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タコシェ・版元ドットコム支店●店主・中山亜弓
タコシェ本店サイトへもお立ち寄りください→http://www.tacoche.com/

第三回平台
梅干しについての本


《序》

 今年ももう梅の季節です。
 例年にない暖冬やフライング状態の桜前線の影響で、梅の実が出回るのもいつもより早いようですね。
 皆さんは、梅はお好きですか?
 昔から、梅干しは薬代わりで、うまく漬からなかった年はその家は病人がでやすい、などと言われてきました。これは単なる迷信というより、梅干しの殺菌作用や、成分であるクエン酸が疲労回復効果を持つことから、経験的に言われるようになったのだと思います。
 そんな蘊蓄はさておき、さっそく梅干し作りにトライしてみましょう。
 とはいっても、梅干しを初めて漬ける際のハードルになるのが、漬け物用の瓶や樽、漬け物石を持っていない、というインフラ問題です。確かにこれら漬け物ハードウェアを一式そろえるといいお値段になります。しかも、梅そのものだって決して安くないんだから(スーパーで1キロ700〜800円くらい? 私は生協などで無農薬のものを選んでいるのでキロ980円くらいします)、梅を買って道具を揃えてという、最初の設備投資を考えると、出来あいのものを買う方が安くて早いよ、という結論は火をみるより明らかです。しかも3キロいっぺんにつけて万が一カビでも発生して失敗すれば梅だけで2000円以上の損失になるのです。その2000円で100円ショップの梅干しパックが何個買えることでしょう。
 しかし、そんなビギナーに設備投資のいらない、しかもお試しサイズからはじめられる画期的方法があったのです。

水につけた梅干し。梅の表面には細かいうぶ毛がたくさん生えていて、水につけるとそれが空気を含んで銀色に輝き美しい…。
ごはんに梅干し。自分でつけた梅干しはとてもおいしい。全然関係ないが、お茶の場合、人が淹れたお茶の方がだんぜんおいしいのはなぜ?
品種や漬け方などを変えて何種類もの梅干しを作るのも楽しい。一年で何種類か作って、料理やそのときの気分によって使いわける。

 

 ▼梅干しづくりを楽しむための3冊

きょうの料理 1998年6月号 No424

発行●日本放送出版協会
T1106461060481 457円+税
B5判/164頁/1998-06-01

 それは堀江泰子先生による梅漬けです。先生の郷里・宮崎は雨が多いため、土用干しをしないしっとりタイプの梅漬けの方法が主流だそうで、その伝統の漬け方に先生独自の合理性や手抜き技をアレンジし、わずか1キロから簡単に漬ける方法を紹介しているのです。
 まず、先生は瓶のかわりにziplocなどの密封ポリ袋を使用。しかるべき処理をした梅をこの袋に入れて塩をまぶした後、密封し、袋ごとボウルなど適当な容器に入れ、平たい皿を蓋がわりにして、その上に缶詰やらペットボトルなどを詰めてひとまとめにしたポリ袋を重し代わりに乗せるという、極めて簡単な方法で梅を漬けてしまいます。これなら家にある道具だけでできそうですね。しかも1キロとか500gといった少量に適したやり方なので、ビギナーに最適です。
 マンションやアパートに一人で住んでいると、雨が心配で、なかなか梅を干して仕事に出かけられませんが、先生の方法は梅漬けといって干さなくても大丈夫。もちろん、この方法で漬けておいて、普通に干してもOKです。
 なお「きょうの料理」では毎年5月号で梅干しをはじめとした保存食の特集が組まれます。講師の先生によって微妙に方法が違っていて、変わった漬け方、減塩梅干しなど工夫されたレシピが紹介されるので5月号は要チェックです。
 梅干しを漬けてみて、カビたりせずに成功すれば自信がつき、もっと試してみたくなるのが人情です。そこで私が興味を持ったのは、品種による味や香り、漬かり方の違いでした。
 売られている梅のラベルを注意してみると「白加賀」とか「古城」「鶯宿」「南高」などといった優雅な品種名が書いてあります。(梅干し用梅とか梅酒用梅、としか書いてないものもありますが…)鶯の宿だなんて、それだけでも素敵で食べたくなる名前じゃありませんか。
 たいていの本では様々な漬け物のひとつとして梅干しが取りあげられているか、あるいは梅酒や梅ジャムなど梅加工品や梅を使った料理のトップに梅干しが出ていますが、梅の品種にまで触れた梅干し本は少ないようです。
 その中で、梅一筋 年の松本紘斉先生の本では、品種ごとに梅の実の写真まで出ていて、眺めているだけで、この梅たち全部を一通り食べてみたい…という征服欲に駆られます。
(そればかりか、健康食品としての梅の効能から梅の歴史や海外の梅事情、梅にまつわる昔話なども紹介されているのです)
 そうやって梅の品種を意識しだすと、上記の堀江先生の方法でいろいろな品種をちょっとずつ漬けてみるのも楽しくなり、できあがった梅干しを保存瓶に移し、○年○月○日××青果店 白加賀 などとデータを記したラベルを貼ることも楽しくなります。そうやっていろいろな瓶に入った大小、紅白の梅を眺めていると生唾が湧き満足な気分になります。データラベルを貼った梅干しの瓶が並んで台所はまるで実験室です。
 一般的には梅干し用には南高梅がよくでまわり、高級梅干しといえば南高の銘柄が書かれています。確かに、種が小さく果肉が厚い南高はジューシーで漬けはじめてすぐに梅酢(塩漬けにしたとき浸透圧の関係で梅からしみ出てくる透明なエキス)があがり、漬けやすいし、できあがった梅干しも果肉が多くしっとりしていて、皮もうすく柔らかで申し分ない。最近では中国でもどうやって手に入れたのか日本向けにこの品種を生産しているというくらいです。ビギナーにもおすすめの品種です。
 しかし、実際に漬けてみると、品種のさだかでないちょっと野生味のある梅が果肉こそ南高のようにたっぷりしていないものの、えもいわれぬ梅らしい香りを含んでいて、よい個性を発揮したりするのです。
 このように品種、その年の梅の出来具合、つけ具合で味は微妙に変化するし、その味は梅に塩がなれるまでの1年を経過しないとわからないのだから、梅干しは奥深い。

松本紘斉のよく効く梅百科

著●松本紘斉
発行●家の光協会
ISBN4259538926/1600円+税
B5判/153頁/1998-06-01

やっぱり梅酒梅干し

著●中川紀子
発行● 創森社
ISBN4883400212/1165円+税
A5判/110頁/1996-04-20

 さて、梅に傷や虫食いなどがあると、漬け込んだときに重しが加わって、傷んだ部分から梅が破裂して梅酢が濁ってうまく漬けることができません。そこで、準備段階として梅を選別しますが、何キロか仕入れると、梅干し組に入れない梅もけっこうな量になる。あるいは、梅干しには青梅でなくちょっと熟して黄色くなってきたものがよいのだが、準備だけして明日漬けようなんて思っているうちに熟しすぎてしまったなんて失敗も…。
 そんな若く傷ついた梅や働き盛りを越えた熟年梅を再生させる手軽な加工法を紹介しているのが、この本。梅干しの漬け方も何通りか紹介しているほか、水戸や和歌山など梅の産地に伝わる加工品や土地の人が考え出したレシピも紹介されており、熟し方に応じた梅の味わい方を楽しめます。中身はモノクロで写真は殆どなく、イラストと解説というシンプルな構成で数多くのレシピを紹介している実用書です。

 ▼中山式・秘伝の梅干しレシピ

最後に様々な梅干しレシピを総合して私がアレンジした失敗しにくいビギナー用梅干しレシピを紹介しておきます。

[材料]
梅…1キロ(南高が扱いやすいが、梅干し用なら何でも!)
塩…梅の15%〜20%(自然塩とか粗塩と書いてあるものがよい)
焼酎…消毒用30%適量
赤ジソの葉…1把
塩…50グラム

[作り方]
1●まず梅は、傷みのない、少し黄色くなってきたものを選びます。ただし、熟して傷んだものよりは、傷みのない若いものを選び、自宅で紙袋に移し替えて黄色くなるまで追熟させた方がよい。
2●梅を流水の中で対流させながら傷めないように洗ったら、半日から一日水につけてアクをぬく。よく熟した南高の場合、一日つけておくと逆に水を吸って傷んでしまうので2時間ほどで充分。青いものは長めにつけるなど、梅の状態に応じて様子を見ること。
3●梅をつけている間に、塩を鍋でから煎りして、水分をとばしサラサラにして、さましておく。こうすると塩のなじみが抜群によくなる。
4●梅を水からあげ、ヘタについているポッチを竹串で除いてザルに入れる。
5●鍋にお湯をわかして、梅をザルごと10秒ほどつけて引き上げ、水をきる。こうすることで表面を殺菌すると同時に水気を切ることができる。(パスタパンがある場合は、それを利用すると便利)
6●冷凍保存用のチャックのついた厚手のポリ袋を二枚重ねにした中に、さました梅(もし水分が残っていたら、カビの原因となるのできれいなフキンかペーパータオルでふきとる)を入れ、焼酎大さじ2を入れてよくまぶす。
7●塩を全体の3/4加え、両手で袋をもって全体になじませる。
8●残りの塩を入れて、袋から空気をできるだけ出してチャックを閉め、ボウルなど深さのある容器に入れる。
9●容器の底よりも一回り小さい平皿をポリ袋の上にかぶせ、梅の1.5倍分の缶詰や置物、鉄アレイなど適当なものを詰めたポリ袋を重しとして置く。
10●紙袋をかぶせて容器を覆い、冷暗所に置く。2、3日で透明な梅酢(白梅酢)があがって、梅全体がこの汁に漬かるようになる。梅酢に浸りきっていればカビは生えにくい。梅酢のあがりが遅いときは重しを少し重くしてみる。
11●ときどき紙袋をはずしてチェックする。もしカビが出てきたらあわてずカビと周辺部をそっと取り除き、焼酎で消毒する。
12●赤シソが出回りだしたら、葉が縮れて表面が紫色に光る「ちりめんジソ」を選んで、葉を摘み、よく洗って水気を切る。
13●ボウルにシソの葉を入れ、葉を切らないようにして半量の塩でよく揉む。だんだんと葉のカサが減り、黒っぽい汁が出てくる。これがアク。
14●きつく絞ってアクを捨て、もう一度、残りの塩を加えてよく揉む。今度もアクは出るが前回より色は紫っぽいはず。このアクもよく絞って捨てる。
15●漬けておいた梅のポリ袋を開け、梅酢だけを清潔なボウルにとる。
16●梅酢によく絞った赤シソを加え軽くもみほぐすと、汁も葉もきれいな赤紫色になる。
17●発色した赤シソをポリ袋の梅と一緒にして上から赤くなった梅酢(赤梅酢)を注ぎ入れる。
18●再び、ポリ袋から空気を出して梅もシソも赤梅酢につかるようしてチャックをしっかり閉める。(このとき梅酢につかっていない部分があるとカビやすい)
19●再び平皿を乗せ、今度は梅の半分ほどの重しをしておく。(この段階で重しを重くするとせっかく漬かった梅が破裂してしまうことがあるので、軽めがよい)風通しのよい冷暗所に保存し、ときどきカビが生えていないかチェックする。
20●土用(7月20日ころ)になったら、清潔なザルや簾の上に、汁気を切った梅とシソを並べて太陽の光にあてて干す。
21●途中で一度裏返してムラなく日に当て、夕方取り込む。翌日も同様にして干して、取り込み、3日目は取り込まずに夜露あてる。干すことによって、日光で殺菌し、色をよくし、皮もやわらかくなりおいしさも増す。夜露にあてるとさらにやわらかくなる。(途中、天気が悪くなったら、取り込み、晴れてからまた干すなど臨機応変に。濡れてしまうと保存がきかなくなるので)
22●夜通し干した梅は梅酢にくぐらせ、清潔な容器に入れて保存する。しばらく置いて塩がなじんでからが食べ頃。年があけてからおいしくなる。
※シソを入れずに梅の風味を活かす白梅干しにしてもよい。その場合はシソを入れる過程を省略して土用干しを行う。

 どうぞ参考に梅を漬けてみてください。いろいろなレシピを見ながら、梅を漬けて、お気に入りの品種を見つけたり、オリジナル梅干しを完成させてください。そして、これは、という秘伝やアイデアがみつかりましたら、どうぞご連絡ください。
 あなたのもとに梅のサワーな幸せと健康が届きますように…。


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