水に溶ける詩
はじめましての方も多いと思います、小さい書房と申します。大きいものには大きいなりの、小さいものには小さいなりの良さがある、という思いから、こんな屋号になりました。「考えるきっかけになる本」をモットーに年1冊ほどのペースで刊行しています。
せっかくの機会なので、最近つくった購入特典「水に溶ける詩」を紹介させてください。これは詩集『地球の上でめだやまき』(山崎るり子著)を購入したお客さまへのプレゼントとしてつくったものです。
「水にとける詩」というものを私が初めて見たのは、2019年、尾道にある古本屋「弐拾dB(にじゅうでしべる)」制作の「水温集」でした。紙が溶けて、詩の文字だけが水面を漂う様子に感動しました。これは不思議でうつくしいな、と。
(水温集は造本装幀コンクールで審査員奨励賞を受賞)
その後しばらくして、コロナ禍が始まりました。悪い夢を見ているような現実に驚きながら1年経ち、2年が経ったころ、ふと、あの「水に溶ける詩」のことを思いだしたんです。詩の文字が水面を漂う様子が脳内で再生されたとき、「失う(水に溶けて消える)ことで “かけがえのなさ” に気づくのかもしれないなぁ」と思いました。それは以前とはまた違う感動でした。コロナ禍で、普通の毎日を失ったからこそたどり着いた視点だと思います。
『地球の上でめだまやき』は、暮らしのなかの小さな出来事に光をあてる詩集です。
平凡な毎日の “かけがえのなさ“ に気づく…という点で「似ている」と思ったとたん、水に溶ける詩を購入特典とすることに決めました。
(書店さまへ。子どもの文化普及協会通じて『地球の上でめだまやき』を注文いただければ特典をつけて納品いたします。直販の場合もおつけします)
さて今年、小さい書房はスタートから10年になります。
10年間で一番変わったことは何か?というと…はいズバリ、私の体力が衰えました(もっと良いこと書きたかった!)思えば2年前に腰を痛めたことが大きな転機となりました。それまでは数十冊をスーツケースに詰めてゴロゴロ引いては書店に納品していましたが、無理をするとかえって周囲に迷惑をかけてしまうことを学びました。以来重いものは持たないことを自分に課し、5冊以上の納品はすべて発送に切り替えました。われながら驚きの豹変。それでも原画展はやりたいし、ブックイベントにも出展したい。だったらこれからは人の手を借りる術を覚えなければ、と考えています。そこでいきなり書いちゃいますが、せっかく版元.comという集団があるのだから、ゆるい「助っ人共有制度」みたいなのがあればステキだ!と妄想しています。私の場合、常に人に頼みたい仕事は、ありません。でもたまに、人の手を借りたい。一方頼まれる側からしたら、「たくさん仕事を振ってくれる版元」の方が良いでしょう。で・あ・れ・ば、「たまに人の手を借りたい」版元があつまって、助っ人さんを共有したら、みんなHAPPYなのでは?名前はそうですねー「助っ人BANK」とかどうでしょう。運動不足の解消に、あるいは縁を求めて「助っ人BANK」に登録する版元メンバーがいても、面白そう。もしかしたらこれいけるんじゃない?という気がしてきたので、念のため「助っ人BANK」と検索したら、けっこう各地にありました…名前が被るのは良くありませんので、実現したら名前、考えましょう。
小さい書房の本の一覧
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