沖縄大論争ウチナーンチュは何処へ
大田 昌秀, 高良 倉吉, 喜納 昌吉, 山内 徳信, 大山 朝常, 新崎 盛暉, 知花 昌一, 太田 武二, 上原 成信 , 由井 晶子, 我部 政明, 高良 勉, 小熊 英二, 新川 明
発行:実践社
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四六判 260ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-916043-35-1(4-916043-35-9) C0036

奥付の初版発行年月:2000年01月
書店発売日:2000年01月20日
Tags: none

紹介

下嶋哲朗さん・ノンフィクション作家(『週刊読書人』2000年3月3日付)評
沖縄問題に現れた革新の無策
 昨今沖縄はブームにある。そこで沖縄問題関係書が多量に新刊する。それぞれにすぐれてはいる。だがどれも再版はおぼつくまい。経済不況に日本人は沖縄問題どころじゃない、のだろうしブームの実態が知性とは無関係にあるからだ。それでも出版が相次ぐのは、沖縄問題は日本人の問題である、との冷静に沖縄を見つめる眼が編集者に定着した現れではないか。
 ……大田(前沖縄県知事)は既成革新に似ず、政策決定の選択肢を多く持った。自ら言う「非暴力、不服従の抵抗精神」だが、これが日本政府交渉にあたり相手を翻弄、勝ち点を多く得た。
 選択肢は多いから 失敗も当然ある。だが二者択一ではなく「現実のパワーポリティックの中では、ごねまくっている方がより現実的であり、相手の妥協を引き出せる」。『ウチナーンチュは何処へ』のインタビューイーの一人小熊英二は大田の方法をこう評価し、革新の未来を示唆する。有名無名16人のインタビュー構成による本書は、小熊を除きウチナーンチュ(沖縄人)である。沖縄の発言者は多彩である。ヤマトのどの一地方もこれほど多様な発言者を生まない。これはヤマトとウチナーの長い関係史に磨き抜かれた沖縄であればこそ、というだけではない。直接米軍時には米政府相手の交渉の長い経験、時の積層が多様な発想法を生み出す。
 発言者の誰もが既成革新の硬直する無策を指摘する。なかで沖縄判小林よしのりと言われる高良倉吉は、その硬直へ上手に取り入る。彼の破綻するロジックは保守県政のバイブルとまでなる。キーワードは案の定“経済”である。それだからこそこぞり、真の知識人は反論しない訳にはいかない。高良はかつては真摯な琉球史研究者だったそうだ。
 ところで編集者は高良潰しに精一杯、という観がある。本書は多彩な意見の持ち主の登場こそを魅力とするのに、各インタビューイーに執拗に高良批判を求める。これが折角の魅力を薄めるという逆効果として現れる。右の点を除けばこれは実に面白く読みがいのある本だ。

目次

第一部 沖縄を平和な島に、日本に民主主義を
基地依存の経済から脱却し、自立する「平和な沖縄」を/大田昌秀(前沖縄県知事)
沖縄問題の解決は日本の民主化がカギです/山内徳信(元読谷村長)
97歳タンメーは琉球の風に生きる/大山朝常(元コザ市長)

第二部 沖縄のグランドデザインを考える
稲嶺県政は新たな同化主義だよ/新崎盛暉(沖縄大学教授)
日常の中に問題解決の仕組みをどうつくるか/高良倉吉(琉球大学教授)
経済振興だけが価値なのか/知花昌一(読谷村議・反戦地主)
ヤマトとウチナーのバリアフリーを/比嘉律子(本土で働くウチナーンチュ労働者)
「日本の中の沖縄」なのか/太田武二(命どぅ宝ネットワーク)
ヤマトの視点で考えている/上原成信(一坪反戦地主会関東ブロック代表)
「平和教育」への違和感/高村文子(那覇市中学校教員)
女たちの闘いがヤマト

前書きなど

 99年11月、沖縄の稲嶺県知事は、アメリカ軍・普天間基地の移設先を名護市辺野古地域とすると発表しました。名護市は、97年に住民投票がおこなわれ「基地NO」の結論を出しました。その民意は無視されています。
 名護市をはじめ沖縄の人々は、この県内移設に反対の声をあげています。しかし日本政府が、基地の見返りとして出資する地域振興策に経済的な望みをつなぐ声も聞かれます。そのいずれもが、深刻な不況の下にある沖縄で発せられている民衆の声だと思います。
 沖縄の独立・自治の主張、日本の「平和憲法」と沖縄の現実との齟齬を批判する声、「日本の中の沖縄」という視点で沖縄を豊にしていきたいという立場など、さまざまです。沖縄の論議は、沖縄と日本の関係を問い直すことを日本の私たちに迫っています。本書では90年代に知事を勤めた大田昌秀さんをはじめ、大学の研究者、沖縄のジャーナリスト、沖縄の自立・独立運動や反戦運動の活動家など、多分野の方が語ります。
 観光地である沖縄は、第二次世界大戦で住民の5人に1人が死亡した島でもあります。日本軍による集団自決の強要なども行われました。戦後、アメリカが沖縄を統治。72年「平和な本土への復帰」以後も、在日米軍の75パーセントが日本の0.6パーセントの面積しかない沖縄にいます。95年には米兵による少女暴行事件が引きおこされました。
 96年に基地整理・縮小の賛否を問う県民投票で、過半数の人が整理・縮小に賛成したとき、大田知事(当時)は言いました。「沖縄が100パーセント基地に反対だったとしても、日本全体から見れば、約1パーセントの人間が反対しているにすぎないことになる。本土の人間が自分のこととして沖縄のことを考えてくれない限り沖縄の基地問題は解決しない」。
 今こそ沖縄の人たちの意見を聞き、考える必要があります。そしてあなたの意見を寄せてください。人権と平和を、すべての人々が享受できる時代がくることを願って本書は出版されました。

著者プロフィール

大田 昌秀(オオタ マサヒデ)

1925年沖縄生まれ。45年、学徒動員で「鉄血勤皇隊」に所属、沖縄戦に銃を執って参加、九死に一生を得る。54年、早稲田大学、56年に米国シラキュース大学大学院終了。社会学(ジャーナリズム)専攻。琉球大学法文学部教授を経て、90年から2期、沖縄県知事となる。大田平和総合研究所を主宰。著書は『沖縄の民衆意識』〔新泉社〕、『沖縄 平和の礎』〔岩波書店〕など多数。

高良 倉吉(タカラ クラヨシ)

1947年沖縄県生まれ。愛知教育大学卒業。93年文学博士号取得〔九州大学〕。琉球大学法文学部教授。専攻は歴史学、琉球史。近著に『アジアのなかの琉球王国』〔吉川弘文館〕、『「沖縄」批判序説』〔ひるぎ社〕など。

喜納 昌吉(キナ ショウキチ)

1948年沖縄生まれ。沖縄を代表するミュージシャン。チャンプルーズをひきいて世界をまたにかけた演奏活動をつづけている。「花」や「すべての武器を楽器に」など数多くの名曲を世に送り、愛と平和世をうったえる。2000年7月沖縄で第4回ニライカナイ祭りを開催予定。著書に『すべての武器を楽器に』〔冒険社〕など。

山内 徳信(ヤマウチ トクシン)

1935年沖縄に生まれる。58年琉球大学文理学部を卒業して高校の社会科教員に。39歳で読谷村長に当選。大田昌秀県政では出納長に就任。97年に完成した村役場は米軍基地の真ん中にたっている。著書に岩波ブックレット『沖縄・読谷村の挑戦』〔共著〕、『叫び訴え続ける基地沖縄』〔那覇出版社〕などがある。

大山 朝常(オオヤマ チョウジョウ)

1901年沖縄生まれ。25年、沖縄県立師範学校卒業。58年から74年までコザ市長(現在の沖縄市)。著書に『沖縄独立宣言』〔現代書林〕、『大山朝常のあしあと』〔うるま通信社〕、『愛ひとすじに─大山光伝』〔共著 上原清善〕など。

新崎 盛暉(アラサキ モリテル)

1936年東京生まれ。61年東京大学文学部卒業。82年に「一坪反戦地主会」を組織。93年から季刊誌『けーし風』編集代表。現在、沖縄大学法経学部教授。『沖縄戦後史』〔共著、岩波新書〕、『沖縄現代史』〔岩波新書〕、『沖縄同時代史』シリーズ〔凱風社、八巻まで刊行〕など著書多数。沖縄・一坪反戦地主会代表世話人。

知花 昌一(チバナ ショウイチ)

1948年沖縄生まれ。沖縄・読谷村にある米軍通信基地「象のオリ」の反戦地主。98年から読谷村議。87年の国体ソフトボール会場に掲げられた日の丸を焼き捨てた事件は有名。著書に『焼きすてられた日の丸』、『燃える沖縄・揺らぐ安保』など。

太田 武二(オオタ タケジ)

1949年沖縄に生まれる。55年に上京。「命どぅ宝ネットワーク」を主宰。反基地運動からミュージック・イベントまで多彩に展開。共著に『琉球弧ものがたり』〔実践社〕

上原 成信 (ウエハラ セイシン)

1927年沖縄に生まれる。旧制中学卒業後、17歳で上京。逓信省

由井 晶子(ユイ アキコ)

1933年沖縄生まれ。55年早稲田大学政治経済学部を卒業し、『沖縄タイムス』東京支社に入社。91年、同・編集局長に。97年から「うないフェスティバル」座長。共著『オキナワ女たちは今』〔ゆいまーるセミナー編、ドメス出版〕など

我部 政明(ガベ マサアキ)

1955年沖縄生まれ。83年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程中退。琉球大学法文学部教授。著書に『ポスト冷戦と沖縄』〔共著、ひるぎ社〕、『日米関係のなかの沖縄』〔三一書房〕など

高良 勉(タカラ ベン)

1949年沖縄島に生まれる。詩人。76年静岡大学理学部を卒業したのち、第一詩集『夢の起源』を発行。詩誌『海流』を主宰している。沖縄自立・独立の運動を担い、近著に『琉球弧(うるま)の発信

小熊 英二(オグマ エイジ)

1962年東京生まれ。1987年東京大学農学部卒業。出版社勤務を経て、98年東京大学教養学部総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在は慶應義塾大学総合政策学部教員。著書に『単一民族神話の起源』〔新曜社〕、『知のモラル』〔共著、東大出版会〕、『〈日本人〉の境界

新川 明(アラカワ アキラ)

1931年沖縄生まれ。55年琉球大学文理学部を中退して沖縄タイムス社に。取締役編集局長、社長、会長をつとめる(95年退社)。著書に『琉球処分以後』〔朝日新聞社〕、『反国家の兇区



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