発行:実践社
この版元の本一覧
四六判 280ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-916043-29-0(4-916043-29-4) C0030
在庫あり
奥付の初版発行年月:1999年05月
書店発売日:1999年05月10日
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紹介
佐々木政憲さん(図書新聞)評
世紀転換期の今日、時代の空気は明らかに市場競争である。経済のみならず、政治までも「市場型国家」を標榜する。そして、社会の原点である暮らしには市場原理が座巻し、人びとは「過剰雇用」と「自己責任」のキャンペーンに脅えている。21世紀には「市場システム」が経済と社会と政治のすべてを覆いつくす。そんな時代の雰囲気に抗して、そうではない別の世界もありうるし、そのための世直しも可能なのだと主張するのは容易なことでない。本書はこの難しい試みに敢えて挑戦しようとする。思わず手にしたくなる表題である。
20世紀の経済成長主義は臨界点に達した。環境は成長を支え切れず、文化も大量消費に背を向け始め、システムは自己否定の様相を帯びてきた。そのことが、一方でグローバルな大競争と市場主導のダウンサイジングを推し進めていると同時に、他方ではこの路線に代わるオルタナティブな社会形成を要請している。このヘゲモニー闘争の中で新しい世直しの構想を練るには、20世紀資本主義の発展過程を大局的に見据えつつ、暮らしの原点に立ち返ることが必要である。これが本書の基本的メッセージである。
本書は、故廣松渉の哲学に学びながら、マルクスの現代的可能性を探ろうとする2人の研究者の共著である。両者とも「物象化」論の視軸で『資本論』を読み、そして現代資本主義の物象化された構造を解き明かしてきた。この視座は本書においても生かされている。
目次
第1部 ダウンサイジングの時代へ 「成長の限界」と世直しの課題/高橋洋児
1.資本主義の今を考える
2.モラル・フィロソフィーをひきつぐ問題意識
3.ネットワーク時代の「世直し」
4.ヴィジョンをどう描くか
5.『市場システムを超えて 「世直し言論」』への補説
第2部 欲望と資本主義 物象化論の視角から/石塚良次
1.再生産される欲望
2.大量消費社会の出現
3.戦争とフォーディズム
4.日本株式会社というシステム
むすびにかえて 討論
第3部 対談:大量消費社会を超えて
前書きなど
時代は目も眩むような速度で流動し続けている。社会主義の崩壊とともに資本主義の勝利が宣言され、「歴史の終焉」が語られたことはまだ記憶に新しい。市場経済の可能性が喧伝され、難題の多くは市場が解決してくれると人々は何の躊躇もなく言いはじめるようになっていた。市場の空にわずかにのこった暗雲はすべて消え去ったかのようであった。他方で、地球環境の危機が叫ばれ、様々な提案が議論された。その場合でも、市場の力を利用する方式こそが実現可能性が高く、したがって優れているとみなされた。市場の問題解決能力の信頼をよせる論者は、人々の自由の障害となる規制の撤廃をいいつのり、グローバルスタンダードに準ぜよと唱和した。すべてはほんの昨日のことであった。 速度に脅迫され異国から資金を引き入れることによる促成栽培式の経済成長を求めた人々もいた。エマージング・マーケットなどと囃された。しかし、駆け足でやってきた資金はふたたび駆け足で逃げ出していった。後に残ったのは踏み荒らされた風景である。
環境と資源を大切にという声さえ、消費不足が不況の原因とされるこの時勢では耳をすまさないと聞き取れないほどである。しかし、消費はそんなに必要なのだろうか。モノであれサービスであれ貨幣を対価として売り買いするということがそれほどに必要なことなのだろうか。貨幣の加速度的な流通を不可避とする経済のシステムそのものに問題があるのではないだろうか。
2001年はミレニウム(千年期)の元年であるなどといったらコミューン主義者の戯言と笑われるかもしれない。だけれどもひたすら地上に満ちあふれることを望んできた社会の転換を構想するということは、歴史をそのぐらいのタイムスパンでみることを要請するのではないだろうか。そこで「2001年の事始め」なのである。
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