怒濤のアニヴァーサリー・イヤーを振り返って
こんにちは、“音楽を愛する人のための出版社”アルテスパブリッシング代表の鈴木です。
昨年4月から続いた創業10周年のアニヴァーサリー・イヤーも今月末でついに終了。この間、大小さまざまな記念フェアを全国各地の30を越える書店・楽器店・CDショップで展開していただいたのを筆頭に──現在タワーレコード渋谷店クラシックフロアと全国の島村楽器約50店舗(!)で展開中です──、初の電子書籍発売、FMラジオ番組の制作、サポーター会員の募集、バリューブックスとの提携などなど、さまざまな新プロジェクトを、新刊の発売と並行して実現させることができました。
また、日本経済新聞(4/25)と毎日新聞(9/30)に創業からの10年を記事にしていただいたことも、ぼくらにとってはとても嬉しい出来事でした。そのうえ、先週12日には讀賣新聞夕刊の「本よみうり堂」にもとても大きな取材記事が載り(あまりに写真が大きくてびっくり……^^;;)、記念すべき年の最後を飾っていただく形となったのでした。
その記事を読むと、とても立派な志を持った立派な会社みたいに書いてくださっていて、目の前の仕事に精一杯、多くの方に迷惑をかけながら毎日青息吐息の身としては面映ゆかったりもするのですが、こうして評価と応援をいただけることは、大きな励みになります。
フェアの成績は、びっくりするような売上が出たお店もあれば、お店に迷惑をかけずにすんだろうかと冷や冷やしたお店もあり、さまざまです。ただ、ふだんの音楽書の棚からフェア台などのなじみのない場所に引越すと、新たな読者に目を留めてもらって本を届けることができる、という確かな手応えを得ることができました。出版界全体が厳しい環境にあるなかでフェアを開催してくださった皆さんに、この場を借りて改めて心からの感謝を捧げます。
4月に主要電子書店で販売を開始した電子書籍10タイトルの売上げ(半期)は、内田樹さんの『困難な結婚』が突出していて(4桁には届かず)、次いで同じく内田さんの『村上春樹にご用心』、あとは良くてふた桁前半という数字が出ており、これはまずまず予想通りでした。紙版の『困難な結婚』の売上げに影響は出ていませんし、電子の分だけ読者が増えた、と考えてよさそうなので、今後も既刊の電子化は続けていきたいと考えています(まったく手が回っていませんが)。
昨年4月、奇しくも創業記念日にスタートして、毎週水曜の夜に全国のコミュニティFMで放送しているラジオ番組《music book cafe》もいよいよあと2回で終了。マイクを前に喋ることの難しさを実感しつつも、さまざまな書き手の皆さんに話を伺うのは、新鮮で楽しい体験でした。自前のラジオ番組をもつのは夢でしたので、またちがうスタイルでトライしてみたいです。
というわけで簡単ではありますが、この1年を振り返ってのご報告でした。来月からは10周年記念ロゴもお役ご免、11度目の決算をぶじに乗り切って、気持ちも新たに12期目に臨みたいと思います。思いますが、今回この原稿を書くにあたって読み返した、2015年3月の「版元日誌」には思わず苦笑い。
「企画編集の仕事に充てる時間が圧迫されているのが目下最大の悩み。当然、自分が担当している原稿以外のテキスト(本)を読む&音楽を聴く時間もきわめて限られているので、編集者生命の危機も感じていますが、売り上げを伸ばしてスタッフを増やす方向ではなく、今の人数で可能なことを実行していくのみ。」
って、今もまったく変わってないじゃないですか! 成長してないというか、零細版元の宿命というか。それでもしかし、スタッフも充実してきたし、インディーズ出版仲間は増える一方だし、すばらしい音楽は次々に生まれているし、世に出したい企画はまだまだキリなくあるし、次の10年も充実したものになることでしょう(ちなみにこの4月から編集者生活32年目に突入!)。