統合失調症からの回復過程風の吹くままに
星野 文男, やどかりブックレット編集委員会:編
発行:やどかり出版
この版元の本一覧
A5判 102ページ 並製
定価:900円+税 総額を計算する
ISBN978-4-946498-90-9(4-946498-90-7) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年10月
書店発売日:2006年10月30日
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紹介

本書は,「風の吹くままに生きてきた」と自身を振り返る,やどかりの里のメンバーで統合失調症を持つ星野文男さんの今日に至るまでの道程を書き記したものである.
 幼少期のやんちゃ坊主から次第に優等生になり,進路を巡り悩み,苦しみ,19歳で統合失調症を発症するまでの様.病気を持ちながらも常に働き続けてきた中で見えてきたこと,28歳のとき,わらをもすがる思いで精神保健活動団体やどかりの里に辿り着き,自分を取り戻していく姿,そして結婚から離婚へ,現在の生活を手に入れるまでの回復過程のありのままが描かれている.
 今はただ,よりよく生きるため,仕事をして,音楽を聴き,読書をして,たまに旅行に行く,そんなリズムに漂っている星野さんに出会える1冊である.
 「人生って何だろうか」と暗中模索している人がいるならば,肩の力をちょっと抜いて,本書を手にして欲しい.生きているのも結構楽しいじゃないと思えるのではないだろうか.

目次

発刊にあたって
はじめに
Ⅰ.発病するまで
 1.小学校から大学までの記録
  1)団塊の世代の私
  2)仕事場と家庭がごっちゃになった生活
  3)サラリーマン家庭がうらやましかった
  4)学級委員にも選ばれた小学校6年の時
  5)殻を破れと言われて
  6)中学3年の時に初めて幻聴を聞いた
  7)劣等感と優越感のアンバランスの中で
  8)志望した進路への道を絶たれて
  9)牽牛織姫のような淡い恋
  10)自分のアイデンティティの喪失を実感
  11)学生運動にも加われずに悩みは大きくなる
  12)悩みが重なって幻聴が起きた
  13)私と薬の関わり
  14)初めての入院,これで人生は終わりかと
 2.今を精一杯生きて
  1)販売会社の国内営業部門に就職
  2)私の体はバブル経済で破綻した会社のようなもの
  3)3回目の入院の後に「やどかりの里」へ
  4)父が経営するビル管理の仕事をする
  5)ビルの管理者から「やどかり出版」へ
  6)仕事がそこにあるからやる
  7)1人1人がその能力を最大限に引き出せる職場に
Ⅱ.私の入院体験
 1.初めての入院
 2.2回,3回目の入院
 3.日記「2回目の入院」から抜粋
  1)1974年5月23日(木)曇
  2)1974年5月25日(土)晴
  3)1974年5月29日(水)曇
  4)1974年6月2日(日)晴
  5)1974年6月15日(土)晴
 4.日記「3回目の入院 原点」から抜粋
  1)6月9日(水)
  2)6月14日
  3)6月16日
 5.日記「4回目の入院 女の子みたいなむさい男のひとりごと」から抜粋
  1)7月29日
  2)7月31日
Ⅲ.やどかりの里と私
 1.やどかりの里を知るきっかけ
 2.やどかりの里に通うきっかけ
 3.当時の日記から抜粋
  1)5月27日(土)晴
  2)5月31日(水)晴
  3)6月3日(土)晴
  4)6月7日(水)晴
  5)6月14日
  6)6月17日
 4.グループ活動:爽風会
  1)始めは相談グループから
  2)爽風会の理念と変遷
  3)爽風会の運営と活動
  4)爽風会の合宿・旅行
  5)爽風会が役に立ったこと
 5.やどかりの里と私
Ⅳ.結婚そして離婚
 1.夢にも思わなかった結婚
 2.いつも病気の影に怯えていた私
 3.私がぽっぽと燃え上がって
 4.彼女に商店の奥様という重圧が
 5.夫の活躍には大賛成,でも1人でいるのは寂しい
 6.なんで破局がきたのか未だにわからない
 7.茶の間でゆったりした時間を過ごす
 8.社会にぜひ恩返しを
おわりに

前書きなど

 「いや〜,私の本なんて読みたい人いるのかな」.星野文男さんの人生をブックレットにしようと編集委員から提案されたときの彼の一言である.照れくさそうな眼鏡の奥の目が印象的で,今でも思い出せる.星野さんらしい顔である.
(中略)
 現在は57歳.本書では,幼少期のやんちゃ坊主からしだいに優等生になり,進学を巡り悩み,苦しみ,発病していく様,病気を持ちながらも常に働き続けてきたこと,結婚と離婚,やどかりの里でのこと,今日に到るまでの星野さんのありのままが語られている.
 中学時代,友人とのギャップに悩み,落ち込んだとき,親からの「殻を作るな」の言葉.それに対し,「卵の殻を作っているんだから無理に割ろうとしたら死んじゃうよ」「卵を殻を作っている場合は親鳥が暖めてう化させる.そういう教育見たいのが良いのかな」と思うのは,いかにも星野さんらしい.初めての幻聴は中学3年生のとき.だれにでもありうることだと思わざるを得ない状況からだった.
 大学進学はするものの,希望進路ではなかったこと,入学した当時の状況は70年安保闘争真っ最中の学生運動……,そんな中何をしたらいいのか,人生とは何かに悩み,アイデンティティの喪失から幻聴が起こり19歳で初めての入院となった.病気を持ちながらも卒業し,会社勤めをし,働き続けている.そんなことからも,真面目な星野さんの姿が窺える.
 星野さんがやどかりの里に来たのは28歳,藁をもすがる思いだったという.当時の入院生活,やどかりの里のことは,星野さんの残した日記から抜粋し,この本に載せられている.実に人間味あふれ,これだけでも面白い.「風の吹くままに生きてきた」と自身を振り返る星野さんの今日までの道程がこの本には満載である.

 星野さんと私は,やどかり情報館でともに働き始めてから3年が経つ.何気ない言葉を交わすなかに「そっか」と妙に納得させられることがある.それは星野さんの体験から生まれた真実の言葉だからなのだと,この本を読み進めながら改めて思う.人はそれぞれのあり方で,それぞれの心持ちで,その場にいる.ただ黙っていることにも意味があるのだということを,私に教えてくれるのである.

 私たちの周りには「人生って何だろうか」と暗中模索している人がまだ大勢いる.そういう人が,ふとこの本を手にしたとき,日々の何気ないことの中に大事なことが隠れていると感じたり,こんな生き方もあるのかと息が抜けたり,自分の人生に希望を持つことができるのではないかと思う.
 1人1人の人生は,だれとも違う,その人にしかないものである.このやどかりブックレットは,障害を持つ人の体験として語られるだけでない.1人1人の生き様の中から,この時代をともに生きる人たちへのメッセージが込められている.
 今回で15冊目となるやどかりブックレットの1冊1冊が,多くの人とのご縁となるようこれからも送り続けていきたいと思う.
 2006年10月 やどかりブックレット編集委員 佐々木千夏

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