出版流通4題

2005-6-8 水曜日

青弓社 矢野恵二 :http://www.seikyusha.co.jp/

1、取扱高別正味制の可能性
 他業種では、基本的には取引高に応じて条件も変動する。ところが、出版界は、特に出版社と取次との取引条件は、口座を開設した当初からほとんど変更がなく、「封建的な身分制度にも等しい」(と慧眼にも指摘したのが、元新泉社社長の小汀良久さんだった)。
 この硬直性について私が言いつづけているのが、取扱高別正味制とでもいうものだ。A取次との取引高が3年間連続して年○円以上○○円未満ならば正味を△にする、その後の3年間で年間取引高が○○円以上○○○円未満ならば正味を△△にする、しかし逆に売上が落ちれば▽にする。 続きを読む »


▲ページの上端へ

事務局の体制が(ちょっと)変わりました

2005-6-1 水曜日

ポット出版 日高崇 :http://www.pot.co.jp/

事務局の日高です。

さて、まずはきわめて内輪の話ですが、2005年4月1日に株式会社スタジオ・ポットから分社化して、有限会社スタジオ・ポットSD(SD=システムとデザインを手がけます、というほどの意味です。以下「SD」)を立ち上げました。簡単な経緯と業務の方向性について、以下、設立の挨拶状に書いた文面です。 続きを読む »


▲ページの上端へ

多様化する出版流通、だからこそ……

2005-5-25 水曜日

トランスビュー 工藤秀之 :http://www.transview.co.jp/

トランスビューは、版元ドットコムへ四年前の創業当時から参加している。
なぜか。トランスビューが小売店との直接取引をはじめるに当たっては、課題があった。
その解決の糸口を版元ドットコムの活動に求めたのである。 続きを読む »


▲ページの上端へ

(その2)自由な社会への道と版元ドットコムとの関係を考えてみた

2005-5-18 水曜日

ポット出版 沢辺均 :http://www.pot.co.jp/

(先週からの続き)

「本の未来を、私たち版元自身の手で切り開いていくために」などと、ずいぶん肩ひじ張ったものでした。

一年間の新刊点数が7万点をこえています。一日に250点ほどになるようです。
この「7万点」という数字をめぐっては、作りすぎだとか、粗製乱造などというように言われています。
でも、ぼくはどうもその「粗製乱造」論に納得がいきません。

実際7万点が「正しい」新刊点数かはよくわからないし、正しい新刊点数を考えたり決めようとしてもあまり意味があるとは思えません。
しかし、7万点という数はともかくとして、たくさんの本を出すことができる状態はとてもいい状態だと思います。
この、出せる自由、がぼくらの自由の度合いを表す指標となると思うからです。

自分が好きなもの、他者に伝えたい考え、などを出すことができる。
多くの本のなかから自分の好きなもの、知りたいことが書いてある本を選ぶことができる。
こうした自由を増やすことに、近代の人間が力を注いできたのだとすれば、せっかくの自由をへらすようなことはマイナスなのだと思うのです。

よく「こんな本を出すことが表現の自由ではない」といって、一部の本を批判する論調を目にしますが、そんな本を出すことも、自由なのだと
思うのです。
もし、ある本が本当に必要ないなら、買われなかった、という事実で退場させられればいいのだと思います。

いま、僕らが日々入手しているものは、ただたんに生存のために必要なものではなくなっています。
生きるために必要な栄養素として食事をしてるというよりも、おいしいものを食べようとしています。
コンビニの弁当でさえ、安さ・手軽さばかりではなく、おいしさを競っていますよね。
いかに栄養をとるかではなく、とりすぎた栄養をいかに燃焼させるか、のほうが問題です。
必要、ではなくって、好きなもを手に入れることが、今のぼくらには大切なんだと思います。
その程度までに、人間は畑を耕してきて、蓄積させてきた。

で、その好きなものを大切するって態度が、だんだんとうまくなって、他者の好きなものを排斥したりしないで共存できる態度になっていくのではないかな、と思います。

さて、版元ドットコムです。
版元ドットコムは主に小規模の版元(出版社)が結果的にあつまった団体です。
たぶん、出版傾向は、売れるだろうモノよりも出したいモノに傾いているんだと思います。

食べ物にたとえるなら、ニチレイの「冷凍・シュウマイ」ではなく、商店街のお総菜屋の「シュウマイ」だったり、つぶれかけたばあちゃんの店のものだったりするんだと思うのです。
冷凍庫にいれて、仕事で遅くなったときにチンしてすぐ食べられる「冷凍・シュウマイ」は便利だし、味だってずいぶんと工夫されていておいしいもんです。なので、それがいいという人も多いでしょう。
またべつに、総菜屋の「シュウマイ」を好きでこのんで買ってくれるひとも、そこそこにいると思います。
日もちしなかったりするけど、まあそっちが好きなんで、って感じで。

で、その両方があるから、ぼくらの食事は、選ぶ自由を増やすことができて、ついつい食べ過ぎてしまうのだとおもうのです。
総菜屋を選ぶこともできるから、ニチレイの「冷凍・シュウマイ」を選ぶ日もいい、ということになるのではないでしょうか。

小規模の版元が、自分の好み・一部の偏った好みの本をだしていて、全体の本の世界の選ぶ自由の幅が広がってるんだと思うのです。(大きな声では言いづらいですけど「小」があるから「大」があり得るんだぞ、と思ってもいます)

そこで問題は、しかし小規模の出版は、その本の存在そのものを知らせることがむずかしいということです。
東京にすんでるぼくは、大阪のある町のお総菜屋の存在を知りません。
ところが、版元ドットコムの存在は、インターネットという道具をつかって、少なくともその存在を知らしめる最低限のことを実現できるようにしたのだと思います。

あとは、よりいっそう自分自身の好み、一部の好みの本をつくっていくのです。
もちろん、それでもだれからも見向きもされなかったら、退場せざるを得ないかもしれませんが……。

沢辺 均(ポット出版)


▲ページの上端へ

版元ドットコムの「初心」を読み返してみる

2005-5-11 水曜日

ポット出版 沢辺均 :http://www.pot.co.jp/

版元ドットコムがサイトを公開したのは、2000年2月。テ ストサイトとして、データベースだけを公開し、販売システムは間に合 わなかった。販売を開始したのは夏。
その前年の1999年12月と2000年2月に版元を 対象にした説明会を開きました。
そのときに書いた「呼びかけ文」が下記のものです。

サイト公開から5年たった。
当時、版元ドットコムがめざしたものがなんだったのかもう一度ふりかえってみたいと思います。

私たちは、本のデータベース、ネットワークでの販売と決済、本のダウ ンロード販売のサイト(ホームページ)として、「版元ドットコム」 を、2000年3月に試験公開しようとしています。

この版元自身が運営する共同事業に、版元のみなさんの参加を呼びかけ ます。

私たちが版元ドットコムのサイトをつくるのは、版元こそが、「本の内 容」を全国の読者に知らせる責任があると思うからです。
読者が必要とする本の存在を知るためには、どんなタイトルの本があるかではなく、どんな内容の本が、何というタイトルで売られているの か、検索できなければなりません。
その事業は、版元自身が運営しなければならないと思います。
書協がデータベースを運営しています。取次が、書店が、販売のための サイトでデータベースを開いています。書協の基礎的なデータを版元が 提供しているのを除けば、取次と書店が私たちのつくった本を見ながら、データをつくってくれています。しかし、その本を熟知している版 元自身が、本来こうしたデータをつくって全国の読者に利用してもら い、取次や書店にも提供すべきだと思います。
また、本の内容を知らせることは、読者とその本と書き手のためである ばかりでなく、売上げという形で私たち版元自身のためになるのです。
ネットワークよって、「本の内容」を全国の読者にデータベースのサイトで公開することができるようになりました。もう、手をこまねいているわけにはいきません。

私たちは、相変わらず客注にかかる時間を短縮できずにいます。版元に届いた短冊の日付を見ると、ゾッとするほど時間の経ったものもあります。たぶん、「迷子」になっていたのでしょう。
客注にかかる時間の短縮にむけて様々な取組が必要だと思います。私たちは、その一つとして、ネットワーク上で決済し、送料無料で直接、版元からお客に送ることにしました。これで、注文を受けてから2〜5営業日後にはお客に届けることができます。
このシステムは書店にも直販するので、客注に迅速に対応してもらえます。書店と一緒にこの客注品問題を解決する、具体的な取組を版元自身もしていかなければならないと考えるからです。

ネットワークが拡大する一方、本の売上げが減少しています。いまほど版元に新たな取組が求められている時はありません。
本の企画や内容そのものを除けば、生産と流通でのデジタルの利用が、新たな取組の核心だと思います。
当面、本は紙の姿のままでしょう。しかし、その一部はすでに、CD-ROMなどやオンデマンド印刷という方法をとっています。ネットワークで、デジタルのまま、「本」が販売されてもいます。流通情報は、あらゆる面でコストのかかるVANでなく、インターネットが活用されるようになってきています。
私たちはこうした状況をくぐり抜けていくために、版元ドットコムが武器になると思います。デジタルとネットワークに親しみ、習熟していくのです。
紙の「本」をデジタルでつくっておけば、増刷をオンデマンド印刷にすることは容易です。サイトで販売するにはデータを変換するだけです。
書店の店頭での販売実績はネットワークで公開され始めています。受注・請求・決済をネットワーク上ですませている業界は珍しくなくなりました。
デジタルとネットワークは、これからの出版業界の基本になると思います。ですから、版元ドットコムを利用して、武器を手に入れるのです。

私たちは、この版元ドットコムに本のデータを掲載すれば、本が自動的に売れるようになるとは思っていません。日本のネットワークはまだ十分に成熟していません。しかし、情報の交換と通信が、ネットワークでおこなわれていくのは間違いありません。そのときを待っていては遅すぎるのです。今から準備すべきなのです。
私たちはこの版元ドットコムの会費を低コストにしました。入会金1万円、月額会費を2千円から5千円までに抑える見通しを持つことができたのです。
だからといって、すべての版元に参加して欲しいと考えてはいません。専門書の版元同士が横断組織で共同の営業活動をしているように、様々な版元グループが「内容検索データベース」をもち、独自のサービスを提供していって欲しいと思っているのです。
むしろ、そうした様々な版元グループのサイトを、いわば串刺しして本を探すといった、読者の活用の姿を思い浮かべるのです。そのために、様々なサイトと共同したり競争したいと思うのです。

本の未来を、私たち版元自身の手で切り開いていくために。

版元ドットコム幹事会社一同・2000年2月1日

ちょうど5年前のものです。
どうだったですか?

(次週に続く)


▲ページの上端へ

アイシーメディックスの日々

2005-4-27 水曜日

アイシーメディックス 藤本浩子 :http://www.dgpro.co.jp/~icmedix/

 版元ドットコム新入りのアイシーメディックスと申します。命名者(社長)によるとそれは、”International Communication Media Mix”というたいそうな意味が込められているのですが残念なことにほとんど知られてはおらず、今のところ単に薬品会社と間違われやすい社名になってしまっています。
 余計な前置きをしてしまいましたが、入会させていただいたからにはただの教えて君にならないように頑張りますので、会員社や会友の皆さまをはじめ、当サイトを訪問してくださった全ての皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、アイシーメディックスは星雲社さんをとおして流通させてもらっている身の上です。聞いたところによれば星雲社経由の版元さんの中には2年に1冊くらいの超おそペース、しかも単なる道楽で本を出しているというところもあるそうです(それは版元さんと言わないのかもしれない)。そういう極めて雑多な600(社)ほどの星雲の中でひときわキラキラ輝く星がアイシーメディックスだと思うのですが……。
 この状態について、出版業界外から最近やってきたばかりの私からすると、取次さんとのあれこれ面倒なやりとりをわずかな手数料で変わりにやってもらって、とても有難い感じがしています。同じく業界外から数年前に参入してきた社長と二人水入らずの会社ですので、直接取引きのデメリットよりメリットのほうが現状ではずっと大きいような気がします。
 デメリットで思い当たることといえば、書店営業に行ったとき、「返品の逆送が多いんですよねーー」と言われることがたびたびあることくらいでしょうか。
 ——〈返品が逆送するって何??〉
 と、その意味すらわからなかった私は早速星雲社に電話をかけ、「書店さんで返品が逆送するって言われるんですがどうしたらいいですか?」と尋ねました。すると、「基本的にそんなことはないはずなんですけどね。返品伝票に”版元の○○受け”など明記しておけば防げると思いますよ」との回答が。そこで書店さんにそう伝えると、「うーん、そうは言っても現実にはそうならないからねーー」と難しい顔をされました。この件は私の中でいまだ未解決です。
 一方、社長の体験談を聞くと、星雲社経由版元であることで冷たくあしらわれたり鼻で笑われたような(気がしているだけかもしれない)ことがあるようです。しかし私は書店営業において冷たくされたことは一度しかなく、書店営業どころかまず営業というもの自体をしたことがなかったので、営業という仕事は(ましてや飛び込みしてる)いじめられたり追い返されたり、もっと涙に暮れる日々が待っているものと思っていただけに、やや拍子抜けの感がありました。
 …と、まるで営業担当者のようなことを書いてしまいましたが、実際は担当書籍に関して各人がその誕生から死までを見届ける制度になっているだけなのです(会社が新しいため、みな乳飲み子—青少年くらいの本たちなのですが)。
 しかしそのことが本作りというものに対して自らに責任を感じさせ、あれこれ無い知恵を絞ったり知らないことを調べたり版元ドットコムに入ってみたりする原動力となって、仕事を楽しくさせてくれているのです。前職ではある業界紙記者をし、下版までが仕事でした。それを思うと、やることのなんと幅広くなったことか。大筋を忘れると今日どの本のどの部分の何をやっているのか、自分を見失ってしまいそうです。
 一つの会社として考えると、こういった形を何年もとっているなら大きくはなれないと思います。でも、小さい今のうちだからこそ、とりあえず何でもかんでも自分でやってみることができ、この状態を人生に例えるなら短く貴重な青春時代のようです。……と思っていたら『編集会議』4月号で”編集者も書店営業しよう!”とかいう特集をしていたので、〈なんだ、結構私は業界の時代の流れに乗れていたってことか…〉と、ちょっと嬉しくなってしまいました。
 とにかくそのような出版活動をしていますので、担当本(=わが子)が売れなかった悲しみは、直接私(=母)の心を刺しとおします。
 〈売れっ子になってほしい……〉
 〈あの子は売れてるのに、なんでうちの子は……〉
 〈この子はきっと大物になるに違いない!〉

 子を育てる母のように、楽しく悶々とした毎日を送っているアイシーメディックスなのです。


▲ページの上端へ

地方版元の営業代行をして10年の私です

2005-4-20 水曜日

E・E企画 西川恵美子 :http://

大阪で版元営業をしていた縁で首都圏を中心に地方版元(関西が中心)の営業代行を始めて10年、「地方色の濃い特色」が持ち味で営業活動をしている。
 版元営業と代行業と、何が違うか? と聞かれても私の場合は、殆ど変わらない。
大阪での版元営業時代は、東京にある本社から情報を得て、関西の書店を中心に営業活動をしていた。今度は、逆に関西の複数版元から情報を得て、首都圏で営業活動をしているのである。取り扱う版元の数の違いはあるが・・・
情報の入り方と仕事の仕方が、あまり変わらないのである。

あくまでも私の場合の話であるが・・・
「出来た時が配本日」的な版元が、多いのではないだろうか?
当然のことだが、会社の存続と数年後の成長を見据えての計画生産と売り手である市場を熟知することの重要性を実感している。
営業代行業をしていての悩みは、情報収集の難しさである。比較的、小規模の版元を中心に仕事をしているからだろうが、ひと月先の新刊予定が滅多に提示されない(例外もある)。例えば新刊については、企画の段階からの相談が少ない。新刊案内を見て、判断をして営業活動をするのが日常である。
関わっている版元のひとつとは、昨年から重点商品について企画段階から取次配本の部数決め・書店での展開・タイトル・装丁など、ひいては売上実績などを含めた営業会議を継続的に実施している。配本も取次に任せるのではなく、事前に取次窓口で積極的に○冊配本したい、どうすれば良いだろうと具体的な相談や意識的に拡販をする中で、取次の対応が、少しずつ変化していることが実感できる。勿論、現場である書店担当者の販売意識も少しずつ変わってきていることが嬉しいし楽しい。
 地方版元は、新刊見本出しも全て、宅配と電話でのやり取りで済ませる。直接、取次窓口で並ぶ事は、滅多にない。当たり前のことだ。何度か見本出しに伺うと取次担当者と顔なじみとなり話ができる。「では、じゃ!少し多めの○冊でも可能ですか?」とたまになる。やはり、顔の見える営業は大事である。

今年の本屋大賞が発表されて、書店で大きく販売展開されている。先日、掲載雑誌を買って読んだ。「○書店の▲さんは、こんな本を読んでいる」とそれぞれ皆さんの顔を思い浮かべながらコメントを読むのも面白い。ついベスト入りした推薦の1冊を買ってしまった。まさに、魔力だ。
 書店担当者が売りたい1冊・売りたい版元・著者・装丁などがあることを、作り手側がいかに把握して編集するか? そして作り手側の思いを市場である書店、ひいては読者へどう伝え、届けたら良いのか? 出会いの場の演出と書店での販売戦略は、営業代行業ならずとも全ての営業の課題だろうと常々考えていた。
 そんな中で「末来4月号」読書特集「座談会 営業・販売の現場から考える本作り」を書店担当者から教えられて、直ぐに読み共感できた。是非とも営業ご担当者の皆さま、「末来」にはヒントがたくさん話されています。大型書店には、レジ横に平積みされていますので1冊貰ってお読み下さい。読み捨てずに編集者へも回覧ください。

長年、人文書を中心に営業活動する中で、「売れない!」と嘆く担当者の多いことが気がかりだった。確かにたくさんは売れない。しかし、1冊売る喜びを感じて欲しい、売れた喜びを共感したいという思いから書店担当者と版元の勉強会(Basic Booksの会)を仲間と始めた。不思議なもので関西は、書店間の交流が多い。東京から出張に行くと必ず京都・大阪という括りで版元と書店担当者同士が集まる。お互い親しい関係だ。
 手前味噌ではあるが、首都圏も元気の良い担当者が増えてきていると感じている。BBの会を通して書店間の交流も出来てきている。これまで一方通行的だった情報が、少しずつ対流し始めているのが嬉しい。
 今年初めてのBBの会は、4/26(火)に予定しています。興味のある方は、是非ともご連絡下さい。


▲ページの上端へ

営業イメージ狂想曲

2005-4-13 水曜日

アールズ出版 阿内秀介 :http://www.rs-shuppan.co.jp/

 各出版社それぞれに「哲学出版社」「文芸出版社」…などなど、「色」というものをお持ちだろう。その時その時の出版物によって書店での出版社のイメージと言うものが付いて回るものだ。
 元々弊社は「文芸」「競馬」「株式投資」の書籍を発売し、中でも「競馬」に力を入れてきただけに『競馬版元』のイメージが強いようだ。当然営業マンも競馬に詳しいと思われる、「明日のレース、何買う?」から「昨日のレースは取ったか?」まず書店に着くなりの会話はこれ。まあ、競馬好きとしては公私混同、趣味と実益、願ったりかなったり…、うれしいやら悲しいやら(まあうれしい)。
 
 しかし、中には以前在籍していた会社のイメージをいまだに払拭できずにいる場合も多い。以前ちょっとエッチな本なども出版している会社にいたものだから、『エロ版元営業マン』さらに発展して『エロ営業マン』もう個人にイメージが付いてしまう。
「POGの本(競馬のペーパーオーナーズゲーム)を今度出します。」と言っても
「なんや、それ?エロいんか?(別に関西弁の必要はないが…これもイメージ)」
「いや、競馬の本なんです。」
「なんや、最近は競馬の本なんか出してるんかい。エッチな本案内してえな」
「ところで、今晩どう?」
「はっ、何ですか?」
「ちょいと夜の街にでも?(言葉濁してます。ストレートに書けません。まあそういう店へのお誘いです。)」
「はっ!お供いたします。」即答…(こちらもまあうれしい)
「で、新刊ですけど…」
「適当に入れといて、じゃあ8時に…」
……会話が成り立たない。……そして、営業にならない。(これはちょっと悲しい)
そんな何年も前のイメージを引きずらなければならない。現在の会社が3社目だけに色々なイメージが付いて回るのだ。

 弊社の場合、営業部隊のメンバーを考えると大変怖い話だが、営業は会社のイメージを背負って立つ「会社の顔」なのだ!なのか!?


▲ページの上端へ

版元は割を食ってばかりいる

2005-4-6 水曜日

第三書館 北川明 :http://www.hanmoto.com/bd/d3skan/1/

出版業が情報産業だというのは、単に本が文字やビジュアル情報を伝送しているということではない。本にまつわるあらゆる情報が付加価値をつけられて流通するようになるから情報産業なのだ。常々そう考えてきたが、昨今いよいよそれを実感することが多くなってきた。

 どこの書店でどういう本がいつどんな読者に売れたか。その情報に結構な値段がつけられてすでに出版業界で売買されている。いわゆるベストセラー情報ではなく、個々の版元が自社の本や他社の競合本の売上とか広告効果などをオンタイムで知ることが出来るので、重宝されている。

 この場合、本がどれだけ売れたかだけではなく、どれだけ売れなかったかと言う情報にも値段がついていることの意味が大きい。つまり、情報を売る書店サイドからすれば、極端な話、本がぜんぜん売れなかっても、その「どの本がどれだけ売れなかったか」という情報を売って食べて行けるという「情報産業」が成立し得るわけである。

 版元サイドからすれば、自分のところで作った商品がどれだけ売れたかを教えてもらうのに、どうして毎月そんなに支払わないといけないのか、ということになるのだが、そういうクレームをつけた版元を寡聞にして知らない。

 一方、取次から版元に売られる情報の一例として新刊委託したときの書店への配本リスト情報がある。これは上記の書店売上情報とは性質を異にする。書店売上情報は販売用に新たにシステム開発したデータベースによるものである。だからこそかなりの値段で売られていると説明もつく。ところが、配本リスト情報はもともと取次で自社の配本作業用に作ってあるものである。それをそのまま版元にメールで送るだけなのに、各取次を合わせると、一点当り何万円かについてしまうのだ。最近耳にして驚いたのは、某取次から返品情報を版元にメールで送ってくるシステムを作るから、一回一点あたり何がしかを払ってくれという要請が来たこと。版元としては、ただでさえ見たくもない返品情報をデジタル化してあるというだけで、カネを払って買えと言うのだ。それでもデジタル化情報というだけで唯々諾々と受け入れる流れが大勢らしいから、版元もアマく見られたものだ。

 ここまでに挙げた事例はいずれも、情報を発信する側がそこからしか出せない情報を握っていて、それをその情報を必要としているサイドが買うという話だ。

 それでは、版元だけが握っていて版元からしか出せない情報で、取次と書店がほしがっている情報はどのように扱われているか?

 例えば、新刊刊行予定情報にしろ既刊本の在庫情報にしろ、有料なんてとんでもない、なんとか受け取ってくださいと版元が提供しようとしても、新刊案内はFAX用紙代がもったいないといやみを言われるし、取次のデータベースの在庫ステイタスを変更してもらおうと在庫情報を送ってもゼーンゼーン無視されたりデータベースに反映されないままだったりの繰返し。

 どう考えても、この情報化社会の中の情報産業の一翼を担っているのに、版元だけはやけに割を食ってばかりのように思えてならない。

 割を食うといえば、日書連が読者サービスにポイントサービスを導入して定価の1%ほどを還元する方針を打ち出したとかで、思い切ったことをやるものだとびっくりしていたら、何と何と、その1%は書店でも取次でもなくぜーんぶ版元におっかぶせるつもりだという。

 版元はこの情報化大戦争の中で、行く末にアマい見通しばかり持っていて「楽天的大敗北」を喫してしまいそうな雲行きである。


▲ページの上端へ

印刷屋さんはエラい!

2005-3-30 水曜日

太郎次郎社エディタス 須田正晴 :http://www.tarojiro.co.jp/

3月の3連休、印刷屋の真似事をした。
手づくりの漢字教材を自社内の簡易デジタル印刷機で印刷したのだ。
A4判300部、全11巻総計1020ページ。大仕事とはおもっていたが、考えた以上にたいへんだった。

最初は、著者が40ページていどずつのものを自宅で刷って、教員に頒布していたのだが、小学校配当漢字全1006字のワークブックの印刷となると、ちょっとすごい作業量になってしまう。
話を聞いているうちに、スキャン→PDF化→面付け→自動製版・印刷という流れをつくれば、かなり省力化できるのでは? と考え、ソロバンをはじいたら、諸々の協力もあって、なんとかできそうだ、と浅はかにも考えてしまったのだ。

まずは、もとの手書き原稿のスキャニング。当初は1枚1枚フラットベッド・スキャナでスキャンして、補正をかけて、とやっていたが、さすがにラチがあかない。オートフィーダのあるビジネスコンビニに外注した。
そこからの面付けは、折よくAdobeのAcrobatが7.0にバージョンアップして、トリミングなどの機能が大幅強化されたので、かなりラクにできた。

問題は、印刷だった。

まず、速度の問題だ。小社で使っている簡易印刷機の説明書を見ると、「1分間最大120枚」と書いてある。つまり、1時間7200枚しか刷れない、ということだ。300部×1020ページは約30万ページ。それを2面付け両面印刷するので、予備を入れて8万枚16万通し。ぶっ通しで刷っても20時間以上かかるということだ。この速度はプロの印刷屋が使っているオフセット枚葉機でも大きくは違わないようだ(もちろんサイズが違うので生産量は4倍だ。両面機なら8倍。輪転機ならケタ違いに速い)。
印刷ドラムの加減速の時間や製版時間など考えると、物理的に30時間以上はかかる。しかし、3連休というのは72時間しかないのだ。機械を最大効率で働かせようとしないかぎり、完了はおぼつかない。

ちょうどこの3月は、印刷屋のスケジュールがとても混んだ。聞く話によると、中学の指導要領改訂がらみで、印刷需要が急増したらしい。そんななか、ふだん2週間足らずでできる重版がいくらたっても日程のメドがつかず、ずいぶん印刷屋の営業さんをせっついたものだ。
自分が刷る立場になればわかる。「物理的に機械の日程がどうしてもとれません」とは、こういうことか。彼らも、「そんなこと言ったって、ムリなもんはムリだよ!」とおもっていたことだろう。

印刷をはじめてみると、紙の補給が手間になる。印刷の助手を「フィーダー」というらしい。紙やらインキやらを印刷機さまに遅滞なくお渡し申しあげることが重要になる。紙を適量いい位置に用意しておき、版替えのあいまにすかさず投入しなければならない。かといって手荒く扱えばたちまち印刷曲がりや折れの原因になる。
最初は、「印刷のあいだにほかの仕事もこなそう」なんて思っていたけど、そんな時間はありゃしない。


今回、用紙はA判22連を4裁して用意した。つまり88,000枚。1割の通し予備に、さらに8000枚の予備をつけたが、まったく安心はできない。じっさい、用紙セットの前後を間違える、面付け処理前データを印刷する、下巻のウラに上巻を刷る、データ転送のエラーを見逃す、エラーで電源を再投入したとき位置調整を忘れる……考えられるあらゆる事故をおこした。
こうなると、予備の枚数をケチって、事故に備えた用紙を手元に確保しておきたくなる。ふだん自分では「予備は均等に刷ってよ。製本側にだって予備は要るし、発注数以上にできればそれに越したことはないんだから」とか要求しているくせに。

5万枚を越したあたりから、紙送りモーターに熱を持ったらしい印刷機がエラーを出しはじめ、また、ローラーの摩耗や調整ズレも起こりかけて、ヒヤヒヤしながらの印刷だった。ここで機械に故障が起これば、納期は絶対に守れない。

さんざん苦労してつくったこの刷り物だが、A4判30万枚というのは考えてみれば、A5判240ページ5000部という、ごく一般的な単行本1点の分量にすぎない。
注文された印刷物を毎回毎回、規定の枚数、納期通りに、きっちりキレイに仕上げていくというのはどんなにタイヘンなことか。印刷屋さんの苦労を垣間みた気がした。印刷屋さんはまったくエラい! ちょっと刷りが遅れたとか、用紙予備の要求が多いとか、そのくせ刷られた予備が少ないとか、そんなことで文句は言わないようにしよう。とりあえずこれから10日くらいは。

今回の話、刷り物を丁合いをとって製本するのは、はなからプロの製本屋さんにまかせる計画だった。シロウトのこんな無茶な印刷ができたのも、最後にプロのチェックがはいる安心感があったからだ。製本屋さんもエラい!


▲ページの上端へ