はじめまして

2003-7-30 水曜日

浅野太鼓文化研究所 小野美枝子 :http://www.asano.jp/top.html

 はじめまして。今年から版元ドットコムの仲間に入れていただいた石川県の財団法人浅野太鼓文化研究所たいころじい編集室と申します。会員の皆さまはそれぞれにそうそうたる出版社が名を連ね、地方の弱小編集室である当方は非常に頼りない存在ではありますが、和太鼓関連書籍の出版という少々毛色の変わった業務を行っておりますので、ここでは自己紹介を兼ねながら日常の編集室の様子をお伝えしようと思います。
 編集室が所属する財団法人浅野太鼓文化研究所は、慶長14年(1609)に石川県松任市に創業した和太鼓の製造・販売の老舗、株式会社浅野太鼓楽器店の研究機関として平成11年に設立されました。主な事業として、出版、和太鼓教室およびワークショップの主宰、全国の太鼓状況の調査など、和太鼓文化の振興・発展を目的にさまざまな活動を行っています。中でも出版は事業の柱であり、全国で唯一の太鼓専門誌「たいころじい」の年二回の発行を基幹に、和太鼓教則本、教師のための和太鼓指導書、練習曲のCD製作などを手がけてきました。
 皆さまもご存知のように、日本では昭和60年代の地域活性化・ふるさと創生ブームを契機に、全国に続々と和太鼓グループが誕生し、その数は今や1万 5000とも2万グループともいわれています。また昨年から施行された文部科学省の新学習指導要領により学校での邦楽の履修が義務づけられたことから、全国の多くの小・中・高校の授業やクラブ活動に和太鼓が取り入れられるようになりました。
 このように和太鼓関連書籍を専門に出版している当編集室としては環境は大変良好なのですが、編集スタッフの少数精鋭?主義に加え、母体である浅野太鼓楽器店が創業400年を誇る老舗として和太鼓の製造・販売にとどまらず、和太鼓コンサートや太鼓関連イベントの企画・プロデュースも行っているため、編集スタッフはことあるごとに動員され、編集室は一年を通じて戦場のような慌ただしさの渦中にあります。たとえ発行直前の切羽詰まった状況下にあろうとも、いざイベント開催となれば編集長は潔く赤ペンを放り投げ、ある時はイベントディレクター、またある時はブライダルコーディネーター、さらには展覧会のキュレーター、コンサートの司会進行、果ては運転手、食事調達係と、何が本業かわからない怪人百面相ばりの世界に身を置く次第となるわけです。
 とはいえ、編集作業とは何の関連もないと思われるこれらの変則的な仕事を通じ、デスクワークや通り一遍の取材では得られないリアルな情報や貴重な教訓と遭遇することも多々あります。出版にせよ、イベントにせよ、太鼓製造にせよ、大きなくくりでの「ものづくり」に流れている精神は共通しているようです。そうした生きた素材を上手に誌面に活用しながら、さらに品質向上を目ざして今日も奮闘している我が編集室です。諸先輩の皆さま、不束な新参者ですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

小野美枝子


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1人1人が大切にされるところから

2003-7-23 水曜日

やどかり出版 黒崎夢 :http://www.yadokarinosato.org/book/

近頃は,建前の裏側にある本音を,隠すことなく堂々と行える世の中になったのでしょうか.
政策や施策の理念と内容のギャップをそのままに,どんどんいろいろなことが押し進められていってしまっていると感じます.

同僚や一緒に仕事をする人たちには,精神病院での「社会的入院」を経験している人がたくさんいます.ほんとうは退院できる状態であるにも関わらず,社会的な諸事情により,ずっと精神病院に入院している状態です.いまだ40年近くを病院で過ごしている人も,全国各地にいます.
この「社会的入院」の問題には,さまざまな原因が絡んでいます.根底には,国の精神「障害」者に対するこれまでの施策や,それに沿って形作られた精神医療システムの問題があります.基本的に,「社会防衛」の視点から,精神「障害」者という存在が政策上扱われてきたことが,今の状態を生み出しています.

新障害者プランで精神障害者保健福祉施策の推進が重点課題として挙げられ,「今後の精神保健福祉施策について,入院医療主体から,地域保健・医療・福祉を中心としたあり方への転換を図る」とあります.
おおよそ34万人の精神科への入院者のうち,社会的入院者は少なくとも3分の1を占めると言われています.施策の中では,10年かけて7万2千人の「社会的入院」者を退院させ,地域生活へ移行させると謳っています.しかし,「社会的入院」者は,数十年も,自分の思い通りにならない生活を送らざるをえなかった人たちです.さらに10年待てというのでしょうか.
何十年も「社会的入院」をしてきている人は,とうぜん高齢になっています.60代後半,それ以上の年齢の人も多いはずです.身体が動くうちに退院したいと思うのは,とうぜんのことでしょうが,10年という期間はそれを考慮しているのでしょうか.もっと言えば,7万2千人の人たちが,生きているうちに退院できる期間なのでしょうか.
また,「社会的入院」が今なお解消できない理由の1つには,地域での支えがひじょうに乏しいことがあります.地域生活を支えるような拠点は,他障害と比べても,特に少ないのです.今年度,そのための施設整備費は大幅にカットされて,わずか14.8%しか新規の地域施設が認可されませんでした.その理由は「予算がない」ということでした.「入院医療主体から,地域保健・医療・福祉を中心としたあり方への転換を図る」という施策の基本と逆のことではないのでしょうか.

その一方で,池田小学校事件を契機として,いわゆる触法精神障害者の処遇法案「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が先日7月10日に衆議院本会議で可決,成立しました.何度も「保安処分」絡みの問題が指摘されて,話が出ては立ち消えてきた法律です.関係団体で賛成しているのは,日本精神病院協会のみでした.
犯罪の再犯防止のために,「再犯の恐れ」があれば,実質無期限に特別施設への強制入院や通院が課せられるのです.例えば,該当者も,再犯の判定方法も,判定基準もあいまい,そもそも精神障害者の犯罪だけを特別に扱う意味はあるのか,などというような,実にさまざまな問題を含んだまま押し通されてしまいました.
「刑務所には刑期があるけれど,精神病院にはないんだよ」という同僚の言葉が,改めて思い出されます.

「社会的入院解消のための退院促進支援事業の実施」のための予算は4,400万円.「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備及び必要な人材の養成」には,36億7,700万円という現実に,何のために国の政策というものは作られていくのか,考えざるを得ません.しかも,36億 7,700万円という予算は,法案の審議中にすでに立てられていたものです.

自分の現場に近いところからみる政策の不可思議さについて長々と書きましたが,全体の政策の中で起こっている矛盾の一部分に過ぎないでしょう.
こんな時,立ち戻るところは,やはり同僚たちの経験であり,それぞれ違う人間1人1人が,人間として大切にされることを起点にして物事を考えたり,行動したりしなければいけないという点です.それがなければ,どんな政策も施策も意味がないどころか,人の人生や命を奪ってしまうものになると感じています.

蛇足ですが,私の同僚たちの経験は『やどかりブックレット・障害者からのメッセージ』シリーズに収められています.どうぞ参考になさってください.


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いさましい話

2003-7-16 水曜日

めこん 桑原晨 :http://www.mekong-publishing.com/

 アメリカが勝利宣言したあと、イラクでアメリカ兵がどんどん殺されている。「戦争は終わったはずなのに、どうして? ひょっとしてベトナムやソマリアの二の舞?」と、アメリカではだんだん暗ーくなっているという話だが、アラブに詳しい人に言わせれば、どうしてもへちまもない、あたりまえじゃないか、ということになる。イラクでもまわりのアラブ諸国でも、戦争が終わったなんて考えている人はひとりもいない。(アメリカが一安心した)これからだ、と思っているというのである。そうだろうな、と思う。敵が圧倒的戦力でやってくれば、逃げて死んだふりをするというのは、別にアラブの専売特許ではない。

 そいでもってブッシュは「イラクの残存勢力」に対して「かかってこい」と言ったとか。英語だと「カモン!」て言うのかな。最新鋭のクソ頑丈な戦車の中で防弾ガラスごしに、外のアラブの女こどもに向かって、人差し指をヒコヒコさせて「ヘイ、カモン」とやっているGパンのおっさんの「図」がすぐ目に浮かぶね。
なにしろブッシュはいさましいからな。いさましくて、言っていることがわかりやすい。「アメリカは世界で一番いい国だ。だから、アメリカのやりかたをまねれば、どこの国も幸せになれる。アメリカのやりかたをまねしない国も人も悪だ。悪は滅ぼさねばならない。だから殺す。」
これに尻尾をふってワンワン言っているのが小泉だ。
「日本は軍備を持たない。だから自分の国を守れない。アメリカに守ってもらう約束だ。だからアメリカの言うことはなんでも聞かなくてはいけない」
 わかりやすいねー。だけど民主党の若手の言うことも分かりやすいよ。
「なんで日本がアメリカの言いなりになる必要があるんだ。自分で守ればいいじゃないか。憲法? 変えればいいじゃないか。自分のことは自分でやるんだ」
 マッチョだねえ。すっきりするねえ。
「どこの国も汗を流しているんだ。日本も汗を流さなくちゃ」これは小沢か。汗を流すというのは死ぬということなんだよ。
 どれもわかりやすい。でもね、わかりやすいとか、いさましいとか、マッチョとかいうのは警戒したほうがいいと思うよ(なんか吉田司みたいになってきた)。

 彼らに共通しているのは、人の命に対する気持ちの薄さだ。使命も誇りも、そりゃ大事だろうよ。だけど、そのために人を殺していいのかよ。今、イラクで殺されているアメリカ兵はいったい何のために死んでいるのかと思う。かわいそうとしか言いようがない。もちろん、そのアメリカ兵に殺された、人数もはっきりしないイラク人の存在がある。こうした「死んでいった人たち」「これから死ぬであろう人たち」のことを彼らはどこまで考えているのだろうか。
 そんなことを思うと、守旧派の悪の権化みたいに言われている野中や後藤田が理屈ぬきに自衛隊の海外派遣に反対するのを見て、ほっとする。彼らのような戦争経験者がいなくなったら、日本はどうなるんだろう。
 確かに、自衛隊という「軍隊」を持ちながら戦わないというのは理屈に合わないし、ぐちゃぐちゃ言って、結局「身体をはらない」のはみっともない。かっこわるく映るかもしれない。でも、そういうみっともない、いさましくない道を選んだから、今の日本があるわけだろ。なら、それでいいじゃないか。いさましくて人を殺すのと、みっともなくて人を殺さないのと、どっちがいい?
石原慎太郎の初期の作品に「処刑の部屋」ってのがある。不良大学生のケンカの話だが、その中で登場人物の1人がこう言う。
「俺はM大の奴等はきらいだ。奴等は何であんなに矢鱈切ったり突いたりするんだ。相手が死ねばそれ切りじゃないか。奴等は他人の体で遊んでるんだ。電気のスパークみたいでパッパッと、それ切り何も考えちゃいねえ。奴等は手前が何をやっているのか、何をしたいのかそれを知らないでやっているんだ、子供だな、いや気違いだ、俺は奴等を見ていると怖いんじゃなく、唯ぞっとする。」
あの慎太郎でさえ、これだ(あんまり関係ないか)。

とにかく、いさましくわかりやすい話には乗らないようにしようと思う。ヒットラーだって毛沢東だってポルポトだって、言ってることはいさましく、わかりやすかったんだぜ。


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元気な純国産製品

2003-7-2 水曜日

ネクサスインターコム 村松健吉 :http://www.nexus-i.com/

相変わらず元気のない日本であるが、日本製で世界的に大きな支持を得ているものがIT産業にもある。DVDとユビキタス(情報家電)である。この2つはコンピュータと家電という異なる分野を結びつけ、新しい市場を創出している。

DVD の規格は日本で作られ、英訳されてアメリカに渡り、ハリウッドで高い評価を得て、国際的な規格となった。ほとんどのDVDハードウェアは日本メーカーがイニシアティブをとり、出荷台数はテレビやファックスを上回る速度で急増している。ユビキタスという言葉自体は、ゼロックス・パロアルト研究所のマーク・ワイザー博士が1991年に提唱した概念であるが、ユビキタスのルーツは、それよりも前に開発されたトロン(坂村教授が開発したOS)にある。

今年初め、ワーナー・ホーム・ビデオのアジア総代表の長谷さんにお会いする機会を得た。長谷さんは東芝のDVD事業部長としてDVDを育て上げた功労者である。DVDという新しい技術がユーザーに受け入れられるかどうかという不安に苛まれながらも、新しい技術にチャレンジしていくことに興奮した過去10年を私に熱く語ってくれた。NHKの『プロジェクトX』のような話しである。

『プロジェクトX』といえば、坂村教授を取り上げた番組が4月15日に放映された(私の友人も映っていた)。トロンはMS-DOSが産声を上げた頃に開発された純国産OSであるが、政治的な理由でバッシングを受けた。パーソナル・コンピュータでは、Microsoft、Unix、Appleが主要なOSとして使用されトロンのユーザーは少ないが、多くのロボットや家電製品にはトロンが採用されている。キヨスクや情報端末の撤去が進む中、トロンとJavaを融合したOSで動く携帯電話の躍進は凄まじい。

利便性と引き換えに我々は個人情報保護という困難な問題に直面している。デジカメ携帯や監視カメラで顔写真を撮影し、犯罪者リストと照合(バイオメトリクス認証)したり、その人の過去を検索することが可能な時代が到来している。ジョージ・オーウェルが警鐘を鳴らした近未来に我々は既に足を踏み入れてしまったようだ。プライバシーは守られなければならないが、個人情報保護を間違った方向で法制化しようとする国があるのも困ったものである。


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