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宇宙像の変遷
古代神話からヒッグス粒子まで
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年12月
- 書店発売日
- 2013年12月20日
- 登録日
- 2013年11月27日
- 最終更新日
- 2013年12月13日
書評掲載情報
2014-03-23 | 東京新聞/中日新聞 |
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紹介
天に神々のすがたを探し求めた古代の昔から、ケプラー、ニュートンをへて、アインシュタイン、ホーキング、ヒッグスに至るまで。人類の宇宙探究の全精神史がわかる1冊。
古代以来、時代ごとの技術的・思想的制約を受けながら、私たちはロゴス(理)でコスモス(宇宙)を説明しようとしてきた。その止むことのない探究が、時計を生み、暦を生み、地図や望遠鏡、そして数学や物理学そのものをうみだしてきたのだ。ヒッグス粒子発見の意味まで、人類の壮大な精神史をえがく科学思想史。
目次
まえがき
第一章落下文明と古代の星座
第二章時間計測と暦法の問題
第三章空間認識と地図の発展
第四章プラトンの問い「現象を救え」
第五章二重コスモス像の世界
第六章コペルニスク革命は革命か
第七章ガリレオの望遠鏡と宗教裁判
第八章ケプラーが聴いた天上の音楽
第九章ニュートンのリンゴと万有引力
第十章無限宇宙複数世界論の勝利
第十一章「時の矢」は宇宙の熱死を示すか
第十二章光の宇宙とアインシュタイン
第十三章ハッブルの後退する宇宙
第十四章宇宙探査とΕΤ問題
第十五章ビッグバン後の最新宇宙論
参考文献
あとがき
前書きなど
本書は落下神話に始まる重力の束縛下に、人類が営々と構築してきた宇宙への憧れが結晶となったさまざまな宇宙像の変遷を、科学と人間の目で記述したものである。
二十一世紀以降展開する宇宙植民時代は、無重力を基本とする浮遊文明の時代となる。落下文明から浮遊文明への大転換期において、宇宙像の歴史をしっかりと把握する意義は大きい。
われわれが使う漢字としての「宇宙」も「世界」も、時間空間的総体を表すことは同じである。もともと「宇」と「界」は空間を、「宙」と「世」は時間を指す。ただし古くから中国にあったのは「宇宙」で、「世界」は仏教の伝来とともに造られたという。つまりサンスクリット語のlokaが「世」、dhatuが「界」と訳されて、両者の合成語lokadhatuが「世界」と訳されることになった。したがって「世界」は人間や生き物の存在が前提とされ、いわゆる業が塗り込められている運命的なものを暗示するが、「宇宙」にはそのような存在物と無関係に時間空間的容器としてのイメージがある。宇宙はいやでも醜い現実を光輝で包む想像力の舞台になる運命にあるのである。
古代ギリシアにおいて「コスモス」は調和や秩序を意味していた。無秩序を示す概念は「カオス」である。コスモスが、「万有」や「天」と呼ばれてきた宇宙世界の意味に転用されるようになったのは、ピュタゴラスによるといわれる。
宇宙像の探求、すなわちコスモロジーとは、コスモス(宇宙)のロゴス(理法)を問うことである。当然、コスモロジーの構築は、各時代の知識の制約を負う。フランシス・ベーコンは十七世紀初頭に、人間の正しい認識を制約する四つのイドラ(先入見)について述べている。人間の五官的制約による種族のイドラ、在来の慣習・教育などの制約を指す洞窟のイドラ、既成の思想・学説などに捕われがちな劇場のイドラ、言語上の制約が招く市場のイドラである。
宇宙認識においても、われわれ人類はこういう制約に注意を払い、できれば克服するべく、長い努力を払ってきているが、もっとも克服が難しいのは劇場のイドラであろう。時代制約下にある学問的な知識にもとづいて、コスモロジーは構築するしかないからである。
上記内容は本書刊行時のものです。