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「意義のないブックイベントを、ひたすら続けること」

2011年に「編集室屋上」という出版レーベル(会社ではないので自分ではこう呼んでいます)を始めたのと同時期に、「東京野球ブックフェア」というイベントを始めました。イベント運営は編集室屋上名義ではないので「版元日誌」の名にそぐわないかもしれませんが、このイベントについて書かせていただきます。

「東京野球ブックフェア」は「野球の本のお祭り」と称して、新刊本の出店ブース、野球一箱古本市、トークイベントなどから成るもので、基本的に毎年1回の開催をしています。回を重ねるごとにじわじわと規模が大きくなってきて、一番最近の本開催では新刊ブースで30以上、古本も10ブース、その他の催しやコーヒー出店などもあり、二日間の開催を盛況に終えることができました。入場無料のイベントゆえ、入場者数のカウントが難しいのですが、配布物などから一日開催時で500人ほどの方にご来場いただいていると把握しています。
 このイベントの特異なところは、人数というよりもその「密度」です。開催日にはオープンからクローズまで、ほとんどの時間会場にいる方を何人も見かけます(もちろん、出店者・関係者以外で)。一日に3本トークイベントをやると、その内容が「(文系の)野球」にかかわるということ以外に共通点がなくても、3本全てに来てくれる方も少なくありません。ブースでのおしゃべりもとにかく熱く、長い! わたしは『屋上野球

という本も出しているので主催者であると同時に出店者でもあるのですが、「話したいことがいっぱいある」という表情で現れる方とのおしゃべりは楽しいものです。一方で、黙ってじっと本を読んだ末にそっとまとめて買ってくださる方もいて、そういう方にもまた別のありがたい、同志のような気持ちを感じます。
 そんなイベント運営も最近は迷うことばかりです。開催規模は広げても運営規模はほぼ最初のままで、この状態で続けていくうちに「当初自分のやりたいと思っていたもの」と「毎年求められているもの」が同じなのかどうかもわからなくなってきました。元々は「野球の本があまりにもたくさんあるのに、みんなの知っているものとそうでないものの差が大きい」ということに違和感をおぼえ、「規模の小さいもの」「書店の野球コーナーに置かれないけれど野球本であるもの」「個人で作っているミニコミや小冊子」など、ある程度、こんなものがある場所になったらいいな、というイメージがありました。とはいえやはり個人でやっていることで、最初から多少は偏りもあったと思います。その後、何度か公募で出店者を募ってみたときに自分でも「こんな場所になったら」というイメージがよくわからなくなり、今は最初の小規模な頃よりは来場者の方にとっても「主催者の顔」が見えず、「なんでこれはあるのにこれはないんだ?」という思いも出てきているのかな、と思うこともあります。
 それから、我ながらモヤモヤとするのが、最初は全然考えなかった「野球本の出版状況への意義」みたいなものを、少しでも考えるようになってしまったことです。これは本来考えるべきことなのかもしれませんが、「いやー、そんなことどうでもいいから楽しいや」っていうほうが好き、という、こんな私がやっているので、そんなまっとうなこと、考えるようになりたくないのです。それでも少し規模が大きくなってみると妙な色気というかカッコつけの気持ちが出てきたりして、それを逆にカッコ悪いなと思って振り払ったりして……。そんな私なので、心のなかでは「社会的な意義のないことをしたい」という変な意地があったりします。ただそこで開催されているそれが、単純に誰かの一日を楽しくしたり、自然に誰かの心を動かしたり、誰かが何か(野球の本にかかわらず)を踏み出す一歩になったりしたら、一番理想的なことだろうと思っています。
 そんなこんなで主催者がわけのわからない逡巡をしていることもきっとみなさんは知らずに、一年に一度の恒例イベントと思っていただいているようで、もはや「今年はしんどいからやらない」などとはとうてい言えない雰囲気になってきました。開催するたびなかなかの労力を要しますが、当日みなさんの楽しそうな顔を見ると、やはり月並みながら続けてきてよかったなと思うのです。
 とにかく私がしてきたことは「思いついて始めたこと」「続けてきたこと」、この二つだけ。同じように●●ブックフェアという何かに特化したブックイベントは、いくらでも展開できることだと感じています(もちろん、先駆者としてとうてい届かないところにTOKYO ART BOOKFAIRがありますが)。
 この東京野球ブックフェアにしても、きっと他の方が開催すれば私のような迷いを抱えることなく、しっかりと規模を拡大しながら利益も出せるイベントができるのではないかと日々感じます。もうある一つのスタイルは確立したので、誰に手渡してもいいのよ!という気持ちです。が、当然というべきかその声はかからず、ならばこれからも迷い続けながら、社会的な意義を持たずに、ひたすら続けていこうと後ろ向きのような前向きのようなわからない方向を向いて、楽しく企画を続けていきたいと思います。

編集室屋上の本の一覧

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