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書店から学ぶ図書館

 出版社にとって書店と図書館の関係はどのように見えるのでしょうか。どのような出版物を刊行しているかによってずいぶん違うでしょうが、書店だけでなく図書館の動向もやはり関心のあるところだと思います。そこで最近、私が企画に加わり結構盛り上がったにもかかわらずほとんどの出版関係者はご存知ない図書館セミナーのことを書きます。
2005年9月22日、神戸大学附属図書館プレゼンテーションホールにおいて「資料・情報を読者へ—書店から学ぶこと」(兵庫県大学図書館協議会研究会主催)というセミナーが開催されました。私は2005年春に神戸大学附属図書館の方から「図書館が書店から学ぶもの、といったテーマで研究会を開催したい」との相談を受けました。そこで書店の現状と図書館との関係について総論のような話を私が担当し、店舗ではジュンク堂書店の福嶋聡氏(池袋店副店長)、オンライン書店では紀伊國屋BookWebの方に実践事例を報告していただくというのはどうかと提案しました。その後、紀伊國屋書店は小澤利彦氏(ネットビジネス部部長)が参加してくださることに決まり、当初考えていたテーマにとってまさにぴったりのゲストが揃ったわけです。
 じつは私にとってこのセミナーの開催自体が驚きでした。これまで図書館が出版流通関係者をセミナーのゲストに呼ぶときは、出版物の調達スピードの遅さの問題が取り上げられることが多いのです。またそういう場では出版流通のことをあまり詳しく知らない人を対象に、しかもなぜか言い訳じみた調子で話してしまうという自虐的な講演になってしまったりするものなのです。
ところが今回は「書店から学ぶ」というのです。時代も変わったなあというのがまずは正直な感想でした。背景にはやはり大学の大きな変化があり、大学図書館に求められているものが多様になったということがあります。なお、当日は兵庫県下の公共図書館員の方々も多く参加されていました。
 私はセミナーにおいて、まず図書館利用者・読者が資料・情報を入手することの意義について述べ、ネット時代における図書館・書店の役割について問題提起しました。
    そして取引関係としては書店は「出版流通はブラックボックス?」という指摘を図書館から受け続けていること、また近年は「図書館無料貸本屋」論争のような競合関係や、丸善の「トータルソリューションサービス」などのように大学や大学図書館業務の受託をも視野に入れた書店の業態転換が現実化し、図書館と書店の関係も大きく変化してきていることを指摘しました。
    また、かつて資料面でも図書館はストック、書店はフローというように棲み分けられていましたが、今日ではかなり様相が変わってきたことについて説明しました。例えば、図書館のOPACと書店のデータベース、デジタル・アーカイブと電子出版、さらに「Search Inside the Book」(日本版は「なか見!検索」)、「Google Scholar」「Google Print」といった全文データベースの進展が次第に図書館と出版・出版流通の境界をあいまいなものにしてきているのです。
 そして、具体的に図書館が書店から学びうるものは何かを提案しました。
まず、書店店舗では本の見せ方を工夫しています。新刊を積むことで時代を読み、「キーワード、キーパーソン、キーブック」というように読者を誘うような本の並べ方をします。また、ブックフェアでは、単行本と文庫・新書・雑誌といった形態にとらわれずテーマに沿ったものを陳列し、通常は異なる分野とされるもののクロスオーバーをはかります。さらに近年はストーリーテリングから著者講演会といったイベントも集客の重要な要素です。
 一方、オンライン書店では店頭とは異なる視点で読者にアプローチしています。店頭とは異なるランキング情報、レコメンデーション機能、出版物と関連するDVDやグッズの販売、また受け渡し方を宅配からコンビニエンスストアでの受け取りなど、利用者の利便性を第一に考え、ワン・トゥー・ワン・マーケティングを確立させています。
 大学図書館や公共図書館が変容を余儀なくされているのは、利用者である学生・教員・職員、あるいは市民にとって利用しやすい図書館への転換が必要とされているからです。そこでこれまで日本十進分類法に従って配架されていた図書の一部を、例えば新潮文庫は書店のように著者順に配架して、しかも表紙カバーをかけたまま装備するとかに路線変更するところも現れているのです。また従来は図書館所蔵の貴重本の展示だけだったのが、テーマを決めて企画展的にブックフェアのようなことを行ったりしています。一方、図書館のウェブサイトもかつては無味乾燥な検索サイトのようになっていたOPACですが、これも紀伊国屋書店のBookWebにリンクを張る大学図書館も現れ、表紙画像や内容紹介を入れることで利用者に分かりやすいものに変わってきているのです。
 そんな親切は百害あって一利なし、と批判する人々も存在します。ただ私は図書館と書店という、利用者・読者へのアプローチではこれまでまったく異業種と思われていたものが、情報交換することによって何が見えてくるのかということに興味があります。
 このときのレジメは以下のサイトにアップロードされていますので、ぜひごらんください。また、ジュンク堂書店の福嶋聡さんがこのときの模様も含めてエッセイを書かれていますので、併せてお読みいただければと思います。
参照URL:http://www.lib.kobe-u.ac.jp/AULH/katsudo/17/kenkyu/index.html
      http://www.jimbunshoin.co.jp/rmj/crmaf52.htm

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