アクアコーラル企画/ボーダーインクに行ってきました

行った人:事務局/スタジオ・ポットSD・日高

アクアコーラル1
アクアコーラル2 一部屋め。ぱっと見た感じは私塾か、はたまた理系の研究室か
アクアコーラル3 二部屋目は様相一変。ライトボックス、スキャナ、大量のポジスライド……。そう、屋比久さんは現役バリバリのカメラマンでもあるのです。
アクアコーラル4 圧巻の6画面マルチモニタ。ダイビングによる調査の後、GPSのログが取り込まれ、画面にマッピングされています。

那覇空港からモノレールで終点の首里まで行き、さらにタクシー。「風、強いですね。」と声をかけると、「この時期は風が強いんですよ。二月風廻り(にんがちかじまーい)ってね。」と運ちゃん。

……というわけで、前回からはや3年、訪問サポート地方出版社編は、沖縄です。

まずは初日。夕刻那覇に着き、その足で宜野湾のアクアコーラル企画を目指します。

住所をたよりに宜野湾の会社近隣までは辿り着いたものの、マンションの所在地がわからず、結局屋比久さん自ら出迎えていただきました。

第一印象は「私塾」

沖縄特有の、妙に頑丈そうなマンションの一室にあるオフィスに通されると、六畳間に机、生物関係の本を中心に埋め尽くされた本棚。床にはダンベル。受けた第一印象は、出版社というよりはむしろ「私塾」でした(……という私の直感はあながち的外れ、というわけでもなかったのですが)。

また、机にはMac OS 9の入ったPowerBook5300に、ADSL接続とおぼしきYahoo!BBのルータという通信環境。IT環境は大分ノンビリしているのではないか、と思いました(……という私の思い込みは間もなく、見事に覆されます)。

まずはどこら辺に版元ドットコムのメリットを感じてもらえるか、アタリをつけてみよう、ということで、インタビュー開始。最近刊行の本の話などすると、「えーと、この本は……初版1万部です。」「え〜!?」。出版社の規模に関わらず、(ものによっては)初版刷部数が2000台、ということも珍しくない昨今、おだやかでない数字です。ましてや、訪問する前に刊行物をサイトでざっとチェックした結果、「沖縄の自然をフィーチャーした本を作っている、オーソドックスな形態の版元(それにてしてはISBNが「若い」けど……)」と思い込んでいただけに、驚く私。さらに突っ込んでみると、大体の本は初版5000部以上、なかには増刷しているものもある、とのこと。

そして、流通の現状は、「県外、つまり地方小(地方・小出版流通センター)経由の取引は、たぶん1割くらい。」と、こともなげに言われました。

とにかく、マーケティング

つまり、数千部からの本を、ほぼ県内で捌いているわけです。前回の北海道編でもうっすら感じていた、「地産地消」傾向ですが、率といい絶対数といい、とにかく耳にする数字が(首都圏の常識と比べて)尋常ではありません。

よくよく訊いてみれば、代表の屋比久さんは元々カメラマンかつ、予備校講師。デジタル化の波が押し寄せ、沖縄の風景写真をレンタルポジ屋に納品、といった仕事が減るのを見越して、平成14年から始まった「沖縄IT特区」政策にいちはやく目をつけ、官公庁のWebサイト制作を請け負ったりしていたものの、これも一段落。さて何をやろう、となったところで「自分で写真も撮れる。文章も書ける。しかし、県内には「自然モノ」を出してくれる出版社がない。それじゃー自分で出版しよう!」と思案した結論として、自らが版元になった、とのこと。

現在は、お役所から依頼される、海洋環境調査のためのダイビング仕事を受けつつ、沖縄を中心として各地に取材におもむき、20年以上取り溜めた写真のアーカイヴを活かした、「喜ばれる本、売れる本」をどう作るか、ということに取り組まれているようです。読者のニーズを探るためには、ブログを何本も書いて、市場のニーズを探る一方、書店での反応を地道に見る、といったことも怠らず、そして実績も出している。実に手堅い印象を受けました。

屋比久さんが強調していたのは、「とにかくマーケティング(が大事)」。こと出版社というと志がどうの、文化がどうの、という話になりがちですが、アクアコーラル企画の場合、それも活かしつつマーケティング手法が活用できるのは、出版という業態は効率的である、との判断で設立しているから、なのでしょう。

……と、なにやら出版社インタビューの様相を呈してきたのですが、気を取り直して一応本題の、「新・書籍登録・業界連絡支援システム」の解説を開始。

版元ドットコムの成り立ちを入り口に、提供している主眼機能である、「書誌情報を多方面に送る」という機能について一通り説明。とはいえ、もともと県内へのアプローチを前提としたビジネスモデルなので、流通面でバリバリ活用してもらえる、という部分はあまりなく、「とにかく、書協には送ってください」「なるほど、(送るのは面倒なんで)これは便利」といったところで、あっさりと訪問の目的は終了。

お話を伺っていて感心したのは、とにかく、状況に合わせて業態をシフトしていくことへの躊躇のなさ、です。「マーケティング」を強調するその裏には、実は「好きなこと」「やりたいこと」の明確なコアがあって、そのための手段を柔軟に変えて行くことになんら抵抗を感じていない、という強さを感じました。地方かどうか、いや、出版業かどうかということにかかわらず、すべての企業がこのことを考えて行かないとダメなんじゃないの? という気にさせられた、サポートというよりはむしろ学ぶことだらけの「サポート訪問」でした。

版元紹介●アクアコーラル企画

2004年創立。代表の屋比久氏の著作を中心に、沖縄の自然と文化を独自の切り口で紹介した本を作っています。アクアコーラル企画の本の一覧


ボーダーインク1
ボーダーインク2 資料と刊行物がぎっしり。(なお、写真には映っていませんが、最新のMacも複数台導入され、AdobeCSシリーズがインストール済み。DTP取組中、の模様です
ボーダーインク3 新城さんと(なぜか)2ショット


翌日は、「沖縄サブカル」という新ジャンルを作った出版社、ボーダーインクへ。最近朝日新聞でも取り上げられていたことでも(特に業界内では)有名です。

ここでも「県内9割」

ここでも、まずは流通の現状について軽く調査。
ボーダーインクさんも取次は地方小のみ。ここでも訊き込みしてみると、やはり流通は「県内9割/県外1割」との答えが。また、版元直販の割合は全体の数%程度とはいうものの、県内でもそこそこ利用はある、とのこと。
と、ここで、以前から不思議だった、版元ドットコムでの直販をしていない理由を突っ込んでみると、どうも、「そもそも問題を感じていないから」ということのようでした。サイトでは外部のショッピングカートASPサービス(Color Me Shop! proを利用。実際に使ったことはないのですが、ちょっと見た限りでは細かいところまで、なかなかよく出来ています)を利用し、決済手段としては郵便振替後払いを使っているものの、不払い問題もほぼ皆無、とのこと。
版元ドットコム経由ならクレジットカード決済可能、とサイトで表現できますよ(決済手段の多様化も視野に入れていますし……)、とアピールしておきました(後日、正式にサイト直販開始、のお申し出をいただきました)。

新システムの説明をすると、ここではTRC・書協への情報送信はほぼ例外なく行っている、とのことなので、TRCと書協への転送機能は便利に使っていただけそうです。TRCの新しいフォーマットは、図書館向けの項目が大量にあって、なかなか入力が大変なので、ちょっとはメリットを感じていただけたかな、とひとまずホッ。

ついでに、登録した書誌機能を自社サイトに呼び込む、という、有限会社スタジオ・ポットSDとして請け負っている自社サイト構築の例を、サンライズ出版のサイトを使わせていただき、ちゃっかり宣伝。ボーダーインクは、サンライズ出版以上にブログによるメンバーの情報発信が盛んなサイトなので、スタッフブログと書誌カタログが一つのシステムに融合している、という形態はかなり魅力的だったようで、しかし、ボーダーインクはサイトをリニューアルされたばかりのようなので……えーと、まあサイトというものは常にメンテナンス&プチリニューアルを続けて行ってナンボのところがあるので、ひとつよろしくお願いいたします。(汗)

ここでの大ヒットといえば「よくわかる御願(ウグヮン)ハンドブック」。なんでも10刷/6万部のヒットだそうで、沖縄県の人口は約130万ですから、(乱暴にも)日本の総人口に換算すれば、国内600万部の超ベストセラー。うらやましい限りです。で、この本が売れているのも圧倒的に県内。「98%くらいは県内じゃないかなあ」と新城さん。

やっぱり直販も大事、かも

版元ドットコムは、設立とほぼ同時にサイトでの直販を続けています。売上高自体は、おおむね上昇基調にあるものの、その実体は実につつましやかな数字であり、勧誘の際は「くれぐれも、「サイト直販で販路開拓だ〜!」とか期待しないでくださいね」と念を押しているような状況なのですが、こういった現状を考えると、やはり版元ドットコムは直販についてもある程度注力して行かないと、やっぱりダメなんじゃないか、と考えさせられる沖縄訪問でした。

というわけで、ボーダーインク訪問を終えた後は近所の沖縄そば屋でてびちソバを馳走になりました。東京で沖縄そばというと、鰹出汁を前面に押し出したものが多い印象ですが、ここんちのスープは臓物系の出汁がしっかりめで、かなりパンチが効いており、たいへんおいしゅうございました。

エフエム那覇/urumax1
エフエム那覇/urumax2 おまけ。今回の訪問サポートとは関係ないんですが、エフエム那覇urumaxのピカピカのスタジオ/オフィス。「地域情報発信」のカッティング・エッジということでひとつよしなに。(あ、なぜか新城さんもいる!?)
タンカン おまけのおまけ。タンカンが旬、ということで、いたるところで売ってました。見てくれが大変よろしくないのですが、クセのないオレンジ、といった味わいです。

出版の問題は「環境問題」!?

今回、アクアコーラル企画で話をしている時、ふと感じたのが、「出版業とは、生態系(エコシステム)をどうつくるか」がキモではないか、そして、沖縄ではこのエコシステムがうまく機能しているのではないか、ということ。沖縄には観光・文化/風俗/歴史・言論……。多彩な切り口という好条件があり、その地に住む人々が、それらのディープな情報を欲している、という(まあ、その実体は多くの移住組に支えられているのかもしれませんが)図式があり、狭いエリアだから、取次という流通システムがなくても、書店までダイレクトに本が届く状況。自社に適した生態系さえきちんと把握できていれば、出版というパッケージ制作/流通業はまだまだイケるのではないか、と思います。

 

駆け足の一泊二日出張でしたが、アクアコーラル企画の屋比久さん、ボーダーインクのみなさま、大変お世話になりました。

 

 

後日、というか当日のブログで紹介していただきました。仕事早っ。



版元紹介●ボーダーインク

1990年創立。「時代とシンクロした超ローカル」な〈沖縄県産本〉づくりを目指しています。ボーダーインクの本の一覧

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