版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊

「考えること」は、やめられない

 日々を生きていると、さまざまな思いが胸をよぎります。人と接し、物事に直面し、そうしたことから生まれる感情に、行動が左右されます。
 「嫌だ」と思ったこと、「何か違うんじゃないか」と感じたことが、すぐに口から飛び出してしまっている感覚。
歳を重ねていくうちに、そうした状態に至る臨界点というか沸点のようなものが、少しずつ下がってきている気がしています。

 今、口にしなくてもいいこと、言葉にして表すと差し障りがあることを、自分のなかにとどめておけず、周囲の人々に放ってしまう。
 昔は、そのほとんどを胸のうちにしまっておくことができたはずなのに、どんどん「堪える」という行為が難しくなっていく。
 ひとりになったときに、ふと、そう感じる瞬間が増えています。

 じゃあ振り返ってみて、10代・20代の頃の自分が我慢強い人間だったかと言えば、実際にはそうでもありませんでした。
 意に反することには噛みつき、声を荒げることも、一度や二度ではなく。感情を露にすることに、ためらいがなかった部分は、確かにありました。

 今との違いは、それを置かれた状況のせいにするか、自分自身の内面的な問題として片付けようとするか、というところにある気がします。怒りや憤りをぶつけていく先が、かつては外側ではなく内側を向いていた、ということです。
 その頃に戻りたいという思いは、少なからずあります。矛先が違うんじゃないか、もっと足元を見据えるべきなんじゃないか、という、自問自答のようなものです。

 もう少し若かったとき、いつも頭の片隅で唱えていたのは、「考えることをやめない」ということでした。
 考えに考え、二進も三進もどうにもいかなくなるぐらいにまで考え抜いた先に、なんとなく、人生の答えみたいなものが見えてくるんじゃないか。
それは絶対ではなく、もしかしたらで構わなくて、答えがあってもなくても、死ぬまで考えることを続けていこうと。
 そういえば、大学のスポーツ新聞部で最後に綴った日誌に、同じようなことを書き残したことを思い出します。十数年が経っても、人間としての本質的な部分に、大きな変化はないのかもしれません(単に成長していないだけとも言えます)。

 出版社の編集部に籍を置く人間として、読んだ人に考える「きっかけ」をもたらすような本をつくることが、たぶん向こう10年の目標になってくるのではと感じています。
 生きることと結びつく、書籍という形の贈り物を、1冊1冊仕上げていきたいと思います。

本の種出版の本の一覧

このエントリーをはてなブックマークに>追加