丸木位里・丸木俊の世界ふたりの画家
本橋 成一:著
発行:オフィスエム この版元の本一覧
B5判 136ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-900918-74-0 (4-900918-74-1) C0072
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年04月 書店発売日:2005年04月05日
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紹介

二人で一つの絵をつくる──「原爆の図」15部作をはじめ、南京、アウシュビッツ、水俣、長崎など数多くの大作で知られる画家、丸木位里・俊夫妻。その創作現場を写真家が丹念に追い、二人の豊かな語りとともに構成した写真録。戦後60年にあたり晶文社刊行版。(1987年初版)をリニューアル出版。

目次

絵以外にやりようがないんじゃ
●創作意欲は老いてなお盛んだ
 奥の細道/鮎/少年時代/母/宮本武蔵/絵描き/丸木美術館

ずいぶん人が来るよのう
●いのち溢れる村の暮らし
 酒とタバコ/梅干しの種/犬の死/猫物語

●5月5日開館記念日、8月6日とうろう流し
 臥竜展/高張提灯/征露丸/女たち/上も下もない国/演説1/演説2/頑張り

おかしい絵がおかしいほど面白い
●臥竜展、人人展、個展
 地獄極楽/こりゃさの文明/沖縄・読谷村

誰が描いてもええ
●終わりのない旅、いま沖縄へ

丸木位里・丸木俊 略年譜
あとがき

前書きなど

あとがき/本橋成一

 八四年の春頃だったと思う。夜おそく電話がかかってきた。「本橋さんと一緒にやりたいことがあるから、いま新宿だけど、すぐ話しに行く」  電話の主は西山正啓さん。土本典昭監督のもと『水俣の図・物語』の制作に携わった西山さんは、丸木位里・俊夫妻にぞっこんだった。思い立ったら矢も盾もいられない性格の人だから、突然の電話にも驚きはしない。丸木美術館のスライドをつくりたい、と西山さんは熱っぽく語った。鞄の中は資料でいっぱいだった。夜明けまでひとりで喋り「……だから本橋さん、やりましょう」と言いおいて、帰っていった。「……だから」がぼくにはまだピンとこなかったけど、なぜか、ぼくの中にあった「原爆の図」がそのとき急に身近かなものになった。
 ぼくが「原爆の図」をはじめて見たのは高校一年のときだった。新聞の小さな写真だ。ぼくはそのときの強烈な印象を今でも憶えている。それは、原爆の恐ろしさとか残酷さとはべつに、ぼくが五歳のときの東京空襲の記憶を呼び起こしたからだった。びしゃびしゃになるまでドブ水に浸けた防空頭巾をかぶせられ、フェーン現象で真紅に染まった空の下、母に手をひかれ、泣くことも忘れて熱風と火の中を逃げまどった、あの恐ろしい想い出そのものだった。
 スライド『ひろしまを見たひと』の制作はその年の暮からはじまった。ロケハンから照明、撮影、編集、音入れまで、映画をつくるのと同じ手間ひまをかけた作品づくりだった。ぼくは土本典昭監督が綿密に切り取ったコンテにそって、正確に撮影した。それは、土本監督の丸木位里さん、俊さんにたいする想いの切り抜きであった。ぼくにとっては贅沢な仕事になった。三五ミリカメラのファインダーからのぞいたどの絵のどの細部からも、高校生のときと同じように、ぼく自身の空襲体験が甦ってくるのだった。
 どうしてこんなに見る人の想像力をかきたてる絵なのだろうか。ぼくはますますふたりの画家が気になりだした。スライドが完成してすぐに、今度はぼくから西山さんを誘い、ふたりで 丸木通い がはじまった。どんな所でどんなものを食べ、どんな話をしているのか。そして、どのようにして絵を描いているのか。「反戦画家」として知られている丸木位里・丸木俊ではなく、さらにその奥に広がる位里さん、俊さんの世界を知りたかったのだ。
 ここに一冊の写真録としてまとまった今も、その興味はつきない。ふたりの画家、丸木位里さん、俊さんは、つねに自分のことばで語る。みずからの生きかたで語る人間なのだ。だからこそ、ふたりが描く絵には説得力がある。ホンモノの絵を描く画家なのだ。
 高校生のときに切り抜いたあの新聞の写真は、今でも二十年前に買い求めた田園書房刊の『原爆の図』の画集にはさんである。
─────1987年4月3日

 今年は、敗戦60周年を迎える。しかし、世界では相変わらず戦争が頻発し、止む気配はない。なによりも戦争を放棄したはずの日本も怪しくなってきた。
 この写真録が出版されて20年が経とうとしている。しかし、丸木位里、丸木俊のおふたりはもういない。いまぼくたちは、何を思い、何を考え、何をするべきか。おふたりの作品はそれを語り続けている。
 戦争が核兵器が、そして原発が、いかにこの地球上で愚行なことか、この写真録からもおふたりの想いにつなげられたらと思う。
 この度、多くの方々のご尽力により、この写真録が再び出版されたことを感謝しつつ。
─────2005年4月3日

版元から一言

2005年は、丸木位里さん没後10年、丸木俊さん没後5年、そして敗戦から60年にあたります。丸木夫妻の作品を所蔵する「原爆の図丸木美術館」「佐喜眞美術館」をはじめ、多くの方々ご協力により、節目の年にリニューアル出版ができることになりました。丸木夫妻がなぜ「反戦画家」と呼ばれるのか、いまこそ私たちが受け止めなければならないメッセージが、この本に詰まっています。

関連リンク

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著者プロフィール

本橋 成一(モトハシ セイイチ)

●東京生まれ。自由学園卒業。一九六八年写真集「炭鉱〈ヤマ〉」で第五回太陽賞受賞。以後、サーカス、上野駅、築地魚河岸、大衆芸能など、市井の人々の生きざまを撮り続ける。九一年からチェルノブイリ原発とその被災地ベラルーシに通い始め、九五年「無限抱擁」で日本写真協会年度賞、写真の会賞受賞。九八年「ナージャの村」で第一七回土門拳賞受賞。監督として映画『ナージャの村』『アレクセイと泉』を手掛け、ベルリン国際映画祭ベルリナー賞・シネクラブ賞受賞、サンクトペテルブルグ映画祭グランプリなど、国内外で高い評価を得る。
●おもな写真集
1968年 「炭鉱〈ヤマ〉」現代書館刊
1980年 「サーカスの時間」筑摩書房刊
1983年 「上野駅の幕間」現代書館刊
1987年 「ふたりの画家」(丸木位里・俊)晶文社刊
1988年 「魚河岸 ひとの町」晶文社刊
1989年 「サーカスが来る日」リブロポート刊
1990年 「老人と海」朝日新聞社刊
1993年 「砂の旅人」(立松和平共著)駸々堂刊
1993年 「チェルノブイリからの風」影書房刊
1993年 「サーカスの詩」(ベンポスタ)影書房刊
1994年 「無限抱擁」リトル・モア刊
1998年 「ナージャの村」平凡社刊
2000年 「ナージャ 希望の村」学習研究社刊
2002年 「アレクセイと泉」小学館刊
2003年 「イラクの小さな橋を渡って」光文社刊
2004年 「アレクセイと泉のはなし」アリス館刊
「生命の旋律〜本橋成一が撮る人間の生き様集〜」毎日新聞社刊

上記内容は本書刊行時のものです。
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