第6回版元ドットコム入門「紀伊國屋書店PubLineWebの見方と使い方」レポート

2005-3-18 金曜日

語研 高島利行 :http://www.goken-net.co.jp/

3月16日(水)16時より、恵比寿の紀伊國屋書店本部にて第6回版元ドットコム入門「紀伊國屋書店PubLineWebの見方と使い方」が開催されました。

反響の大きさに少し戸惑いつつも準備を進めた結果、70名近くの方のご参加をいただきました。内容に自分自身としての反省点はあるものの、イベントとしては大成功であったと思います。

当日は下記の内容で進行いたしました。

● あいさつ(岡部さん:青弓社営業課長、版元ドットコム幹事社)

● PubLineWebの機能概略(四井さん:紀伊國屋書店 店売総本部 店売推進部 店舗システム課 係長)
オールベスト/各店ベスト/オール売上推移/店別売上推移/客層推移/商品指定在庫一覧/商品指定売上情報/出版社指定在庫/ダウンロード/売上ゼロ商品/在庫ゼロ商品

● 企画に生かすための見方と使い方
▼気になるジャンルの売筋企画を見る
▼自社や他社の類似企画との比較方法
▼想定読者層と実際の読者層を比べる(性別・年齢)、など。

● 営業(販促)に直接役立てるための見方と使い方
【市中在庫】商品の在庫状況をチェック
【重点商品】重点販促店舗・商品・冊数の見つけ方
【返品のタイミング】返品になるタイミングとそれを防ぐための販促方法
【増刷部数】ロングセラー商品の重版のタイミングと販促、など。
【広告効果測定】広告効果の測定。
【他社の動向】自社でのデータ分析のためのデータ取り込み方法

● 販促ケーススタディ
希望者の単品データを材料に、PubLineWebのデータで状況を判断し、具体的な販促方法を参加者全員で考えてみます。

PubLineWeb の機能説明ですが、ふだん使い慣れている方にとっても一つ一つの機能についてきちんと説明を聞く機会はあまりないかと思います。また、 PubLineWebを使っていない方にしてみると初めて見る画面であり、全部を通して把握するのは難しかったかもしれませんが、丁寧な説明で一通りの機能はご理解いただけたのではないかと思います。

企画に生かす、という点では、やはり自社ではなく他社の数字が全て分かってしまうということが重要でした。逆に言えば自社の数字も丸裸にされているわけです。出版物のマーケティングデータとしては非常に質が高く、まさに企画毎の成績表とも言えるPubLineWebのデータを活用するためには先入観を捨ててデータを見る必然があるのではないかと思います。決してこれが全てではありませんが、少なくとも企画立案の際の目安にはなるはずです。

営業の話では私の考えていることが上手く伝わったかどうか、ちょっと不安が残りました。データを眺めているだけでは売上が上がらないのは当然です。ですが、現状を把握せず、暗中模索のままで一体何ができるのか。編集も営業も店頭での実売を知りたいと願い続けていたはずです。少なくとも私はそうでした。実売が分かればもっと効果的な販促ができるかもしれない、実売が分かればもっと返品を減らすことができるかもしれない。そう思いながらデータを色々なやり方で見ていると、「勘」では見えなかった「事実」が見えてくる、そういう気持ちは上手く伝わったでしょうか。

ケーススタディでは扶桑社営業部の梶原さんから非常に興味深い事例を挙げていただきました。具体的な内容はあの場だからできた話だと思いますのであえて触れませんが、「流行りモノの興亡はトップセールス商品の推移で見るとよくわかる」という事に深く納得しました。つまり、増刷の判断においても他社の商品の売れ行きが参考になるわけです。同時に、商品供給の規模と売上が一直線に結びついていないという現実も勉強になりました。

その後、時間も押し迫ってきたあたりで質問も多数飛び出しましたが、それに応える形でPubLineWebの構想中の新機能としての「最終発注日の表示」や「リアルタイムの在庫表示」なども取り上げられました。

「PubLineWeb の画面そのものを初めて見た」という方々にはその場でご感想をいただきました。その中のお一方が、「PubLineWebの数字だけで判断して良いのか。また、実際の店舗を取り巻く環境の変化などはデータでは全く分からない。つまり、データだけでは具体的に何をすべきか見えてこない。」といった旨の発言をされました。

紀伊國屋書店さんのシェアは、出版社やジャンルによって違いますが、一般的に5%〜10%程度と言われています。確かにそれだけのデータで全体を判断してしまうのは危険です。が、今はPubLineWebの他にも実売データを活用することができます。例えばP- Netであれば約4000の店舗の月次データが取得可能です。シェアは70%以上のはずです。そうしたデータを活用するための下地として PubLineWebでのデータの理解は非常に重要になってきています。
「データを見ているだけでは売上の変化の原因が何なのかわからない」というご指摘ももっともだと思います。ですが、虚心にデータを見ていると今まで気がつかなかったような売上の変化が見えてくることも多々あります。変化の原因は多様です。例えば近所に競合店が進出してきた、鉄道などの路線に変化があった、お店の担当者が変わったなどなど。それを確認するのは営業の仕事です。変化の原因を探り、それへの対応策を見つけだし、実行する。データで売上が分かるからこそ、書店営業がますます重要になってきているのだと私は思っています。

最後に私からは、ノウハウを共有するための場を何らかの形で継続的に運営して頂きたい、という要望を紀伊國屋書店さんにお伝えしました。

「眠かった」「退屈だった」「また同じ話してたじゃねえか」などなど、終わった直後から多数の方から色々なご意見をいただきました。激励だと思って受けとめております。ありがとうございます。
厳しいご意見だけでなく、嬉しい感想もいただいています。「早く会社に戻ってデータを見たくなった」「まだまだPubLineWebの機能を使いこなしていなかったことが分かった」「わりに多くの人がデータというものにどういう勝手な期待と誤解を持っているのかがよく分かってかなり興味深かった」などなど。中でも個人的に嬉しかったのは「データの時代だからこそ書店営業がより重要だという主張に共感を感じた」という感想です。何かが伝わった気がします。

なお、翌日の版元ドットコムの幹事会では「大規模な会も良いけど、比較的売上規模が近いところの版元でこじんまりと、でもみっちりとやるのも良いかも」という話が出ました。確かに自分もそれは感じました。自社の実売数を曝け出すのは、例え相手が大手の版元でなくても恥ずかしいものです。ですので、版元ドットコムの会員社を中心とした小規模の勉強会の開催もあらためて計画しております。

今回は定員の関係で心ならずも随分多くの方々のお申込みをお断りさせていただきました。そういった方々のためにも、紀伊國屋書店さんでも別の機会を考えられているようです。その際は是非、ご参加ください。

実売データだけでなく、いわゆるIT(情報技術)によって出版業界の内部にも大きな変化が起きつつあります。例えば書誌及び在庫情報については、いよいよ業界全体を集約したデータベースの構築が現実味を帯びてきました。マーケティングだけでなく様々に活用できる基礎情報としての「共有書店マスター」の活用も本格化してきています。「書籍返品の無伝化」など、一昔前には夢物語でしたが現実にスケジュールが迫っています。

「出版業界は古い」とおっしゃる方も多いのですが、そろそろ自分で動かないと置いて行かれるかもしれませんよ、ご注意ください。


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