装飾アルファベット

2002-5-29 水曜日

ブリュッケ 橋本愛樹 :http://

 十数年、キーボードをたたき続けてきたけれど、ブラインドタッチができない……。
左手はタバコのためにあるとうそぶいて、右手だけで文字を打ってきたからだが(当然この文章も)、さして不自由も覚えず、DTPで著者の赤字を転キー(変な造語)する際などは、左手でゲラを押さえつつ、まるで活版時代の赤字照合のように、右手で訂正を入力していく。しかも、これがけっこう早い、と自負していたのだ。が最近、強硬な申し出によって、室内禁煙になってしまった。タバコが吸えなくて、左手のイライラは高まるばかり、キーボードを離れて外に喫煙に行くなど、仕事の効率もすこぶる悪くなってしまった。愚痴は措いて、こうして日々、仕事のうえでも、またメールでも、モニター上の文字につきあっているわけだが、何か味気ないとはよくいわれる。

 ところで近頃、「装飾アルファベット」なるものが気になっている。ご存じの方もいらっしゃると思うが、簡単にいうと、15世紀の中頃、ヨーロッパのあの画期的な印刷術の発明前夜に登場した、銅版で作られたアルファベット23文字(この頃J、U、Wはまだない)なのだが、個々のアルファベットを構成する「線(というか文字軸)」に、自然界のモチーフや想像上のモチーフが用いられている。日本でいうと、平安朝の「葦手」をもっと複雑にしたものといえるかもしれない。(写真を添付すれば、一目瞭然なのだが、残念ながらウィンドウズ対応ではないもので……すみません)。
 文字という抽象物が、具象的なイメージでできあがっているというしろものなのだが、これがおもしろいというか興味がつきない。個々のモチーフ(聖人、道化、騎士、動物、植物)が、なぜこんな形で組み合わされて、このある一文字を作っているのだろうか? そもそも、この人物はいったい何者なんだ? この動物は? 小さな文字に隠された小さな謎が、やがてヨーロッパ中世の基層文化への興味の扉を開いてゆきもする。
 でも、なによりも、文字自体が視覚的に楽しいし、見ていて飽きないのだ。それにくらべると、このモニター上の文字はなんとも……と、また愚痴っぽくなってしまった。
 いずれこんなテーマで、『装釘考』(西野嘉章著、玄風舎)のようなマニアックな本を作ってみたいと思っている。そういえば、この本は、旧字使いの活版本だったな……。


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本の底力

2002-5-22 水曜日

亜璃西社 井上哲 :http://www.alicesha.co.jp/

 アルバイトで潜り込み、社員になってから9年の月日が流れた。編集者兼カメラマン兼デザイナー兼ライター兼営業マン兼社内雑用係と、零細出版社ならではの悲しきマルチぶりを発揮しつつ、なんとか本作りの世界にしがみついている。
 社長を除き、出版部2人、編集プロダクション部3人のわが社は、出版の資金繰りを編プロが支える自転車操業で、今年創立15年目を迎えた。主力は北海道をテーマにした植物図鑑とガイドブック。特にガイドブックは、的確な企画のものをしっかり作れば確実に売れるだけに、今も大事な稼ぎ頭である(「2002 北海道キャンプ場ガイド」発売中!)。

 でも、最近ではリクルート北海道や角川書店北海道といった大手出版社や地元タウン誌が、ムックスタイルで毎年新しいガイドブックを出してくる。おまけに、雑誌で蓄積した情報と写真を使い、価格も低く抑えられているから、従来の数年かけて売り切る単行本スタイルで対抗するのはなかなか難しい。
 わが社のガイドブックに関しては、企画力と内容の信頼性で今のところ成果は上がっている。しかし出版部では、今後は低価格・大量販売が求められるガイドに頼らない、零細出版社ならではのオリジナリティある企画に力を入れていきたいと考えている。

 そうした試みのひとつとして、今年の2月、「和子 アルツハイマー病の妻と生きる」(ISBN978-4-900541-42-9)というノンフィクションを刊行した。元高校教師の著者・後藤治さんは、若年性アルツハイマー病に冒された妻・和子さんを、手探りのケアで約10年にわたって介護してきた。この本は、発症から現在にいたるまでの苦難と喜びの日々を、著者自らがつづったものだ。
 各種施設を利用しながら、著者は無私の心で和子さんの気持ちを汲んだ独自のケアを続けてきた。そうした“渾身のケア”によって、今も和子さんと一緒に散歩を楽しんだり音楽を聞いたりする、穏やかな毎日を送っている。これは、発症から10年もすれば完全に寝たきり、といわれてきた従来の医学の常識を覆すものだ。著者のように献身的な介護は、誰でもできることではない。でも、アルツハイマー病という枠を越えて、読むものに「夫婦ってなんだろう?」と問いかける広がりを持つ本だと思う。

 刊行後、新聞・テレビなど地元マスコミに大きく取り上げてもらい、4月に入ってからは朝日新聞書評欄など中央のマスコミにも取り上げられ、今も連日全国各地から客注が入ってくる。さらに、在京の某テレビ局から取材のアプローチがあるなど、北海道限定のガイドブックでは考えられない反響の大きさに驚いている。同時に、本というメディアの持つ底力を、改めて思い知らされた気がする。

 今年は、年内にあと2冊の新刊を出す予定だ。作り手の思惑を超えるような、大きな広がりを持つ本を出せればいいなあと思っている。


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オンライン書店の行方は?

2002-5-15 水曜日

編書房 國岡克知子 :http://www.amushobo.com/

<オンライン書店の行方は?>
文庫新書担当の外部エディターとして昨年3月から出稼ぎに行っていたオンライン書店のbk1から今年3月に契約打ち切りをいわれた。早い話がリストラされたわけだ(笑)。外部エディターほとんど全員と社員もかなりの削減・・・。出稼ぎで編書房もずいぶん助かったが、「本業にあまり力をいれないで、bk1や編プロ仕事ばかりやっているから編書房はもうやめるのかと思った」とある著者にいわれてびっくり仰天。そんなふうに見えていたのかと反省。今年は企画出版に力をいれようと思う。

 ところで、bk1に限らずオンライン書店はどこも大変に苦戦を強いられている。
私はけっこうオンライン書店で買うほうだが東京に住んでいれば大書店は近所に何軒もある。新刊はリアル書店で買うが、ロングセラーや書店ではちょっと探せない特殊な本、刊行年の古くなったものは絶対にオンライン書店が便利だ。
bk1はデ−タベースが素晴らしいのでたいていのものはここで探せる(bk1のデータベースは図書館流通センター<TRC>がつくっているのできちんとしているが、これを残念ながら使いこなしている人は少ない。使いこなすにはコツがあるのだが、そのコツをbk1側では詳しく説明していないのである)。
bk1だけでなくちょっと浮気してアマゾンでも洋書やCDはもちろんのこと書籍も利用している。bk1にはない素晴らしさがあるから。送料も1500円以上は無料だしカスタマーレビューが充実しているので参考になる。しかし日本ではアマゾンもそれほどうまくいっているわけではないらしい。まだまだネット書店としての市場が成熟していないのかもしれない。それにどうしても、「ネット書店側に買った商品が調査されて把握されているのでは?」という思いがあって、ネット書店で買物はしない、という人も多い。本というのはある意味でその人の頭の中味まで覗いてしまう部分がある。やはり本は普通の商品とは違うのかもしれない。それに日本はアメリカのように広大でもないから、書店はどこにでもある。
現在の日本でネットにもっとも適した書籍は「マンガ」と「エロ本(ボーイズラブを含む)」と「24時間でお届けできる新刊本」と「リアル書店では探せない本」くらいなのかもしれない。でも、もうそろそろどうすれば商売としてきちんと成立していくのか、金太郎飴型オンライン書店ではない、特化したオンライン書店が出現してもよいと思う。オンライン書店における”絶対に確実に儲かる仕組み”はまだ誰も提案していない。


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福祉と地域とワタクシと……

2002-5-8 水曜日

深澤孝之 :http://

 先日、多摩市へとはじめて行った。新宿で小田急線に乗って新百合ヶ丘で乗り換え。こんどは多摩線に乗って小田急永山という駅で降りる。こういってはナンだが、ずいぶんと田舎に来てしまったカンジだ。ホームのわきに生えていた草が、風に気持ちよさそうにゆれていた。この日は、駅からすぐ近くの市の施設で、多摩市の「バリアフリー福祉マップ」の完成報告会があった。わたしはそれに参加したのだ。

 会場には、もうすでにたくさんの人が集まっていた。小さな体育館のような会場に50名ほど。予想していたよりずっと多かった。年齢的には、若い人から年輩の方までさまざま。車いすに乗った人のほかに、視覚障害や聴覚障害をもった人たちも来ていた。わたしの目的は、この報告会にパネリストとしてよばれたウチの著者と会うことだったが、じっさい参加してみると、マップ作成の経緯を聞くのが面白かった。
 というのも、以前わたしたちもバリアフリーマップをつくろうと試みたことがあったからである。わたしたちというのは、いま住んでいる中野区のボランティアグループのことだ。けっきょくその企ては、かけ声だけで終わってしまったが、実現していたらと思うとちょっと口惜しい。われわれの夢のような企てに対し、今回の多摩市の場合は、市民グループが中心となって、市の委託事業として行なわれたと聞いている。したがって、予算も出たしスケジュールも決められていた。けれども実際には、炎天下に車いすでの実地調査からはじまって、慣れないパソコンによる版下作成まで、すべてが市民の手によってなされたのである。この意味は非常に大きい。

 では、「バリアフリー福祉マップ」とはいったい何なのか? という人のために、簡単にマップの解説をしよう。
 冊子の「はじめに」には、こう記されている。「今回のバリアフリー福祉マップでは、障がい者や高齢者が、自宅から目指すお店や施設に向かう経路上にあるバリアポイントと、目的地の入口の状況や、トイレ・エレベーターなどの様子を図や写真を使って示しました。」じっさいには、バリアのとらえ方にもさまざまあるが、大きく段差型バリア・勾配型バリア・サイン型バリアの三種に分類して表示。さらにエリアも、多摩市を通る鉄道の駅を中心とした三つの界わいに分けて、それぞれ詳細な情報を載せている。これは、ハッキリいって眺めているだけでも十分楽しめる内容だ。加えて巻末には、車いすで行ける医療機関マップ・公共機関マップ・障がい者優先トイレマップを掲載、いざという時すぐ使える仕組みになっているのもウレシイ。
 じつは「福祉マップ」はこれだけにとどまらない。まちの姿は刻一刻と変わっていく。これらの情報を着実に更新していくために、そして、情報を詰め込みすぎて逆に重くなって扱いにくくなってしまった印刷物の呪縛から逃れるため、この「福祉マップ」を近々ウェブ上でも公開する計画があるというのだ。そうなれば、自分が見たい箇所だけをプリントアウトする、という使い方もまた可能になる。これも編集委員の人たちが、苦労しながら自らの手でデジタルデータを蓄積してきたからこそ出来ることだ。正直スゴイと思う。

 ところで、福祉と地域はよく一体であるといわれる。わたし自身、学生時代にボランティア活動をしようとした時に、いま住んでいるまちでやりなさいと勧められた。確かにそれ以降、中野区に対して多少の愛着がわいたような気もする。といっても、区という目に見えないナニモノかではなく、何らかのカタチで自分と関わったここに住む人たちに対してではあるが……。しかしながら就職以降、この中野の家には寝に帰っているような有り様で、例のボランティアグループにもついぞ顔を見せなくなったしまった。中央線は、夜1時まで走っているので安心して外で飲むことができ、ますます家に帰ってくるのが遅くなる始末だ。こうなってくると、せっかくの休日に、朝っぱらから勢いよく精米器を回す向かいの米屋に対してもウラミをいだくようになり、とても地域社会にとけ込もうなどという殊勝な考えは浮かばない……。
要するに——と、わたしは帰りの電車を待つ駅のホームで考えた。要するに、今日わたしはこの報告会に参加して、マップを作成した彼等の熱意と実行力に圧倒され、また深く感動しながらも、心のどこかで彼等をウラヤマシイと感じずにはいられなかった。というのも、福祉と地域が一体であるように、彼等もまた多摩と一体であるように、わたしの目には映ったからだ。彼等の“多摩で生きる”という決意は、むしろ潔かった。それに較べ、わたしはいずれ引越してしまうだろうし、そのことは自由なようでいて、じつははなはだ心許ない感情を伴うものである。しかし、いまの自分には、地域との結びつきより仕事に精をだす時期なのかも知れない。それに仕事を通して、今日出会ったような人たちと同じ熱気を共有できる想像力を持てることは、やはりシアワセなのかも知れないなァと思いなおした。

 それにしても、いつか著者に「福祉と地域」というテーマで書いてくれと依頼する時のため、わたしは、いまのうちに向かいの米屋とヨリを戻しておいたほうがよさそうだ。でないと、どうしてもヤマシイ気がしてしまう。


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版元ドットコム繁盛記

2002-5-1 水曜日

径書房 大庭雄策 :http://www.komichi.co.jp/

月曜の朝、予期せぬことがおきた。
始業前にも関わらず、電話機が3回線ともぜんぶ鳴っている。
メールを開くと、版元ドットコム経由で、お客さまからの注文が殺到している
(といっても、この時点ではまだ15件くらい)。
書店さんから送られてきたFAXが、ゴミの山みたいにうずたかく積みあがっている。

その前の週の土曜日(4月13日)に、日本テレビの「激闘カリスマ先生5人 ダメな子育てを叩き直せるのか!? スペシャル」という特別番組で紹介された『ベビーサイン』(径書房刊)が、激烈ともいえる反響を呼んでいたのだ。

「ベビーサイン」という言葉は、日本では、たぶん、初めて使われる言葉だ。本の詳しい内容は「版元ドットコム」のサイトで検索していただきたいが、ひとことで言うと、親が、赤ちゃんのサイン(=しぐさ、くせ)をあるメッセージとして意識的に受けとれば、まだ話せない赤ちゃんと会話をすることができて、子育てにも良い効果をもたらす、というような本だ。

子育て本がハヤる今の時代、いい加減なものも多いだろうが、これはじっくりと丁寧につくった本で、赤ちゃんを前にして悩むお母さん方にはかならず役にたつ本だと自負している。

とはいえ、今回これほどの反響があるとは、もちろん思いもしなかった。テレビの影響力というのを、実感した(ちなみにそのテレビ番組の視聴率は17%。これは特別番組としては高視聴率だったようだ)。

もうひとつ実感したのが、いわゆる口コミの大きな力だ。
今回、インターネットの掲示板で、『ベビーサイン』を買うには「版元ドットコム」が便利(送料無料!)だという情報を見た多くのお母さん方が、実際に本を買ってくださった。

さて、仕事にイレギュラーはつきものかもしれないが、一冊の本がこれほどのご好評をいただくことは、自分にとっては一生に一度あるかないかのことかもしれない。10日間で4回も重刷するなんてことは、もう二度とないと考えたほうがいいだろう。

テレビ放映のあった二日後の月曜日、それまでの在庫はその一日ですべて無くなった。
いそいで重刷することになった。業者さんが至急で対応してくださり、重刷分は約一週間後に取次(問屋)さんに搬入されることになった。しかし、落ち着く間もなく、まだ出来ていないその重刷分が保留(予約)でいっぱいになってしまった。
そして、それと同じことを3度くり返した。刷っても刷っても、在庫がない。

書店さんからの怒濤のような電話注文は一週間つづいた。
3回線ある電話は朝10時から夕方6時くらいまで、まったく鳴りやまない。
電話応対のために、声がかれてしまった。

私「あの、もう在庫なくなってしまったので、重刷ができるまでお待ちいただけますか?」
書店さん「すごく売れてるよ、これ。倉庫に50冊くらい残ってるんじゃないの?宅急便で送ってよ」
私「いや、本当に全然ないんです。すみません……」
書店さん「10冊でいいからさぁ、送ってよ」
私「ほんとうに、ないんです!」

テレビを見た、というお母さんから直接お電話をいただいたこともけっこうあった。これには対処しきれず、「版元ドットコムで買ってください」などとたいへん失礼な対応をしてしまったこともあった。お詫びしなくてはならない。

版元ドットコムでは、4月15日から30日までで、計299冊の売上げ。
これは、小さな我が社にとって、かなりデカイ数字だ。
ありがたいことである。

4月後半はあっという間に過ぎた。
その間、版元ドットコム事務局の日高さんと岡田さんにおかけしたご苦労はひととおりのものではない。おふたりはご自身の抱える日々の仕事をストップしてまで、処務に専心してくださった。記して、感謝したい。
ありがとうございました。こんどゆっくり飲みましょう。

時間が経過していれば、ちゃんと事後報告もできただろうが、未だ熱はさめないような状況で、しどろもどろの報告になってしまった。
落ち着いたら、またどこかで。

(現在、社員4人のうち、ひとりは痛風になり、歩行困難。
ひとりは四十肩になり、腕が上がらない。残りの若い二人は、まあ元気です。)

最後に、本を買ってくれたお客さま、どうもありがとうございました。
実際に『ベビーサイン』を試された読者の方のご感想をお待ちしています。


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ロゼッタストーンに取材ラッシュ!?

2002-4-24 水曜日

ロゼッタストーン 弘中百合子 :http://www.rosetta.jp/

昨年11月に創刊した、女性国会議員メールマガジン「ヴィーナスはぁと」がきっかけで、マスコミに露出する機会が急に増えた。まず、創刊当初、一部の新聞やインターネットのニュース系サイトなどに次々に「ヴィーナスはぁと」が取り上げられた。12月に入ると、読売新聞が全国版の「人」欄で私を紹介。さらに今年になって、東京新聞・中日新聞が「永田町のヴィーナス議員たち」という「ヴィーナスはぁと」に登場する女性議員を紹介する企画を組んでくれ、番外編として私まで紹介してくれた。そのほか、インターネットでも、日経の女性向けサイト「smart woman」、BIGLOBEの仕事サイト「輝く女性たち」でインタビューを受け、テレビでは私の地元の山口放送が報道番組のなかでロゼッタストーンについて放映。今日の午前中は「週刊女性」の取材を受けたところ。……
こうして見ると、なんだか破竹の勢いみたいでしょ?

ところが、現実はそう甘くない。もちろん取り上げてもらえるのは、ありがたいことだけど、マスコミに出れば雑誌の売り上げも大幅に増えるかと思いきや、あまり大きな影響はないのである。むしろ収穫は別のところにあった。

新聞、雑誌、インターネット関係…と、いろんな分野の記者やライター、カメラマンが、狭いロゼッタストーンの事務所にやってきて、1時間くらい取材して写真を撮って帰っていく。取材内容は主に「ロゼッタストーン」や「ヴィーナスはぁと」を立ち上げたきっかけだ。これまで取材するばかりだった私が、逆の立場に立つことで、取材される心理がよくわかった。

とにかく、スタッフのやる気やレベルが恐ろしいほどわかるのだ。私たちマスコミは相手を取材したつもりでいるが、取材をしょっちゅう受けている有名人のほうが、よっぽどこちらの人物像を見抜いているに違いない。いくつか準備不足ででかけてしまった取材を思い出すと、まったく冷や汗が出る思いだ。

それでも、有名人の多くは、そんなことは顔にも出さず、愛想よく取材に答え、媒体に応じていろんな話題を提供してくれる。これは、やはり才能だと思う。私のような底が浅い人間は、すぐにネタ切れしてしまうのに。

私は電車のなかで起きた出来事を思い出した。目の前に座っていた若い男性が「よかったらどうぞ」と席を譲ってくれたのだ。マタニティ風のゆったりしたワンピースを着て、つり革にすがっていた私を、どうやら彼は妊婦と勘違いしたらしい。(確かに前より太ったんだけど)

(せっかく勇気を出して言ってくれたのに、ここで断ったら、彼は二度と他人に席を譲らなくなるかも…)と思った私は、妊婦になりすまし、お礼を言って席に座った。さらに、電車を降りるときに「本当にありがとうございました」と、丁重にあいさつまでした。

お年寄りに席を譲って「よいことをした」と満足している若い人の裏には、「やれやれ、嬉しそうな顔をするのも気を遣うわい」と思っているお年寄りがたくさんいるのかもしれない。譲られる立場になってみて、初めてそんなふうに思った。本当にその立場にならない限り、なかなか本音というのは、わからないものである。

ロゼッタストーンは、コミュニケーションを大きなテーマにしている。季刊ロゼッタストーンもメルマガ「ヴィーナスはぁと」も、立場が違う人に同じテーマで意見を述べてもらうことが多い。違う角度から見れば、固定観念が消え、頭がちょっと柔らかくなる。頭が柔らかくなれば、相手を認める余裕が出てくる。
「これが絶対正しい」世の中よりも、「これはこれで正しい。これもこれで正しい」という世の中になっていけばいいなあ、と思うのだ。

※ 興味がある人は、ぜひ、一度読んでみてください。ロゼッタストーンのホームページ(アクセス数10万件達成!)で、雑誌やメルマガの内容を紹介しています。http://www.rosetta.jp 4月9日に発売されたロゼッタストーン第9号では、「医療改革」を特集。読みごたえがありますよ!


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精神障害当事者の体験を通して

2002-4-17 水曜日

やどかり出版 黒崎夢 :http://www.yadokarinosato.org/book/

 やどかり出版は,埼玉県の精神障害者福祉工場・やどかり情報館の出版部門です.他に,印刷,研究所があります.病気を持つ人間・持たない人間が,共に働き,その仕事のプロフェッショナルを目指して,各々邁進しております.

 専門家の書いた本は多数あれど,当事者の視点から書かれた本は少ない……精神障害当事者ならではの情報を発信していく基地にしていきたい,という思いで始まった私たちの小さな活動から生まれた本の紹介をします.

 「やどかりブックレット・障害者からのメッセージ」というシリーズを作り始めたのは,やどかり出版文化事業部の体験発表会がきっかけでした.体験発表会は 1997(平成9)年から,1年に数回のペースで現在までに20回行っており,これからも続けていきたい事業のひとつです.「障害を持ちつつ生きる」ということには意味があるとここで働く私たちは考えています.その体験を語ることで,障害のある・なしにかかわらず他者に何か提供できるものがあるはずだ,という思いで自分たちが働く建物を会場に行ってきました.
 体験発表会はその日,その時間かぎりの出来事にすぎません.しかし,より多くの人たちに自分たちが大事にしていることを伝えたい,特にいまだ精神病院に長期入院している人たちや,病気を抱えて孤立している人たち,また,地域で孤立して生きている人たちに絶望することはないんだということを伝えたい.そういった話し合いから,このブックレットシリーズが生まれました.

 2002(平成14)年4月現在,やどかりブックレットは7冊目を数えました.障害当事者自身の声を中心に内容をまとめる姿勢は変わっていませんが,体験談だけでなくテーマをしぼって意見を出すブックレットも作るようになりました.

 そして,7冊目は「地域で私たちが生きるために 心の病をかかえて」というタイトルで,練馬区共同作業所連絡会学習会実行委員会とやどかり出版との連携で作りました.前述の学習会実行委員会主催の講演会で,3か所の作業所の3名の当事者が語った体験と,講演会の実行委員の座談会をもとにして構成されています.講演会を皆の手で企画し運営する過程そのものにも,さまざまな学びがあり,日常,近くで活動しながらも行き来がしにくい作業同士の結びつきも深まりました.具体的には,喫茶の共同運営を行うようになったり,日常の活動での連携につながるようになりました.講演会発表者自身だけでなく,講演会に関わる人びとが元気づけられ,変わっていく様子がこのブックレットから少しでも伝わればいいと思っております。


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アメリカとイスラーム

2002-4-10 水曜日

めこん 桑原晨 :http://www.mekong-publishing.com/

 ここのところ気になっているのは、当然ですが、アメリカとイスラームのことです。

 アメリカについては、気になっているというより、「頭にくる」だな。アフガン空爆、フィリピンのバシラン島への軍事顧問団派遣、悪の枢軸発言、パキスタンへのゆさぶり、そして例のごとく、パレスチナへの積極的不介入。あいつらいったい何を考えているんだ。だいたい、9月11日に犠牲者にまず第一に謝るべきだったのはアメリカ政府だよ。対ソ戦略のためにムジャヒデンをあやつり、オサマ・ビン・ラーデンとアルカイーダをつくったのはアメリカじゃないか。目的はソ連の南下阻止だというが、それはつまりカスピ海沿岸の石油資源の権益独占だ。要するに、自分たちの利益のために、他国で他人をそそのかして、テロリストをそだてあげ、そのテロリストがアメリカ国民(ばかりではなく日本人もだ)を殺したんだから。「テロ撲滅」という「大義」が聞いてあきれるぜ。

しかし、考えてみれば、アメリカは何十年も世界中でこんなことばっかりやってきているんだ。ベトナムのことはいわずもがな。あいつらラオスとカンボジアでどれだけ爆弾を落としたと思う?ラオスの当時の人口は300万人、そこに爆弾300万トン。1人に1トンの爆弾がふりそそいだ勘定だ。カンボジアのベトナム国境に近いほうはもっとひどかった。でも、アメリカは一言も謝罪しない。もちろんベトナムに対してもだ。ニクソンはベトナム政府に戦後賠償の約束をしてたんだぜ。知らん振りはアメリカの得意技その1だよ。

アフガンの誤爆で民間人を殺傷したことをアメリカの軍はしぶしぶ認めた。そして、犠牲者に補償金を支払った。いくらだと思う? 1人1000ドルだと。10万円ちょっとだぜ。しかも、謝罪するつもりはないと軍は「明言」してるとのことだ。やつらにとって、アジアやアフリカ、アラブ、中南米の人間の命は「屁」みたいなものなんだ。いかにしてアメリカ兵が傷つかずにできるだけ多数の「敵」を効率的に殺すことができるか、そんなことに知恵を絞って、そのとおりにアジア人やアラブ人が死んでいったら、「やった、やった」って握手して喜んでいるんだぜ、やつらは。戦争なんてそんなもんだよ、なんてわかったようなことを言ってもらいたくないね。こんなこと許してはいけないんだ。

よくアメリカ人はいいけど、アメリカの社会はいいけど、アメリカの政府はまちがっているなんて言う奴がいる。そんなことあるもんか、アメリカ人がおかしいから、アメリカ社会がおかしいから、アメリカ政府がおかしいんじゃないか。9月11日のあと、あるテレビ局がアメリカの市民に「なぜアメリカはこんな目にあわなければいけないのか」と聞いていた。そしたら、お目目ぱっちりのかわいい女の子が「彼らは私たちの豊かさと自由に嫉妬しているのよ」なんて言っていやがるの。あきれると同時にぞっとしたね。根は深い。アメリカ人に「他人を理解し、受け入れる」という寛大さ、やさしさを期待するのは無理なんだ。本当にいやなやつらだ。しかし、いやなやつらだからといって否定するというわけにはいかない。そんなことしたら、こっちもアメリカになってしまう。だけど、ぼやぼやしてたら、日本もアメリカの策略に巻き込まれてしまう。やつらに仁義なんてないからなあ。

出版人としてできるのは、「忘れない」ということだろうと思う。日本人はすぐ忘れてしまうからな。アメリカの悪事をきっちりと暴き、執拗に批判していくことだろうな。しかし、みんな、びびって書こうとしないんだな。なさけない。

イスラームのことは長くなるから、やめよう。ただ、イスラームは割りを食っているのはたしかだ。つい最近までイスラームといえば「剣かコーランか」というイメージしかなかった。「十字軍」というのは正義だとばかり思っていた。そう学校で教わってきたんだから。「草刈り十字軍」なんてのがあるぐらいだからなあ。ムスリムという隣人とちゃんとつきあえるまでには時間がかかるだろう。でも、これも大事な仕事になると思います。


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それはないと思いますよ、平河工業社さん

2002-4-3 水曜日

第三書館 北川明 :http://www.hanmoto.com/bd/d3skan/1/

 4月1日あさ、小社に現れた平河工業社の那須さんは、今後小社の出版物の受注印刷を一切しない旨、通告した。まったく突然の一方的受注拒否である。事前の通告も問い合わせ等なにもない。3月に二点新刊を作って、二週間まえに配本したばかり。そればかりでなく、小社の既刊書のフィルムは数百点分すべて平河工業社に預けてある。版元として、メイン取引の印刷業者なのだ。当日依頼する予定だった重版二点(各3000部)の印刷も断ると言う。
「これは和田社長の意向による決定ですか」
「そうです」
 那須さんは個人的にはこの決定には反対ですが、と付け加えながら、はっきりそう言いきった。
 その理由は何か。
 那須さんは4日前に発売された週刊新潮の記事であるという。辞任した衆議院議員の辻元清美が選挙資金を小社の手形で借り入れて、「踏み倒した」とする記事である。
 この記事は辻元清美の信用失墜を目的とした「週刊新潮的記事」の典型といえる。この借金は私の古い友人から私が借り入れたもので、選挙資金ではなく出版社の運転資金である。借入額の半分以上を返済して、この二月に新たな保証人を入れて公正証書をつくり、今日現在返済計画を弁護士を入れて交渉中である。これまでも弁護士が中に入って返済してきた。「去年から連絡がとれない」とする記事の記述はまったくのデタラメ。これがどうして「踏み倒し」の特大見出しになるのか。
 加えて、これは27年前の私の不起訴事件と罰金二万円の事件を取り上げて辻元清美と日本赤軍とを関連付けようという牽強付会記事でもある。
 当然ながら私は週刊新潮相手に裁判するつもりである。
 そうした私のほうのこの記事に対する考えも事実関係も何も聞くことなく、平河工業社は一方的に取引停止を通告してきたのである。私がこの版元日誌もふくめて平河工業社の取引停止通告を公表するというと、那須さんはきゅうにあわてだして、
「それだけは…・」という。
 私は平河工業社の和田社長と同席しての発表なり記者会見のようなものを提案したが拒否された。
 この事件は小社一社のみに関わるものとは思わない。版元がその一部を担う言論出版の自由は版元の意向に沿った印刷が自由円滑に遂行されることと不可分である。悪意に満ちた週刊誌の一記事をもって直ちに調査も問い合わせもなく一方的全面的に印刷拒否、取引中止を宣言するメイン印刷会社とは何なのか。
 平河工業社と小社との支払関係は3月末現在通常どおりである。過去には支払期日の変更をお願いしたが通常に戻っている。それに、両社は数ヶ月前に業務契約を結んでいる。今回の通告はその契約のどの条項によるものかという問いに平河工業側は答えられないでいる。
 その契約書の小社側の保証人は辻元清美である。平河工業社の強い要望による指名があって、彼女が同意したものである。
 辻元清美が議員辞職して6日目、那須さんは取引停止を通告するために現れた。
「小出版社を応援します」
 そういい続けてきたはずの平河工業社の反論をぜひ聞きたいものだ。


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見つからない……

2002-3-27 水曜日

太郎次郎社エディタス 須田正晴 :http://www.tarojiro.co.jp/

 世の中、どんどん便利になっている。そのせいだろうか。自分がどんどんちょっとした不便にもイラだつようになってしまったような。

 平日の夜、帰宅したところでFAXが送られてきた。1枚目が出てきたところで止まる。インクリボン切れのようだ。送信相手にコールバックして、用件を確認する。
 これで用は済んだのに、FAX電話機は「メモリージュシン3マイ」と「インクリボン テンケン」の表示を明るく交互に点滅させている。でもインクリボンの買い置きはない。

 機械に急かされるのは嫌いだ。夕食を食べながら、電話機の説明書をイライラとめくる。しかし、「インクリボンを交換してください」という指示があるだけで、メモリー受信の内容をプリントせずに消去したり、FAX機能を殺したりする方法は見つからない。
 どうやらこのピカピカ表示は、インクリボンを買ってくるまで処置なしのようだ。

 住んでいる町のなかでは普通紙FAX用のインクリボンは売っていそうにない。職場の近くで買おうかともおもうが、きっと日中はそんな用事は忘れてしまうだろう。それで連日帰宅するたびに電話機を見て、自分のまぬけさに悲しくなる羽目に陥るのだ。
 機種名をメモしていくのも手間だし、ネット通販で買うことにした。

 まずはメーカーである「三洋電機」にアクセス。メーカーからの直販はなかったが、純正リボンの品番はわかった。
 つぎにその品番をgoogleで検索にかける。機種対応表ばかりで売っているところはひっかからない。
 yahoo!から文具通販の「アスクル」をたどる。しかしインクリボンは対応のあわない一種類しかない。
 会社で使っているコクヨ系文具通販「カウネット」にアクセス。購入はIDを郵送で発行してからという。そんな悠長なことはやってられない。

「FAX」「インクリボン」でyahoo!を検索。企業間取引のサイトしか出てこない。それではとgoogleへ行くと2000件ほど出たが、FAX電話の機能概要ばかり。「楽天市場」でもダメ。
 googleに戻って2000件をつらつら見直してみる。事務機・文具系のサイトが多いが、カタログばかりでショッピングバスケットのあるところがない。
 それでもカタログからFAX用のインクリボンはメーカー問わず、だいたいCタイプとSタイプの2種類で、ウチのはCタイプということはわかった。そんな一般的なものが、なぜ見つからない!?

 すでにネットに向かって40分が経過。こうなると意地でも探しだしてやるという気になってくる。
 それなら電器屋系を、と「ビックカメラ」へ行くとFAXはあっても消耗品はない。「ヨドバシカメラ」でついに発見! しかしショッピングバスケットがビジーで止まっている。
 とりあえず〈あった〉という事実に希望を抱きつつ「ソフマップ」「さくらや」「コジマ」と探す。みんなFAXの消耗品は感熱紙、トナーばかり。家庭用普通紙FAXに使うインクリボンはない。イラだちがつのり乱暴になる操作に堪えかねたように、iCab(ブラウザ)が何度もフリーズする。

「ラオックス」「オノデン」「サトームセン」「石丸電気」……どこにもない。本体は売ってるのに、消耗品はない。単価が安くて利幅がないからか? こんな売りっぱなしはリアルショップじゃ許されないんじゃないか? 「インターネットはからっぽの……」なんて言葉が浮かんでくる。

 FAX電話機は「家電→通信機器」というカテゴリにはいることがわかってきた。もっと大きなカテゴリで探せばいいのでは、と「家電 消耗品」を yahoo!で検索。あっけなく、電化消耗品専門サイト「ウェビー・ショップ」が出てきた。そのトップページに「今 売れてます! 普通紙ファクス用インクリボン」という記事がある。ああ、みんな探してるんだなあ。ほかの人はもっと賢くたどり着いているんだろうか……。

 購入申し込みをした翌日、メールが届いた。翌営業日に出荷するとのことだった。

追記……「売ってない」と書いたショップですが、探し方が悪い or サイトレイアウトが悪い という理由で見つからなかっただけ、という可能性もあります。
追記2……会社のビジネスホンを買い替えようとしたら、意外に高価でビックリしました。工事と機械が安い業者を探して、似たような苦労をしています。よい業者やよい探し方を知ってる方、メール(suda@tarojiro.co.jp)にお知らせください。


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