社の仕事を面白いと思い始めたのは、実はこのデータベース事業に関わり始めてからでした。
 「ざっさくプラス」最大の特徴は、他社の商用データベースや国立国会図書館の「雑誌記事索引」、国立情報学研究所のCiNiiでは検索できない戦前期の雑誌記事や、戦前・戦後の地方の雑誌記事を検索できることで、主として人文社会科学の研究者や図書館員に活用されています。明治や大正、昭和初期に誰がどんなことを書いてきたのかを、詳細に検索できるデーターベスは、他にありません。好きな作家の知らなかった作品はもちろん、未知の作家による面白そうな作品を知って心の底からワクワクしました。学生時代に戦前のことも調べられていたら、自分の卒業論文(日本近代文学が専攻でした)だってもう少しマシなものが書けただろうに、と思うと俄然燃えました。何しろ、営業に行ってこの商品の魅力を説明する人間は私しかいないのです。
 営業の成果も多少はあったのでしょうか、2015年当時から少しは導入機関も増え、現在では国内120、海外60機関で採用されています。

◆「出版社」の鉱脈を探して
 「ざっさくプラス」の営業は、大学が次年度の予算を検討する5〜7月、9〜11月の約6ヶ月間に限られ、この間の半分の期間は東京を離れますが、残り半分ほどの期間は会社にいて出版の仕事をしています。夏には畑を耕して冬には出稼ぎに行く農家さんみたいで面白い日々です。
 近年はシリーズ紙礫、挿絵叢書、といった文学作品のアンソロジーシリーズのほか、歌集や「本に関する本」の刊行が増えてきました。自然とそのような傾向になってきたのですが、これは望外のことでした。この鉱脈を自分のものとして、掘り深めていこうとしています。
 藤巻がやってきたようなハンセン病関係の書籍や、アナキズム関係の書籍を企画することは、私にはできません。それは大前提での継承です。社名や出版理念を引き継ぐことはできても、創業者と継承者が完全に思考を共有することは不可能だからです。「出版社」を継承することの困難は、ここにあると思います。私がこれから何十年かを持ち堪え、次の人に会社を手渡すことができたとしても、それは同様です。継ぐ者にできるのは、在庫を絶やさないくらいのことでしょう。自分の鉱脈は自分で、見つけなくてはいけません。

◆「起業」ではなく「継承」する理由
 それでも自分で出版社を起業するのではなく、この会社を継承しようと決めたのは、「ざっさくプラス」があったからですし、その祖業はやはりこの会社の出版であるからです。
 本ならば、出版社がなくなったとしても図書館や古書を利用して読むことができますが、データベースは運営母体がなくなってしまったら、もう使えません。誰が何を、いつ、どの雑誌に書いたかという記録を、私はできるだけ次の時代に消さないで残しておきたいのです。それは基礎学問を軽視する政策への対抗心でもありますし、かつて誰かが情熱を傾けて何かを書いた、そのこと自体に非常に惹きつけられるからでもあります。
 私は今31歳で、藤巻が皓星社を立ち上げたのと、ほぼ同じ年齢になります。この年齢で、というタイミングにも、不思議な縁を感じています。これから、一体どれだけのことができるのか。引き継ぐだけではなく、新しい何かを加えていけるのか。次に版元日誌を書く頃(1年後?それとも2年後?)には、「見習い」を卒業しましたと、皆さんに報告したいと思っています。

最後に、イベントの案内をさせてください。

弊社から今年4月に刊行した、カラサキ・アユミ著『古本乙女の日々是口実』の刊行記念展示会とイベントがあります。
弊社刊、『古本乙女の日々是口実

の刊行を記念して、著者・古本乙女ことカラサキ・アユミさんのコレクションを大開陳いたします!
古本はもちろん、紙モノ・古物などの蒐集品の数々を、漫画原画や書き下しの新作イラストとともにお披露目します。
会場は東京古書会館2階の情報コーナー。
ゲストを招いてのトークショーも2回ございます。

【展示会】「古本乙女の日々是これくしょん展
【日時】7月20日(金)〜8月4日(土) 10時〜17時(日・祝休み)
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【イベント】
第1弾 カラサキ・アユミ × 小山力也(古本屋ツアーインジャパン)
  7月21日(土)14時〜
第2弾 カラサキ・アユミ × 書物蔵
  8月4日(土)16時〜

お近くをお通りの際には、ぜひご来場ください!
皓星社の本の一覧

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