「本紙含め10枚」はあんまりだ

2001-12-12 水曜日

オフィスエム 丸山慎二 :http://www.avis.ne.jp/~emu/

 ある書店でのことです。昔ながらの、夫婦で細々とやっている小さな店。ご主人はほとんど配達で外出していることが多く、奥さんが店番をしている。小社の近くでもあり、だいたい月に一、二度は顔を出していて、行くとたいてい奥さんの口から「売れないわよねえ……」なんていう話がはじまる。
 先日、「ちょっと見てよ」と引っぱり出してきたのが、ファクスの長い長い束なのです。
 取次から送られてきた新刊案内やらフェアやらの大量のチラシでした。「今朝、店に出てみたらこれじゃない、もう何とかして! 全部うちの用紙なんだから」と。僕に怒らないで下さいよ。

 最初のページには、いとも簡単に「本紙含め10枚」と書いてある。ちょうどお客もいなかったので、二人で端と端を持ってズルズル伸ばしてみました。A4サイズの用紙なので約30センチ×10枚=3メートルにもなるんです。20坪もないほどの書店だから店の隅と隅で顔を見合わせて、しばらく二人で笑ってしまいました。「こ〜んなに長いのに、うちで必要だったのは1枚よ、イ・チ・マ・イ」だって。

 たった1回のファクスなのです。もちろん、送っているのは取次だけではない、版元からも直接、いろいろピ〜ヒャララと送信されてくる。この規模の書店でこうなのだから、大型店となればさぞかしファクスのぐるぐるとぐろ状態が察せられるのです。
 書店に1冊でも多く売ってほしい立場としては、ファクスは販促情報を伝える有効な手段です。とはいえ、使える情報が10枚中に1枚では、あまりにも無駄が多いと言えませんか。書店員のなかには全部目を通さないと気が済まないという人も知っていますが、開店前から閉店後までひたすら業務に追われ、しかもつねに人手不足のなか、という状況で、本一点ごとのファクス情報になどとても対応しきれないというのが現実だと思うのです。

 小社では読者向けに「ホンのおまけ」という通信を出していて、営業は営業で書店向けに「配ホンのおまけ」という書評情報や売れ筋情報などを送っている。なるべく補充などの荷物に同封するようにしているが、速報性からファクスを使うことも少なくない。気をつけなくては、とあらためて思うのです。
 この業界、何かにつけ、過剰印刷→過剰配本→大量返本→大量在庫もしくは断裁、という無駄の連鎖を反省しつつも、日々こんなところにも小さな(小さくない、いや長い!)無駄が転がっている世界なのだなあ、と3メートルの端をつまみながら考えてしまいました。

 大量の無駄を出せるのも、ある意味では資本力がいることで、小社みたいに「超」がつくような零細出版社では、できるだけロスを出さずに一点一点の本を売りきっていくことが生命線でもあります。ただ、少ない初版部数でスタートしても、油断してると(というわけでは決してないのですが思うように売れなかったりすると)、あっという間に在庫の山が、経営者にとっては印刷製本所からの請求の山が出来てしまいます。
 本を作ること自体が限りある資源を消費しているわけですから、肝に銘じて「本を作って読者に届ける」出版という行為をしなければなりませんっ。と格好のいいことを思いつつも、営業としては一冊でも多く売れることを目指し、沢山売れることを何よりも代え難いヨロコビとしているのですが……。

 不特定多数に向けて売るのではなく、特定の、つまり必要としている読者に必要とされている本を確実に届けること。初版から増刷につなげて、さらに増刷と長く売っていく。そのために、本の情報を書店や読者に無駄なくタイムリーにピンポイントで伝える営業を!……あ、これができるのなら、はじめから堅実な出版社になってるんだけどなあ。


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