書店はなぜかくも消えていくのか

2001-4-11 水曜日

青灯社 野崎保志 :http://www.seitosha-p.co.jp

 「書店は対取次との取引において、赤字はありえない」という神話がある。したがって、店舗が自社所有の書店は潰れないと。それはほとんどの商品が売れなければ返品可能で、売れた分だけのマージンがプラスとして手元に残るし、他業種のように売れ残った商品を廃棄するようなリスクを負わなくてもいいからだという。確かに仕入の見込み違いほど小売にとって致命的なことはない。それがないだけほかの小売より恵まれているという考えはわからぬでもない。もちろん、低すぎるマージンを考慮に入れても。

  しかし、ここ数年毎年1000を越す書店が廃業している。しかもその大半は自社所有の店舗をもつ地場の書店である。なぜ永遠のプラス構造と思われている書店がかくも大量に潰れなければならないのか。書店の今日的苦境を考えてみたい。

 書店の場合、(売上+返品)—(仕入)=(利益)という計算式で測れない要素が多分にある。東書商・東京青年部という書店の団体がある。ほとんどが地場で自社所有店舗でやっている。彼らの話によると、実際は計算どおりにいかず、利益ゼロやマイナスがしばしば発生するらしい。

 なぜ赤字が生じるのか。基本的に書店は代金前払いである。新刊委託品も注文品も取次の請求は翌月払いである。支払いの時点ではほとんどの商品がまだ売れていないことが多い。しかも注文もしてない商品が勝手に入荷してくる。まだ金になってない商品の代金を払わなければならないというわけだ。

 それだけではない。実際には返せない商品もある。返品拒否版元は名高いI社やM社だけではない。版元側が受け入れようとしても、その前に取次が逆送するケースもある。また流通上の汚損、店内での汚損、そして万引きと自店でカバーしなければならない商品は相当数ある。1冊そうした商品が発生すると、そのマイナスを埋めるために、同額商品を4冊売らなければならない(書店のマージンは20%強だから)。先に書店はロスが少ないと言ったが、マージンが少ない分生じたときのカバーはかなりきつい。前出の書店の言によれば、通常月10冊程度はそうしたロスが出るという。

 こうした状態を念頭に書店の経営を考えると、薄いマージンからあらゆる経費を捻出するためには、量を売っていくしかない。しかし、この戦後最大の不況下、衣食住に関係しない書籍がそう大量に売れるわけがない。光熱費、人件費、生活費そして店を借りてるとすればその家賃と、利益をオーバーした支出は当然、本来は取次に支払われるべき商品代を食っていく。書店倒産のスタートラインである。

 小田光雄氏の『出版社と書店はいかにして消えていくか』(ぱる出版)によれば、取次に対する負債より店の在庫のほうがはるかに少ない書店が全国いたるところにあると。そんなばかなことがと言いたいところだが、事実である。書店の在庫をすべて取次に返しても足りないのである。(つづく)


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