おっかあの三里塚闘争史熱田てる物語
熱田 てる:文, 山根 克也:編
発行:実践社  発売:実践社
この版元の本一覧
A5判 180ページ 上製
定価:1,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-916043-60-3(4-916043-60-X) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年11月
書店発売日:2002年11月20日
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紹介

反対同盟元代表熱田一夫人が語る、もう一つの三里塚闘争史。兄の戦死、電気も井戸もない開拓農家への嫁入り。やがて北総台地を揺るがす成田空港反対闘争が始まった。
「百姓を虫けらのように扱う国と空港公団。でも気持ちじゃ負けてないよ。だってうちの爺さんと私がここに住み続けるかぎり、成田空港は決して完成しないんだから」
反対運動の高揚と衰退。運動内部の分裂について。村内で、女たち同士で、協力、そして対立。
36年間の運動のなかでぶつかった様々なことを、おっかあの語りで振りかえる。
熱田一さんが四季折々の風景と農家の日常をつづった三里塚歳時記も収録。
付録に三里塚闘争年史
36年間にわたる空港建設を拒み続けた三里塚農民の経験は、これからの住民運動にもプラス、マイナス両側面から示唆を与えるものになるでしょう。

目次

第1章 兄の戦死が私の闘争の出発点
①「おくにのため」はもうこりごり
②嫁の交換で嫁いできた熱田の家
③電気もなければ、井戸もない
④嫁入れ前は勤労奉仕の日々
⑤獄中からの手紙は今でも持ってるよ
第2章 村づくりの先頭に立ったうちの爺さん
①これっくらいしかない砂糖の配給
②終戦、引き上げ者がやって来た
③御料牧場が開放されて入植地に
④政江、保子、三津江に誠の誕生
第3章 部落ぐるみで結成した反対同盟
①寝耳に水の閣議決定
②一夜で寝返った町長と町議
③ドラム缶がなれば駆けつけた
第4章 砦に体を鎖で縛りつけて闘った
①測量阻止闘争、実力闘争が始まった
②強制収用阻止、逮捕覚悟で砦へ
③息子・誠の逮捕、堂々と行って来い
第5章 横堀要塞戦でうちの爺さんが捕まった
①東山さんは餅つきが得意だった
②爺さん逮捕で財布がなくて困ったよ
③たとえ刑に服そうと悪人とは思わない
④開港阻止の決戦が始まった
第6章 反対同盟分裂で爺さん熱田派代表に
①成田用水という「飴」
②旦那任せにしたおっかさん達
③3・8分裂の大本は用水問題
④反対闘争やる者を追い出すのには反対だ
第7章 家を新築し「終の住まい」と決めた
①成田シンポジウムで政府は謝った
②掌を返して暫定滑走路建設へ
③一坪も売らなくても家ぐらい建てられる
④空港できなくて、困っているのは向こうだろ
第8章 横堀部落に人垣をつくりたい
①鳥居建設にかける部落再建の思い
②色々うるさい「騒音」はあるけれど
③体だけは丈夫だからやってこれた
第9章 緑なす三里塚の大地よ、永遠(とわ)に
熱田一さんが語る三里塚歳時記
補 三里塚現闘団の見た熱田家
資料 三里塚闘争年表

前書きなど

 夏の三里塚の朝は早い。夜明けが近づくと、まずヒグラシが鳴き始める。夕方に鳴くセミが夜明け前に鳴き出すのは気温の関係なのだろうか。空が明るくなるころになると、今度はウグイスなど野鳥のさえずりがそれに加わる。そんなのどかさをうち破るように、突然「バーン、バーン」という炸裂音が田んぼから響きだす。5時、早起きの農家がカーバイトをしかけて、実りだした稲穂を食べに来る雀たちを追っ払っているのだ。
 豊かな自然と、それに連なる人間の農の営み。三里塚には、かつてどこにでもあった日本の農村の原風景が、いまだに残っている。
 成田空港建設の閣議決定から37年。78年の1期開港から24年目にあたる今年、政府・空港公団は「サッカー・ワールドカップ開催」を口実に、地元住民の反対を押し切る形で2本目の滑走路を完成させた。4月18日のオープン以来、滑走路の直下に当たる部落では、早朝6時から深夜23時までの間、「ガード下並み」と言われるジェット機の大騒音にさらされている。セミや野鳥の鳴き声、カーバイドの炸裂音さえもかき消しながら、ジェット機は滑走路をめがけ農家の屋根すれすれを降りていく。
 まるで地上げ屋のように、反対派住民の頭上に航空機を飛ばしておきながら、一方で「用地居座りは国民的迷惑」だとかいう非難キャンペーンを強める、これのどこが「平和的解決」なのだろうか。政府・公団の住民無視のやり方は、37年前も今も何ら変わっていない。また、そうである以上、三里塚農民の抵抗闘争は終わるはずもないのだ。
 本書に登場する熱田一さん、てるさん夫婦は、空港直近の横堀部落に住み、空港建設予定地内に土地を持つ農民である。一さんは一時反対同盟の代表を務めたことで有名だが、それ以上に常に闘いの先頭にたちながらも明るく素朴な人柄で、多くの人たちから慕われている。熱田一さん、てるさんの普段と変わらない語り口に、37年の長きにわたり多くの人々の心をとらえてはなさなかった三里塚闘争の魅力とエネルギーを感じてもらえると思う。本書を通じ、空港闘争ばかりでなく、ダムや巨大開発に各地で反対しつづける人々に、エールをおくることができれば幸いである。

版元から一言

軒先を飛行機がかすめていく。反対する農民との合意がないまま今も進む成田空港建設。私たちはここに生きている。そんなてるさんの声を何とか伝えたかった。
半生を淡々と語ってくれた内容には、反対運動の高揚と衰退、運動内部の分裂について、村内で、女たち同士で、協力、そして対立。36年間の運動を経て、空港予定地直近に新家を建てた気持ち。様々なことが入っている。
元反対同盟代表熱田一さんによる歳時記は、一度でも三里塚に足を運び土にふれあった人には、その風景を思い浮かべられるものになるだろう。
一さん、てるさんの普段と変わらない語り口に、36年の長きにわたり多くの人々の心をとらえた三里塚闘争の魅力を感じてもらえたらと思う。
空港闘争ばかりでなく、ダムや巨大開発に各地で反対しつづける人々にも、プラスマイナス両面で、経験を共有できる一冊になれば幸いです。

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