まだ見ぬ人に促されて

2001-10-3 水曜日

梨の木舎 羽田ゆみ子 :http://www.jca.apc.org/nashinoki-sha/

#まだ見ぬ人に促されて
 韓国の全州で、10月上旬伝統音楽散調のフェスティバルがあります。全州は朝鮮朝発祥の地であり、芸郷といわれる全羅道の州都です。訪ねるのは初めてです。小社で12月刊行の『韓国・歌の旅人——ノレナグネ』(仮)で紹介します。
 著者は韓国に3年半留学していた、元二期会の歌手戸田志香(ゆきこ)さんです。
 できるだけ現場を踏んで仕事をしたい、可能なかぎり追求したい。そこがもっている空気、どんな風が吹いているのか、どんな音が流れているのか。「見たい,聞きたい,会いたい」。人が、ものが、過ぎ去った事件が、その地にいざなうのです。
 
#報復で守るものは
 9月11日のあの事件のあと、数十万の人が海外旅行をキャンセルしたそうです。成田発ソウル行きのUA881便もキャンセル待ちでとれました。
 超高層ビルが砂の楼閣のように崩壊する映像は、世界を凍りつかせました。現代文明がいとも簡単に崩壊する瞬間、何千人もの命と彼らにつながる人たちの関係が断ち切られる瞬間でした。
 そして、その後着々とうたれるブッシュの報復作戦と、なすすべもなく国内に留まる、幾百万のアフガニスタンの人々。

#中村哲医師
 アフガニスタンの状況は、17年前からパキスタンそしてアフガンで医療援助を続ける中村哲医師によってメールに入ってきました。
 20年以上の内戦、経済封鎖、旱魃で水田が砂漠化し、400万人が飢餓状態、100万人が餓死寸前に追い込まれているということです。
 何日も何日も歩いてやっと診療所にたどり着いた母親の腕の中で赤ん坊が冷たくなっていたという話には、胸をふさがれます。その母の上にもアメリカの爆弾は降り注ぐのでしょうか。
 中村医師には、パキスタンのぺシャワール郊外の病院を訪ね話を聞いたことがあります。1998年正月でした。そのあと郊外の別なところにあるアフガンの人々の難民キャンプを訪ねました。そこには日々の人々の暮らしがあり、遠来の客を目を輝かせて迎えてくれた子どもたちがいました。

#死について
 5年前、既に別れていた夫を桜町病院のホスピスでみとりましたが、いつも忙しくしているわたしに彼はつぶやくように言いました。
「なんでみんな仕事、仕事って言うのかな」
そのことばは、私の胸に沈殿しつづけました。
 彼から私に送られたことばだと、いま思います。そばにいてあげること、気持ちはいつもいっしょといってあげること、必要なときにはいつも近くにいると伝えること、夫でも、妻でも、家族でも、友人でも。そのことによって、死に直面した人がどれだけ救われるかと。何の心の準備もないまま、身近な人の死に接して、死について考えました。自分の死も、身近な人の死もいつかは必ずやってくるものなのですから。
『ひそやかに死の準備をしてみる—女がよく生きるための』(仮)をグループ梨の花編ですすめています。来年の春の刊行です。

#報復の鎖を断ち切るには
 世界が蟻地獄に落ちていくように、戦争にむかっています。でも、11日以降俄然増えたメールは、戦争を避けたいとする人たちの声を届けています。アメリカでもたくさんの人たちがデモや集会をしています。その一つを紹介します。アメリカに在住の風砂子デ・アンジェルスさんからのメールで、転送されたものです。
 9月20日は、全米学生運動の日で、36州150の大学で、武力行使に反対の集会がもたれ、ベトナム反戦運動の拠点となったカリフォルニア大学バークレイ校では2500人の学生が集まりました。衝突機のスチュワーデスだったというおばさんを亡くしたという22歳の学生が、「もしおばが生きていたら、彼女はきっと僕の隣に立って、戦争でこれ以上犠牲者を出さないようにと訴えているだろう」と語り、感動を呼んだというものでした。
 これはわたしたちにおおきな励ましです。
11日のあの事件の犠牲者につながる人たちと、アフガンで報復戦争の下にいる人たちの、果てしない復讐の連鎖回避へのかすかな希望の灯りです。

#あなた自身を抱きしめて
 長くなってしまいました。最後に来週書店に出る本。著者の山口のり子さんは、時々私に言います。「生活楽しんでる?」『DV−ドメスティックバイオレンスーあなた自身を抱きしめて』は、DV防止のためのプログラムを紹介するものですが、人間関係を活き活きと紡いでいくために私への、あなたへのプログラムです。あなたとパートナーとの関係が、もっとよく変わると思います。

梨の木舎  羽田ゆみ子
Eメール  nashinokisha@jca.apc.org
http://www.jca.apc.org/nashinoki-sha/


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