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歴史のなかの日本と台湾
東アジアの国際政治と台湾史研究
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年4月
- 書店発売日
- 2014年4月10日
- 登録日
- 2014年3月19日
- 最終更新日
- 2014年4月8日
紹介
近年急速に悪化している東アジアの国際情勢は、これまでの日台友好関係にも重大な影響を及ぼす可能性がある。日台関係の現段階、日本統治下における総督府官僚や指導者階層の実態、台湾人アイデンティティの形成、東アジアにおける戦歿者慰霊問題などを通して、宿命的な政治性と国際性に規定されてきた台湾史研究の課題と展望を模索する。【日台共同研究】
【執筆者(掲載順)】
檜山幸夫 中京大学教授
川島 真 東京大学大学院准教授
駒込 武 京都大学大学院教授
東山京子 中京大学非常勤講師・社会科学研究所特任研究員
鈴木哲造 国立台湾師範大学博士後期課程
呉 文 星 国立台湾師範大学名誉教授
中田敏夫 愛知教育大学教授
林 初 梅 大阪大学大学院准教授
蔡 錦 堂 国立台湾師範大学准教授
本康宏史 金沢星稜大学教授
目次
刊行にあたり 檜山幸夫
第1章 日台関係の現段階
転換期の台湾史研究 檜山幸夫
新時代の日台関係と台湾の日本研究 川島 真
第2章 台湾総督府官僚の統治と秩序
台湾総督府評議会の人的構成 予備的作業報告 駒込 武
台湾の震災と台湾総督府官僚 被災調査報告の共有化と被災記録の伝承 東山京子
日本統治下台湾における医師社会の階層構造と学歴主義 台湾総督府医院勤務医の任用過程を題材として 鈴木哲造
第3章 台湾人アイデンティティと台湾人指導者階層
日本統治下における台湾人社会的リーダー階層の研究について 呉文星
清国人・日本人・中華民国人だった一人の台湾人の記録 準社会的リーダー階層としての存在 中田敏夫
台湾に現れた三つの郷土教育 郷土探し、そして植民地時代の「遺緒」との出会い 林初梅
第4章 東アジアにおける戦歿者慰霊
台湾・日本・中国の「慰霊施設」の研究 蔡錦堂
「軍都」と「植民都市」の慰霊空間 日台の招魂社をめぐる諸問題 本康宏史
◆附録
シンポジウム開催趣意書、シンポジウム・プログラム
前書きなど
本書では一〇本の論文を載せたが、これをもって一つの結論を導き出そうとしたものではない。しかし、一定の方向は示せたと思う。その第一は、台湾史研究という学問領域は、「台湾島」という「島」が抱えている地政学的および歴史的宿命性とにより、強い政治性に縛られているため、「台湾」をめぐる政治的環境の変化によって決定的な影響を受けることになることから、そこでは「学問の自由」を確保していくことが第一義的要件となっていること、第二は、そのためにこそ研究者が流行に追従したり理論に振り舞わされることなく、歴史学の本道である原本史料と根拠資料に基づく実証的研究を積み重ねることによって、科学的で実証主義による鞏固な台湾史学を構築していくこと、第三は、科学の基とも言える原点に立ち返って「なぜ」「なに」から発する問いを基本的な研究姿勢とした研究者を育成していくこと、第四は、「台湾島」という視点と、台湾の主権者たる台湾原住民研究者による「台湾史」が編纂され、ついでそれと合作するかたちで清国植民地時代頃から移民し開墾してきた本省人と呼ばれる漢族系台湾人研究者による「台湾史」が編纂されること、第五は、明清時代から日本時代、中華民国時代という台湾の支配者による時代区分を便宜的に用いるとしても、そこでは前項の視点に立ちながらその全ての時代を一貫した論理のもとで捉える史観を築いていくこと、第六は、そのためにも戦後史を含めた歴史史料を完全・完璧・平等に公開し自由に利用できる研究環境を整備し、それらを国際的観点から保障する環境を築いていくことであろう。いずれにせよ、本書がその第一歩になることを望みたい。
上記内容は本書刊行時のものです。