アテネと感動

2004-8-25 水曜日

吉備人出版 金澤健吾 :http://www.kibito.co.jp/

アテネオリンピックで日本人選手が活躍している。メダル獲得数も過去最多となりそうということだ。テレビや新聞で報じられる選手たちの姿に、思わず応援もするし感動もしてしまう。何度も繰り返される報道で、上位入賞して注目される選手の過去や周辺の裏話を知ると、勝利の瞬間の映像とともに目頭が熱くなりさえする。我々がそうした非日常の感動を求めているかのようにでもあるし、マスコミも意図して多くの紙面や時間を費やして報道している。それはそれで良いのだが、一方で原発の点検漏れ事故や、沖縄の大学への米軍ヘリ墜落など、大問題があまりにも小さく扱かわれていることに危惧を感じずにはいられない。

さて、岡山には「後楽園」という約300年前に造られた大名庭園がある。国指定の特別名勝で、金沢の兼六園、水戸の偕楽園と共に日本三名園の一つに数えられる。4年前に、小社から『岡山後楽園の四季』という写真集を発刊した。今でも少しずつではあるがコンスタントに売れている作品だ。
この写真集に掲載している写真を、撮影者の難波由城雄氏が横幅約2メートルに拡大した大きなパネルを約20点作成し、これまで岡山県内をはじめ、京都や名古屋、東京など小さな会場で写真展を開いてきた。そして、今年の初夏、海を越えてオランダのチルズブルクという町の市立図書館の一室で開催された。こうしたどの写真展も、写真集を見て感動した人たちのお世話で開催されてきた。

オランダの写真展も、1年ほど前に、後楽園の側にある土産物店でこの写真集を見たオランダ人が「ぜひ自国で後楽園の写真展」を、ということで開催になった。 20点の大型パネル写真を展示した会場には多くのオランダの人が来場し、日本から持って行った写真集も完売した。「日本の庭園美を初めて見て、感動されていました。涙を浮かべながら見ている人もいて、日本人と感性が違うのかもしれない」と、会場に行った難波氏が話してくれた。

日本固有の文化を紹介したもので、日本語の文字のない写真集ということで、海外に出ていったこの写真集。掲載している写真の作品力が国を越えて人を動かし、写真展の開催という形で広がっている。難波氏は、「あの写真を撮ったとのは、何かに動かされて撮らされていたのだと思う。今、撮れと言われても、もう撮れないよ」と言う。スポーツも文化も一途に頑張る人を誰もが応援し、感動が人を動かすのだと思う夏であった。

『岡山後楽園の四季』書籍の紹介

『岡山後楽園の四季』のWebサイト


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方法論への渇望。

2004-8-18 水曜日

語研 高島利行 :http://www.goken-net.co.jp/

6月から7月にかけて数回、業界向けセミナーの講師を務めました。テーマは共通で『中小出版社のためのPOSデータ活用法』というものです。以前から取組んでいるテーマですが、自分でも講演用に考えを整理していく中で色々と見直しや再発見もあり、とても有意義な機会を与えられたと感謝しています。

長引く出版不況の中、「売上に直結する」であったり「返品率が下がる」といった惹句に対しての関心は高く、どのセミナーも大盛況でした。しかも皆さん非常に真剣であり「データなんか見てたってしょうがない」ではなく「データを読むための前提と実際の行動(販促など)をどう実現していくか」について幾つか問題提起を行なえたのではないかと感じております。

実際、書店店頭の実売データ(POSデータ)については過去の取組みからは想像もできないぐらい大量で良質のデータが安価に、そして使いやすい形で入手可能になりました。POSデータは、書店の現状や商品の内容についてきちんとした理解があり、かつ販促や営業の方法論についてより広範な理解を持った人間が読んだ方がより効果的に活用できるようです。つまり、POSデータ云々、以前の課題がしっかりと存在しているという意味です。それを理解してPOSデータと向き合わないと、それこそ「宝の持ち腐れ」になるかもしれません。

さて、その場では偉そうに話していた私ですが、実際には私自身も「魔法の杖」を持っているわけでもなんでもなく、データの解析にしても活用にしても、我流で手探りで行なっているのが実態です。
臆面もなくセミナーの講師などを努めているのも「本当に自分のやり方で良いのか」「もっと良いやり方を知っている人がいたら是非教えて欲しい」という気持ちがあるからです。

個人的な感想ですが、「置けば売れる」ような時代の大量配本の方法論ではなく、それ以前の、より地域に密着した形で地道に売っていく方法論に可能性を感じています。新刊よりも既刊、ベストセラーよりロングセラー。言葉にすると簡単ですが、そのための方法論は失われて久しいように感じています。

例えば、毎年同じように売れていたはずの辞書や学参、親子の世代で読み継がれる絵本・児童書、近所の子供の成長と共に変化していった学年誌、そうした町の本屋の基本となる売上を支えていたはずの商品群の販売のための方法論が気になっています。

残念ながら上記のような方法論について、特に中小の出版社では、先達に教えてもらう、という機会が少ないのも事実です。書店営業についても「とにかく回れ」「自分で考えろ」という話に(自分も含めて)なりがちですが、陳腐であっても「せっかく回るのであればお店のこういう点に着目しろ」であったり「こういう話題で引っ張れ」であったり、といった具体的な提言があったほうが良いのかもしれませんが……。

出版業界の悲哀というよりは中小企業の悲哀になってしまいますが、人をきちんと育てる、人にきちんと教える、というのは大きな課題だと考えています。自分もそういうことを要求される年齢になったのか、という気持は、実は「教えるほどの内容をきちんと受け継いでいるのか、きちんと自分のものにできているのか」という不安だったりもします。

私自身、知識や経験不足で恥ずかしい思いをすることは日常です。皆さんと一緒に勉強できるような機会は、自分が一番必要としているようです。今後もそういった機会があれば積極的に出ていき、大いに恥を掻きながら勉強していこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

追記■ポット出版のサイトでこんな記事も書いております。しばらく中断していましたが、近日中に再開の予定ですので、こちらもよろしければご覧下さい。
『出版営業の方法』

追記■上記の連載でも書いている「語学教材の音声配信」の件ですが、有料のダウンロード販売というのも始めています。興味がある方は弊社のホームページをご覧下さい。
『語研』


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残暑お見舞い申し上げます。

2004-8-11 水曜日

凱風社 新田準 :http://www.gaifu.co.jp/

 「酷暑」「豪雨」「販売不振」の夏ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日頃は心の奥底にオモリをつけて沈めていたことどもが、暑さに灼かれて煮立ち、沸騰してしまったようです。沸騰すればこぼれるのが自然の理。暑いときには熱いものが良いとも言います。暑気払いにはならないかもしれませんが、ご一読いただければ幸いです。

(1) 日本語
 日本語では、組織に「様」「さん」はつけない。出版社様(版元様)、書店様、取次様が飛び交う奇っ怪な業界だが、読者様とはなぜか言わない。この世界に入ってしばらくして、初めて「取次様」という言葉を聞いたときの衝撃は、今でも忘れない。とにかくたまげた。やめよーぜ、こういういいかげんな日本語を使うのは——って言いたいけど、ま、みんなおかしいってことに気付いてないようだから、今さら何を言っても屁の突っ張りにもならないだろう(もっとも、最近テレビで「UFJさん」て言ってるどこぞの大銀行の社長もいたナ)。

(2) 本の定価
 どうやら3年以内に消費税が上がることはまちがいない。その一方、スーパーなど小売店での価格表示は、すでに消費税込みの総額表示になっている(大蔵省の役人の高笑いが聞こえてきそうだ)。しかし書籍の価格表示は外税表記が、論理的かつ実用的だ。ここのところを読者のみなさんにはぜひ、理解していただきたい。
 本の価格は私たち出版社が決めて書店での販売価格を拘束している。この価格を「定価」で表記する。定価は本のカバーに刷りこんであるので、簡単には変えられない。しかし「定価2000円+税」という表記なら、消費税の変更には影響されない。また、消費税は言うまでもなく出版社が拘束できるものではないから、定価に含めるべきでない。財務省がなんと言おうと、これ以外に合理的かつ合法的な表記はない。
 むろん、こうした例外規定に守られている私たち出版社は、小売価格をできるだけ安く設定し、安易な値引きはしないという、倫理的・道徳的な義務を負っている。肝に銘じたい。
 とはいえ、一定の条件内で値引きをすることは、法的にはなんら問題ない。食えなけりゃどうしようもないじゃないか、食うためには道徳なんてくそ食らえだ ——って言うのも、ま、それなりの考え方ではある。でも、安いから買うってもんじゃないと思うけどなぁ、本の場合は。

(3) 常備と返品
 岩波書店が考え出した方法が、現在の出版界の規則になっていることがずいぶんある。そのうちの一つが「常備」だ。出版社が書店と契約を結んで書籍を書店に預ける。書店は原則として、1年後にその全数を出版社に戻す。書店は本を預かっているだけだから預かり分の代金を支払う必要はない(書店に並んでいる本は出版社の出先在庫であり出版社に所有権がある)。ただし、売れた本は必ず注文で補充する。釈迦に説法かもしれないが、このシステムは信義を守らなければ成立しない。書店は売れた本だけ金を払えばよく、出版社はとりあえず自社の本を書店店頭に並べることができる。互いにメリットがあるはずだ、ルールどおりなら。
 ところが書店によっては、意図的か不注意かは分からないが、常備書籍を注文返品で返すところがある。あろうことか、「常備って返品できないんですか?」という電話を受けたこともある。ルールどおりに返品をするなら文句はない。注文返品とは、出版社が書店から自分の書籍を定価で「買い戻す」ことだ。常備品を注文返品で返す(出版社に買い取らせる)って——万引きとどこが違うの?
 去年、常備を出荷するときちょっと細工をしておいた。1年常備で出荷した本がその年の常備返品にどのくらい混入するものか調べてみた。取次上位三社のうち二社の返品を全数チェックした。結果は、16%と19%。つまり、その年の常備出荷のうちの五分の一近くは「即返品」になっていた。

 信義だとか道徳だとか倫理だとかは、「イット」や「神の国」発言で有名な早大ラグビー部出身の元首相が口にしそうな言葉だが、他人に強いるのは問題外だが自分の問題としては真剣に考えてみる必要がありそうだ。


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酷暑を乗り切ろう!

2004-8-4 水曜日

海鳴社 辻 信行 :http://www.kaimeisha.com/

 私の友人は、朝4時ごろ起きて、近くの公園で「腕立て伏せ」を300回×2やり、「腹筋」も同様にやり、その後海辺へ行きトランペットを吹き、ローーラーブレードで汗を流してから出勤します。小型船舶1級の免許(20トンまで操船可)をとり、魚釣りにダイビングにと休日も忙しいが、仕事もバリバリやり、出世頭です。
 私もそんな彼の影響や某氏の薦めもあり、さらにお腹が出てきたのも気になり、4年半ほど前から朝、東京ドームのフィットネスクラブに通っています。マシンを相手に、自転車とランニングで40分遊び、その消費カロリーは約300キロカロリー。
さらに4,5種類の運動を40分ほどしてからシャワーを浴び、ひげをそって出社します。小型船舶1級の免許もとり、船を買うために宝くじも買ったのですが……。
 そんな私の影響を受けて、私の友人数名が運動をしだしました……というふうに、けっこう中高年はがんばっています。
 運動・睡眠・栄養のうち出版社員が不足気味なのは運動ではないでしょうか(返品整理ぐらいの運動ではだめですよ)。小さな出版社にとって、体力保持が、おそらく最後の砦でしょう。みなさん、適度の運動をして、酷暑を、さらには人生を乗り切りましょう!
 ちなみに、小生の体格は4年半前と比べて、少し筋肉質になりましたが、胴回りはあまり変りません。ビールをやめればいいのでしょうが……そんな人生つまらないし……。
PS:早朝の運動は、人によっては危険だそうですので、ご注意ください。


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