韓国映画『大統領の理髪師』

2004-11-24 水曜日

同時代社 高井隆 :http://www.doujidaisya.co.jp/

 先月、初めて映画の試写会というものに行ってきた。といっても、私が招待されたわけではなく、ある人が「今晩、韓国映画『大統領の理髪師』の試写会があるのだが、私はどうしても行けない。誰か行く人はいるか」というので、どんな映画か知らないが、タダで映画を見られる機会を、みすみす逃すはずもなく、すかさず「わ、わたし、行きます!」と手を挙げて、今日中にかたずけようと思っていた仕事をほっぽりだし、試写会会場へと急いで出かけていった。
 でも正直、「タダ」ということで勢い込んできたものの、最初はどんな映画か不安であった。ところが、ところが、オープニングから最後まで、ユーモアあり、涙あり、また涙ありと、ホントいい映画だったのだ。私などボロボロ泣いてしまった。(30過ぎの男が肩をふるわせて一人で泣いてる姿はさぞかし異様だったことだろう)

 というわけで、せっかくの試写会に行く機会を与えてもらって、久しぶりにいい映画に出会えたのに、私一人が泣いたというだけではもったいないので、僭越ではありますが、この場を借りて、この映画の宣伝を少し。
 まず、時代は1960年代初頭から1970年末までの約20年間、激動の韓国現代史が舞台だ。家族を愛するごく普通の真面目な床屋が、ひょんなことから朴正熙大統領の理髪師になってしまうという設定。この間に不正選挙、クーデター、暗殺と歴史的な事件が次々おこるわけだが、そのつど、主人公の理髪師は国家権力に振り回されて滑稽なほどオロオロしていく。それが理髪師の子どもの目をとおしてユーモアたっぷりに語られる。(またこの理髪師を演じるソン・ガンホがいい。昨今の韓流スターのような二枚目ではけっしてないけれども寡黙で真面目、だけどちょっとほっとけない父親を好演している)
 リアルタイムでこの時代に青春をすごした世代の方々はもちろんノスタルジーを感じておおいに楽しめると思うが、実はこの映画の監督は69年生れなのだ。韓国の厳しい時代の史実を題材にして、歴史は苦手というような20〜30代の同世代にこそ、「過去」を振り返り「現在」をどう生きるかメッセージが託されているのだと思う。
 政治とは関わりなく、ただ一生懸命に働き、家族を愛し、誠実に日々を生きようとする庶民にも国家権力が否応なく介入してきた暗い時代のハナシ。でも今、某国のブッシュ大統領は世界中を恫喝し、グローバリゼーションの名のもとに急速に世界は変わっていく。小心者の一庶民である私としても、生活と権力について考えずにはいられなくなのだ。

この映画、来春ロードショーということです。
韓流ブームは相変わらずですが、その中でもオススメです。(だと思います。「冬ソナ」など見ていないので何ともいえませんが)
是非ご覧ください。


▲ページの上端へ

つぶらな瞳

2004-11-17 水曜日

てらいんく 佐相美佐枝 :http://www.terrainc.co.jp/

今、世の中は、純愛一色。
私も、他に漏れず、すっかり「冬のソナタ」にはまってしまった。純愛に、はまってしまったのかヨン様にはまってしまったのか、定かではないけれど。相思相愛の2人の間に次々に起きる外的事件、そして、それに増して2人の男の間を行き来する女の優柔不断さ。2人の男は、悲しみ、苦しみ、傷つきながらも1人の女を一途に思い、1人の女を奪い合う。断ち切れない恋。結局、ハッピイエンド。相思相愛の2人が結ばれる。
しかし、実らない恋、「冬のソナタ」では、サンヒョクの恋。好きで、好きで、でも彼女の心は、他の人にある。『愛してなくてもいいから、僕のそばにいて・・・』、あまりに切なすぎる。
てらいんくから8月に発売した「つぶらな瞳」も、男のただひたすら一途な片思いの恋ものがたり。今、ベトナムで若者に圧倒的な人気のベストセラー作家グエン・ニャット・アィンの作品の邦訳。
小学校にあがったばかりのころ「つぶらな瞳」の少女に出会ってしまった男のそれからの人生は、すべて彼女のためにだけあった。
彼女が、雀の卵が欲しいと言えば、命がけで屋根に上り、彼女をいじめるものがあれば勝ち目のない相手に立ち向かった。大人になってからも、彼の人生は、すべて彼女の「つぶらな瞳」のためにだけあった。しかし、彼女の心は、他に在る。他の男に騙され、傷ついて「つぶらな瞳」に涙を流しながら彼のもとにやって来るが、また、すぐに他の男に行く。そして、彼女は、未婚の母になる。それでも彼は、その子ども、母親にそっくりの「つぶらな瞳」の女の子を父親のように、又、自由奔放で留守する母親に変り面倒をみる。
断ち切れない初恋。決して愛を受け入れない女。『愛してなくてもいいから、僕のそばにいて・・・』。あまりに切ない男の純情。
男が可哀想で、切なくて、切なくて、溢れる涙を拭いながらのゲラ校正。
これは、きっと、女には、理解できない男だけの愛の一途さ?男って、本当は、とてつもなく純情で、純心なんだと人生半世紀を過ぎて初めてわかったような?
結末は、ハッピイなのか?アンハッピイなのか?読者の心が決める。
清らかな涙を久々に流したい方、共感する男の方、結末が気になる方、「つぶらな瞳」をぜひ、読んで。
ちなみに、今、韓流ドラマ花盛りですが、てらいんくの『モンシル姉さん』も、ヨン様が、子どもだった頃、テレビドラマ化されて、韓国の茶の間をくぎつけにした作品です。
韓国版「おしん」、朝鮮戦争下、けなげに生き抜く少女の物語です。


▲ページの上端へ

人間の本質なのか

2004-11-10 水曜日

草風館 内川千裕 :http://www.sofukan.co.jp/

話は歴史を溯る。秀吉の朝鮮侵略戦争のおり、「高さ三尋の石垣を我も我もと攻め登り、おめき叫んで攻めければ、(中略)みな手を合わせて跪き、聞きも習わぬ唐言、まのうまのうということは、助けよとこそ聞こえけれ。それをも味方聞きつけず、斬りつけ打ち捨て踏み殺し、これを戦神の血祭りと、女男も犬猫も、みな切り捨てて切り首は、三万ほどとぞ見えにけり。」という戦闘場面を描いたのは、第一陣(小西軍)に属した松浦軍の家臣の吉野某の記録である。秀吉の果てしない征服欲がおこした無謀な侵略に翻弄されたのは朝鮮半島の民衆だけでなく、狩り出された日本の兵士たちも同様だ。まさに阿鼻叫喚そのものの生ける地獄である。
翻って今の話、日本の若者がイラクで人質にとられ命を落とした。日本の支配者の冷酷なことよ。
無謀な戦争を勝手に起こしたアメリカになんで日本は追随し、イラクを援助(これはしかたがないが)しなければならないのか。侵略して国土を破壊しながら、復興援助をするという、これはひとりよがりの侵略戦争である。
現今の戦争は武器弾薬はコンピューターで操作され、あたかもテレビ画面で戦争遊戯をするかのごとくである。秀吉の戦争のごとくには、目の前に残虐な風景が現出しない。やられるほうはたまったものでない。
古代から戦争を起こすのはたいていは権力者たちの果てしのない欲望からである。「大義」なんてものは、まやかしのごまかしに過ぎない。
そんな戦争にまきこまれる民衆こそいい迷惑である。まったく古代から現代まで、懲りずに愚かな戦争を繰り返している。


▲ページの上端へ

日本の「国魚」をご存知ですか?

2004-11-2 火曜日

新日本教育図書 藤田聖子 :http://www.snkkoi.com/

 突然ですが、日本の国魚って何だかご存知ですか?国鳥(キジ)や国花(桜・菊)は有名なようですが、「魚」はあまり知名度がないみたいなので、今日はひとつ覚えていただけたら・・・日本の国魚は「錦鯉」です。小社では、「錦鯉」の専門月刊誌『鱗光』< http://www.snkkoi.com/rinkoj/index.html>(りんこう)を毎月発行しています。版元ドットコムに参加したばかりの小社なので、自社紹介を兼ねて「錦鯉」にまつわることを少し書いてみようと思います。

 日本で錦鯉といえば「お金持ちやおじいちゃんの趣味」というイメージがある非常にマニアックな存在・・・ですよね?その専門誌となればいわずもがな、です。私が「出版社に転職する」と言ったとき、前職の同期たちはこぞって「出版社って??ファッション誌?小説?旅ガイド?グルメ?エステ?」などなど、ふだん20代OLたちが触れる機会のあるジャンルばかりを並べ立てて質問攻めにしました。そこで私が一発「錦鯉だよ!」と言い放ったその瞬間。場が静まり返ったのは言うまでもありません(笑)。私が研修させていただいた書店の店長さんにも「いやぁ、僕はこの業界にずいぶん長くいて様々な本を見てきたけど、鯉の本が、しかも月刊誌が存在しているとは・・・まったく知らなかったよ」と絶句&笑われてしまいました!

 そんなマニアックな錦鯉ですが、海外では「家族ぐるみの趣味」として楽しまれていて品評会などのイベントも家族連れの方が多いんです。特に盛んなのは、ドイツ、オランダ、イギリス、イスラエル、南アフリカ、アメリカ、台湾、香港など、最近ではやはり中国がすごい勢いで伸びています。“Japanese Beauty”“the living jewelry”と呼ばれ、ニッチなマーケットながらも世界じゅうで愛されています。

 錦鯉も血統が重視され、日本の名だたる生産者たちの看板がブランドそのものになります。海外のディーラーや愛好家の方々は、日本の“素晴らしい”鯉を仕入にしばしば来日されます。東京は日本への玄関口としてほとんど素通りして全国各地の生産者を巡ります。「1日空いたから東京を案内してほしい」と言われることもあり、その度に必ず言われる言葉は「Nishikigoiは日本の宝だよ。この美しい財産を大切にして守っていってほしい」というものです。そんなときは『日本伝統の美』を守っていくことに少しでも貢献できたらなぁ、なんて思ってみたりも。

 余談ですが、錦鯉業界は超!男社会。女性はまったくと言っていいほどいません。男性も年齢層高め。そんな業界にまだ社会人数年目の女である私がいるだけで目立ってしまって動きずらいことも多々あります。イベントの取材に行っても「ここに若い女が来るはずがない。アンタ何しに来たの?どっかのマスコミの人?」と聞かれることもしばしば。

 こうやって改めて書いてみると、私の仕事ってぜんぜん出版社の仕事っぽくないなぁ・・・なーんて思いながらも、ディープな鯉ワールドをけっこう楽しんでます。「会社名と書籍のイメージが全然違う」とのご指摘もよく受けるのですが、その話題はまた追々。というわけで、右も左もわからぬうちに歩き出してしまっている若輩者の私ですが、みなさま今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


▲ページの上端へ