最後の一冊

2001-4-25 水曜日

青弓社 矢野恵二 :http://www.seikyusha.co.jp/

 当社の図書目録を大幅に改訂した。とはいっても、なにもなんの前触れもなしに定価を値上げしたわけでもなく、ジャンルの分類項目を増やして、その書籍の内容によりふさわしい項目にいくつかを移したのである。

 図書目録には、ほかの社でもおおむねそうだが、巻末には「品切/増刷未定書」の一覧をもうけてある。新刊が少しずつ増えていくにつれて各分類項目でページが増えるものもあるが、反面、この「品切/増刷未定書」項目にも何点かが毎年収まっていく。「長い間ご苦労さんでした。申し訳ないけど、増刷できません」という感じで、これじゃまるで定年退職みたいだが、もし、たとえば300部を(3000部ではありません)増刷したとしても、完売できるまでにたぶん十年以上はかかるだろう、という見込みがたつからである。あるいは、先駆的な役割を終えた、という書籍もある。「初刷を刊行したときの反応ったら、そりゃーすごいものだった」とその社の“長老”が若手に語ってきかせる商品がどこにも必ずあるはずだ。書店に華々しく(いや、しずしずと)登場してから十年あるいは二十年たって、十二分に役割を果たした、あとは後進に道を譲ってそろそろステージからお引き取りいただこう、とでもいうことだろう。

 どのように言葉を重ねたとしても、まるでかつての花形選手に引退を告げるかのように、ことさらに力強く明るく、社内にアナウンスする。「『驚くほど売れた本』は品切です」。まるで自分で自分に宣告するように、である。

 で、ここからが出版業界の不思議な現象である。十数年前の初刷書籍だし、ここ何年も返品はなかった、読者からの注文も年に数冊で在庫をお届けしてきたこの商品が、どこに隠れていたのだろうか、品切に入れたあとにもひょっこりと、そう、まるで忘れたころに葛飾・柴又に帰ってきたとらさんのように、返ってくることがあるのだ。

 その貴重な一冊は、金の無心に立ち寄った放蕩娘か帰国を家族じゅうで待ちわびていたかわいい息子かわからないが、残部僅少棚に鎮座ましますことになる。そして、どこでお知りになりましたか?とききたくなるような読者からの電話注文が飛び込んでくる。「…… はありませんか?」

 先日、そんな電話を受けた。誠意を込めたつもりの返事をした。「もしかしたら数年後にまた一冊くらいは返ってくるかもしれませんが、ここ数年で最後の一冊です」。が、そのかたはたぶん、売らんかなの応対だと思ったのだろう、「あ、考えてみてまた電話します」。

 誓って、「最後の一冊だよー」と声をからしたあとで「おーい、裏から商品を持ってきて!」と叫んでいるのではない。誓って!


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何でも屋、編書房の日記

2001-4-25 水曜日

編書房 國岡克知子 :http://www.amushobo.com/

編(あむ)書房の日常は忙しい、余裕ない、お金もあまりない。毎日どうしてこのように時間がないのであろうか?小さな小さな版元(一人出版社です。新卒採用予定は永久にゼロ)だから、さぞかし暇だろうと創業のとき(3年前)には考えていました。たっぷり本を読む時間もできるであろうと。しかし夢と現実は違うのでした。
本は大急ぎで読むしかないのです。その理由は以下の通りです。

1. 午前中、編書房の本来の仕事をする。注文品を倉庫に取りに行ったり、荷作りしたり、愛読者カードに返事を書いたり、メールに返信を出したりする(やたらと長いメールをくれる人がいるので、それなりにこちらも誠意をもって長く書く)。書く仕事がものすごく多い。
2. 午後からはオンライン書店に出稼ぎに行く。有難いことに文庫新書のエディターとして棚をまかされているので、好きな本をウエブ上に並べる。サラリーマンではないが組織に従属する苦痛をチョッピリ味わう。
3. 午後8時ごろ帰宅して、『図書館の学校』(図書館流通センター発行)で連載中の永江朗さんと斎藤美奈子さんの対談、「甘い本、辛い本」で使う対談本を読んだり、原稿を書いたり、新聞を読んだり、ビールを飲みながらご飯を作ったりする。
4. 編集プロダクションとして企画している本の原稿を読んだり、夜中に電話やFAXで著者と打ち合わせをしたり、見積書を書いたりする。
5.これらの仕事を終えてやっと読みたい本に飛びついて自分を取り戻す。時間が足りないのでいつも不満。先週読んだ本は『「教養」とは何か』『教養論ノート』『新教養主義宣言』 『バカのための読書術』『光の教会』『俳句殺人事件』『東方見便録』。買ったが積んだままの本は『君の中の見知らぬ女』『職業としての翻訳』『迷いの体』など10冊余り。毎週かなりの本を買う。いつ読むんだろう?

これだけ休みなく働き頑張ってもサラリーマン時代の給料には及びもつきません。最近出したばかりの『古本屋サバイバル』(小田光雄、河野高孝、田村和典著・ 2001年3月刊・本体1700円)も、満を持しての出版だった(部数も随分刷ってしまった)にもかかわらず、売れんのですわ。著者の小田光雄さんと「なぜ、売れないんだろうね」と電話で愚痴大会に。「こんないいい本なのに、なぜ無視されるのか、悲しいね」。ふたりの愚痴はいつまでも続きます。こういう部数決定の間違いと大量返品が、お金のたまらない理由でしょうか。


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最近、版元ドットコムが取り組んでいること

2001-4-18 水曜日

ポット出版 沢辺均 :http://www.pot.co.jp/

5月25日(金)●版元ドットコム集会が近いもんで

 5月25日(金)の17時から、神楽坂の出版クラブ3Fで版元ドットコム集会を開くことにしました。会員・会友はもちろん、出版業界の方々、読者の方も参加していただけます。

  そこで、そのときに報告し、実際にみてもらう予定のシステムと今後の計画について、いくつか報告することにしました。
 最初にことわってしまいますが、いま取り組んでいるシステムは、お客さんに喜んでもらうためというよりも、版元と会員がさらに版元ドットコムを便利に使ってもらえるためのものが中心だと、僕は思ってます。
 それは、このウェブサイトを、より多くの本の情報を持ったデータベースにすることが、お客さんに喜んで使ってもらえるものになり、そのためには会員版元が、より便利に使ってくれる環境を提供すること、そしてその結果、いち早く多くの本の情報がこのサイトのデータベースに集まるようにすることが近道だと思うからです。

  版元ドットコムは、3月から本のデータベースに対する考え方の基本を大きく修正しました。「会員版元は、まずすべての既刊本の情報をデータベースにいれてもらう」という考え方を変えて、「新しく発行した本の情報から、データベースにいれてもう」ことにしたのです。
そのために、新刊データ登録のインターフェイスを全面的に見直して改善しました。
同時に「あと○○日で発行しますよ」という発行前の情報を、版元ドットコムサイトのデータベースに登録すると同時に、取次各社(出版業界の問屋)・bk1 などのネット書店・書協(出版社の業界団体で本の検索サイト・書籍データベースを運営)へも、チェックボックスをクリックで選択するだけで自動的に転送するようにしました。
また、在庫の有無を大阪屋(取次)などに自動転送する機能もつくりました。
さらに、こうした情報の転送は箇条書きのように記録されるので、あとあと、どんな情報を、どこへ、いつ送ったのかまとめて管理することができます。
 こうした便利さを提供することで、会員版元のいち早いデータ登録を実現しようとしています。 また、ボタン一つで会員版元が登録している本のデータすべてをダウンロードできるシステムも現在準備中です。これが実現すれば、出版目録をつくる際に、ボタン一つで原稿の準備ができることになります。
これにプラスして、メールマガジン『版元ドットコムNEWS』を創刊しました。
これは、データの自動転送機能を使って、かなり自動的に制作・発行(送信)できるようにしています。

 

 さて、次に、いま実際に取り組んでいることです。
 第一に、いよいよ5月〜6月を目途にカード決済に取り組んでいます。
ネットでの決済方法としては、まだまだ少数の方にしか使われていないようですが、選択肢を広げるという意味からも、取り組んでいるのです。
 第二に、カード決済と同時期に、書店に[買い切り・80%・版元から直送・版元と直接決済]で仕入れてもらえるシステムを作ります。
これらに伴って、サーバ・通信回線・の改良も進めています。

 さて、読者のみなさんにこんな「内輪話」はつまらないかもしれません。どうも、ゴメンナサイ。で、こうしたシステムが出来上がったら、いよいよお客さん・読者のみなさんに楽しんでもらえるサイトづくり、サイトの改良へと取り組みを始めるつもりです。
いろいろと夢見ていることがあるんですが、今はまだ「オオボラ」にしかすぎないので、もう少し現実化したらまた、書かせてもらいます。


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人生にインパクトを与えるメディアを目指す

2001-4-18 水曜日

亜紀書房 小林英貴 :http://www.akishobo.com/

毛須具呈念(もうすぐ・ていねん)(57)は休日の午後をぶらぶらと書店で時間を過ごしていた。郊外にある大型書店、レンタルビデオとCDの店も併設されていたその書店で、呈念はいつの頃からか車でわざわざここまで来て、書物の林の中を彷徨するのが休みの日の過ごし方となっていた。本を買う事もあり、買わずに帰る事もあった呈念を店員は読書好きなおじさんとして見ていた。
仕事に明け暮れ、何の趣味も持たずにこの年になってしまった事を、呈念は後悔しなかったと言えば嘘になる。周りからは無感動のオヤジとしか見られてはいない事を呈念は知っている。しかし、その中に情熱の種火がほのかにともっている事を未だ呈念は知らない。それでも、どうにかしなければならないとは感じていた。なにかはしたいのだ。なにかが。そのなにかを求めて、呈念は林の中をさまよっていたのかもしれない。今日はそのなにかと出会えるかもしれない、そんな希望を求めて…。

いつの間にか呈念は趣味.実用の棚に来ていた。
「なにか…なにか…なにか…」呈念はそう思いながら、なにかを探していた。
「こ…これかなあ…いや、違うな…」「イヤ、待てよ…」独り言を言う老人を好もしく思ってはいなかった呈念だったが、いつの間にかそんな年代になっていた事に気づいたのはつい最近のことであった。それ以来、「なにか」を見つけたい欲求がひときわ大きくなってきたのだった。
ふと、平台にあった本に目をやった呈念は、その本を手に取った。
『定年後は夫婦で「こだわり」の海外旅行をしよう』
その表紙には風景の中、並んで睦まじそうな、熟年カップルがいた。
「しばらく、カミさんと旅行にも行ってないなあ…」呈念はため息をついた。
妻との老後の関係は、『今はもう 飯食うだけの 夫婦なり』そんな戯れ川柳の境地なのかなあ、呈念はそう思ってはいたが、週刊誌やテレビなどで『熟年離婚』などと言うコトバが踊っているのを見て、そういう甘い老後像を考えていた自分を恥じ、焦り始めていた。何とかしなければならない、と。
口幅ったいし、何より気恥ずかしいので呈念は口には出さないが、一生妻と暮らしたい、妻と何かを作り上げて行きたい、そんな気持があった。あったけれども、…仕事にかまけて、妻との関係作りなど、ほとんどしていなかったのだった。
平台には、『海外旅行』の本の他に5点、『シニアブックシリーズ』と銘打たれた本が並んでいた。
『定年後は心なごむ「レストラン」を始めよう』
『定年後は「ゴルフ」でシングルの腕前をめざそう』
『定年後は「写真」に凝って仲間を作ろう』
『定年後は「庭師」になって自然相手の仕事をしよう』
『定年後は「般若心経」で悔いなく生きよう』
その中の一冊に呈念は手を伸ばした。
『定年後は心なごむ「レストラン」を始めよう』と題されたその本は、表紙にそのレストランの店長と従業員がその店のご自慢のメニューであろう、弁当を手に笑った写真があった。
「レストラン、か…昔、二人で言ってたなあ、オレが会社を辞めたら、…二人でお店を持ちましょう、とか…もう、何十年も前だったが…今から料理の勉強をしてみようか…?」
呈念はそんな事を考えながら本をめくる。
「この人の息子さんは障がい者だったのか…若くして亡くなって、…障がい者でも入れるレストランを作ろうって、約束してたのか…ははあ、レストランえりかの人気レシピ、か…作れるかなあ、このオレでも…」
「『定年後は「ゴルフ」でシングルの腕前をめざそう』かあ…オレもこの人と同じ、ブービー常連、もっと上手くなりたいと思いはしたけれど、…今からでも、上手くなれるのかなあ…?うーむ、USGAのハンデが7か…うーむ」
「『定年後は「写真」に凝って仲間を作ろう』そういえば前に買ったミノルタがあったっけ…ちょっと使ってそれっきりの…折角のオートフォーカス、高かったのにってカミさんに怒られて…うーん、仲間、かあ…」
「こっちは…『定年後は「庭師」になって自然相手の仕事をしよう』この年になっても、手に職を付ける事ができるんだ…」
「『定年後は「般若心経」で悔いなく生きよう』ああ、『執らわれない心』か…志すのに遅すぎると言う事はない…そうか…」

「こんな本が、あったんだ…」
呈念は目からウロコが落ちた思いだった。
ふと、どこから出ているのか確かめて見ると、『亜紀書房』とあった。
ああ、亜紀書房…若い時読んだ記憶がある…昔、学生運動をしていた頃、先輩に本を貰って…なんだったっけ…ああ、そうだ、『砦の上にわれらの世界を』だった。…あの頃はまだ情熱があったなあ…そうそう、公害問題とかでも本があったっけ…『公害原論』とか…まだそういう本を出してるんだろうか…。
呈念は人文書の並んでいる棚に来た。
「ああ、あるある…『公害原論』だ…『泣くものか』…ああ、『凍土の共和国』…最近の本は、…へえ、『韓国両班騒動記』こっちは…『アメリカ大統領の中東.アジア政策』『挑戦するアメリカ高齢者パワー』ははあ、こんなのも出してるのか…うーん、亜紀書房も今でもこういう本を出して頑張ってるんだなあ。」
いつの間にか呈念は、先ほどとは打って変わった目の輝きを有していた。
「オレは若い頃の力はないけれど、もっと定年後の人生をポジティブに過ごしたい!妻と、残りの人生を楽しく、心豊かに生きて行きたい!」呈念は心からそう思っていた。
夢物語と言われるかもしれないけど、レストランを作ってみたい!
今度こそ、ゴルフが上手くなりたい!
押し入れのカメラで腕を上げて、そうしたらカミさんと二人、海外旅行をしよう!
庭師になる、ってのもいいな。手に職をつけたいな!
呈念はしっかりとした足取りで趣味.実用の棚に行き、シニアブックシリーズ6冊すべてを買って行った。

それからしばらくして、呈念宅の近所の人たちは、家を改造した『ビストロもうすぐ』の店のカウンターで、呈念の妻からヨーロッパ旅行の土産を貰い、旅行の写真を見て、ころころと笑っていた。
カウンターの中には、すっかり血色が良くなり、口髭をたくわえた呈念の姿があった。
(つづく・…かもしれない)


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書店はなぜかくも消えていくのか

2001-4-11 水曜日

青灯社 野崎保志 :http://www.seitosha-p.co.jp

 「書店は対取次との取引において、赤字はありえない」という神話がある。したがって、店舗が自社所有の書店は潰れないと。それはほとんどの商品が売れなければ返品可能で、売れた分だけのマージンがプラスとして手元に残るし、他業種のように売れ残った商品を廃棄するようなリスクを負わなくてもいいからだという。確かに仕入の見込み違いほど小売にとって致命的なことはない。それがないだけほかの小売より恵まれているという考えはわからぬでもない。もちろん、低すぎるマージンを考慮に入れても。

  しかし、ここ数年毎年1000を越す書店が廃業している。しかもその大半は自社所有の店舗をもつ地場の書店である。なぜ永遠のプラス構造と思われている書店がかくも大量に潰れなければならないのか。書店の今日的苦境を考えてみたい。

 書店の場合、(売上+返品)—(仕入)=(利益)という計算式で測れない要素が多分にある。東書商・東京青年部という書店の団体がある。ほとんどが地場で自社所有店舗でやっている。彼らの話によると、実際は計算どおりにいかず、利益ゼロやマイナスがしばしば発生するらしい。

 なぜ赤字が生じるのか。基本的に書店は代金前払いである。新刊委託品も注文品も取次の請求は翌月払いである。支払いの時点ではほとんどの商品がまだ売れていないことが多い。しかも注文もしてない商品が勝手に入荷してくる。まだ金になってない商品の代金を払わなければならないというわけだ。

 それだけではない。実際には返せない商品もある。返品拒否版元は名高いI社やM社だけではない。版元側が受け入れようとしても、その前に取次が逆送するケースもある。また流通上の汚損、店内での汚損、そして万引きと自店でカバーしなければならない商品は相当数ある。1冊そうした商品が発生すると、そのマイナスを埋めるために、同額商品を4冊売らなければならない(書店のマージンは20%強だから)。先に書店はロスが少ないと言ったが、マージンが少ない分生じたときのカバーはかなりきつい。前出の書店の言によれば、通常月10冊程度はそうしたロスが出るという。

 こうした状態を念頭に書店の経営を考えると、薄いマージンからあらゆる経費を捻出するためには、量を売っていくしかない。しかし、この戦後最大の不況下、衣食住に関係しない書籍がそう大量に売れるわけがない。光熱費、人件費、生活費そして店を借りてるとすればその家賃と、利益をオーバーした支出は当然、本来は取次に支払われるべき商品代を食っていく。書店倒産のスタートラインである。

 小田光雄氏の『出版社と書店はいかにして消えていくか』(ぱる出版)によれば、取次に対する負債より店の在庫のほうがはるかに少ない書店が全国いたるところにあると。そんなばかなことがと言いたいところだが、事実である。書店の在庫をすべて取次に返しても足りないのである。(つづく)


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「再販原理主義」のゆくえ

2001-4-6 金曜日

第三書館 北川明 :http://www.hanmoto.com/bd/d3skan/1/

 三月二十三日に公取委から一応の結論が出て、とりあえず再販維持が決まった。ご同 慶の至りである。

 しかし、これからどうするのかと言う点では出版界の合意がとれているわけではな い。むしろこれからのほうがかえって各論続出なのではないか。

 まずなすべきは現状把握である。新古書店の増加、ポイント制の導入など変化は激 しい。私が驚いたのは生協へのバックペイがかなり一般化していると言う事実。さる 業界団体では生協書店でフェアをやったら、最初から5%とか10%あるいはそれ以 上のバックペイはジョーシキだという。(私がこれまで属していたところではまった くそんなことはなかった。)生協は普段の生協価格よりそのぶんだけさらに割引して 読者に販売するという。

 ことが生協だから、そんなことはアタリマエだと言う人も多いかもしれない。で も、私にはどうも腑に落ちない。生協がそのタテマエとしてきた生活防衛の意義は とっくに崩壊しているのは当事者がはっきり認めている。あとは法律があるから、そ れが例外的に認められているから、ということになる。

 しかし、法律論議をするなら、再販制は独禁法で原則禁止であって、出版物の再販 制はその例外として認められたもの。生協がまたその例外ならば、例外の例外で、今 の生協のやりかたが本来のものということになってしまわないか。

 「再販原理主義」を貫こうと言うなら、ポイント制を導入している書店には出荷しな い、生協へのバックペイは拒否する、私がこの前この欄で提案した時限歩安納品(= 歩安返品)も拒否ということになる。

 果たしてそれを貫徹できるのだろうか。これも結構大変だ。

 結局のところ、口では「再販原理主義」、行動としては何もしない、ということに終 わってしまうのではないか。

 版元ドットコムに誘ったさる版元いわく「送料無料で読者に本を送るなんて、再販 制の原則に反するから参加拒否です」と。


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