生きる力を育む 幼児のための柳沢運動プログラム
柳沢 秋孝
発行:オフィスエム
この版元の本一覧
B5判 112ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-900918-54-2(4-900918-54-7) C3075
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年08月
書店発売日:2002年08月03日
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紹介

“幼児期の全身運動が脳を育て心を育てる”

子どもを取りまく環境の変化は、子どもから「活発に遊ぶ力」や「目の輝き」をうばおうとしています。
──どうしたら子どもの「生きる力」を育てていけるでしょう。──
「運動保育援助プログラム」は、25年にわたる幼児運動学の研究から生み出されました。発達段階に合わせた運動で、こころとからだ、そして脳のはたらきまで活発にできることが、科学的な調査の中で明らかになってきました。いきいきと楽しく、自分の力で生きていける人間を育むために、今、幼児教育の分野で、このプログラムが注目されています。
本書は、「運動保育援助プログラム」を保育の現場に生かしていくための実践テキストです。

目次

はじめに●子どもたちの目に、もう一度輝きを!

「柳澤プログラム」で子どもたちの「生きる力」を育てよう
◇子どもの心を知りたい…そして出会った脳科学
◆日本の子どもの脳が変わった。その原因はどこにある?!
◇テレビゲームではからだも心も育たない
◆どうしたら運動好きな子どもになるのだろう
◇みんなが運動好きになる「魔法のプログラム」をめざして
◆「柳澤プログラム」で子どもの脳が変わりはじめた
◇脳のつながりは8歳までに90%がつくられる
◆幼児期の全身運動が脳を育て心を育てる
◇昔は自然に身についた力、今は援助がなければ育たない
◆全身を使ってあそべるように動けるからだを作ってあげよう
◇できるようになるためには体系的に運動をすること
◆日常生活のなかでは身につかない協応運動
◇運動が好きな子どもに育てたい
◆最終目標は「みんなができる」こと
◇基本は跳躍・支持・懸垂運動
◆気がついたらできちゃった
◇できない子ほど輝きたい
◆正面から子どもの不安を受け止めよう

やってみよう!みんなができる魔法のプログラム
★柳澤プログラム見通し表
[基礎運動1]跳躍運動
●準備運動としても使える動物になりきったジャンプあそび
幼児のジャンプがドタバタ跳びなのはなぜ?
大臀筋を使って糊づけジャンプ
リズミカルなジャンプはなわ跳びの前段階
模倣あそび、リトミック…いつもの運動に取り入れて
[基礎運動2]支持運動
●跳び箱や鉄棒など、器械運動のベースになる力を育てよう
現代っ子にもっとも足りない力
赤ちゃんはハイハイで支持力を育てている
ステップが上がるほど腕にかかる力が大きくなる
「大きなカエルさん」ができると跳び箱はすぐ跳べる
★基本運動の指導のポイント
[基礎運動3]懸垂運動
●握力と腕力を育て、鉄棒の基礎を身につける
固定遊具であそぶ子が少なくなっている
「よじ登る」「ぶら下がる」ことの意味
子どもこそ「ぶら下がり」が大切
[器械運動1]マット運動
●支持力と回転感覚を養い、前転・側転の基礎をつくる
回転感覚を身につけるとジェットコースターも怖くない
「ゆりかご」ができれば前転までもうひと息
あごを開いて横回転・側転の感覚をつかもう
支持力と回転感覚が身につくと無理なく側転ができる
★器械運動に移る前に
[器械運動2]なわ跳び
●発育に合わせて指導すると、年長で短なわ跳びもできる
なわ跳びの動作を分析すると
初めてなわを見る子も…。まずは慣れることから始めよう
なわに高さが出てくる 正確なジャンプで跳び越えよう
ゲーム感覚で楽しみながら跳び越える運動のまとめ
なわの動きをとらえてジャンプするステップへ
長なわ跳びができると遊びの世界が広がってくる
短なわの前に長なわ大波跳び
短なわ跳びはなわ跳びの総仕上げ
★なわ跳びの指導のポイント
[器械運動3]跳び箱
●跳躍・支持運動の積み重ねで誰もが跳べるようになる
跳び箱が跳べると生活にも大きな自信が出てくる
年少・年中で基礎力をしっかり身につける
床上のカエルができれば跳び箱が跳べる
自然にできる開脚跳び越し
★跳び箱の安全確保のために
[器械運動4]鉄棒
●苦手意識が芽生える前に、逆上がりを身につけておく
いろいろな力が必要な鉄棒運動
まずは支持力と懸垂力を使った「すずめさん」
逆さ感覚が身につくと鉄棒への怖さがなくなる
鉄棒運動の基本は「逆上がり」より「足かけ振り上がり」
★鉄棒運動の指導のポイント

実践事例
プログラムにひと工夫 子どもたちといっしょにつくった運動遊び
★ある保育園の運動遊び見通し表
●サイコロゲームをしよう!(年少)
●動物村の運動会(年中)
●冒険島であそぼう!(年長)

前書きなど

●はじめに
子どもたちの目に、もう一度輝きを!

 最近、幼稚園・保育園で、「どうも子どもたちのようすがおかしい」という声が聞かれます。では、何がおかしいのか。そのことを現場の保育士さんたちにうかがってみると、「朝から眠そうにあくびばかりしていて、積極的にあそぼうとしない」「精神的にイライラしているように見え、全体におちつきがない」など、以前では考えられなかった不可解な子どもたちが増えているようなのです。
 これらの現場の先生たちが肌で感じた「不可解さ」は、これまでは見られなかった現象だけに「どうしたらいいのかわからない」という戸惑いとなって、幼児教育の現場に重くのしかかってきているようです。
 そんななか、柳沢先生のプログラムを取り入れた園がいくつかありました。いずれも、現場の先生方の直観で、柳沢先生を訪ねてこられたケースですが、驚くような成果を上げているのです。
 最初は、落ち着きもなく、積極的にあそぶこともできなかった子どもたちが、半年、1年と「柳沢プログラム」を実践しているうちに、どんどん体を動かしてあそべるようになり、集中力が出て、思いやりの心が自然に育ち、仲間とコミュニケーションができる子どもに変わっていきました。
 これには、現場の先生たちもびっくりしています。
 長野県の諏訪湖のほとりにある下諏訪町では、全保育園で柳沢プログラムを実践しました。その子どもたちが小学校に入学したとき、小学校の先生方から「この学年は、何か特別なことをしたのですか」と尋ねられたそうですが、2年生・3年生でも、なかなか集中して話を聞けなかったり、落ち着きがなくそわそわしているのに対して、新入生の1年生は、入学したばかりにもかかわらず、整然としていて姿勢がよく、人の話を食い入るような集中力で聞く姿があるというのです。
 園でも、以前なら整列することもできないほどバラバラだった子どもたちが、半年もたたないうちに「並ぶよ」と声をかけると、サッと並べるようになったり、防火訓練のとき消防署の方の難しいお話を最後まで集中して聞いていて列席の大人たちがびっくりするなど、見る間に変わっていく子どもたちの姿がありました。
 いっせいに庭に飛び出してあそぶ子どもたちの姿ももどってきました。
 ウサギのエサも、もう教えなくても年長さんが上手に包丁を使って草を切り、それを見て年中さんも自分から包丁を使えるようになりました。できない子にはできる子が教える。できない子も一生懸命に努力する。そんな「つながり」も芽生えてきました。
 「先生、がんばるって楽しいね」と子どもたちに言われたときには、先生のほうがびっくりして呆気にとられてしまったそうです この変化はいったい、何なのでしょうか。
 よく、とろんとしてやる気のない表情を「サンマの腐った目」などと言いますが、「柳沢プログラム」で運動をしているとき、子どもたちの目は、水を得た魚のようにキラキラと輝いています。「子どもたちの目が輝いているとき、前頭葉が活発に動いているんですよ」と柳沢先生が解説してくれたことがありました。
 また、「子どもたちがテレビゲームに夢中になるのは、おもしろいからなんですよ。でも、自分の体を使って、自分の力であそぶおもしろさを覚えたら、絶対に外であそぶ方がおもしろいに決まっているんです」とおっしゃたことも忘れられません。
 私たち大人は、「危ないから」とか「迷惑をかけるから」といった理由から、子どもたちが体を使って自由にあそぶ機会を奪ってきてしまったようです。木登りも、鬼ごっこも、缶けりも、ゴム跳びも、川あそびも、雪合戦も、影踏みも、もうやっている子を見かけなくなりました。その結果、子どもたちは「あそぶ力」を失い、「生きる力」を失い、とろんとした目の、いつもイライラした、疲れた子どもになってしまったのかもしれません。疲れて、生きる力を失った子どもたちに、いくら「しっかり集中しなさい」「人にやさしくしなさい」「勉強しなさい」と言ったところで無理なことです。
 集中しようと思ったら集中していられるからだ、きちんと座っていられるからだ、友だちを思いやれるからだを育ててあげることが、幼児期の子どもにとっていかに大切なことか、私たちは「柳沢プログラム」の実践を見ながら感じました。
 子どもは誰も、その小さなからだと頭のなかに、「生きる力」を秘めています。その力を引き出してあげられるかどうかは大人の責任なのではないでしょうか。
 2年間「柳沢プログラム」を実践した保育園の子どもたちに最後の授業をしたとき、柳沢先生は子どもたちにある質問をしてみたそうです。「テレビゲームよりお外であそぶのが好きな人、手をあげて」とたずねると「は〜い」と元気な返事が返ってきました。ほとんどの子どもが目を輝かせて、手をあげたそうです。このときほどうれしかったことはない、と先生は顔をくしゃくしゃにして喜んでいました。
 子どもが輝やいているとき、大人の目もきっと輝いているのだろうと思います。子どもを考えることは未来を考えること、そして、今の私たちの生き方を見つめ直し、問い直すことなのではないでしょうか。
 「柳沢プログラム」で、まず自ら最初の一歩を歩み出してみましょう。(編集部)

版元から一言

全国の幼稚園・保育園から反響!待望の運動保育プログラムです。
「プログラムを始めて半年で子どもたちが変わりはじめました。生活に落ち着きが出て、外あそびが大好きになったんです。」(M保育園・園長)
「支持力がついてくると、自然にいろんな運動ができるようになって遊びもダイナミックになりました。子どもにも自信が出てきたようです。」(K幼稚園教諭)

関連リンク

版元紹介ページ
共同研究者・寺沢宏次の本
共同研究者・篠原菊紀の本

著者プロフィール

柳沢 秋孝(ヤナギサワ アキタカ)

松本短期大学幼児教育学科教授。信州大学共通教育センター講師。日本体育学会長野支部会理事。
1953年生まれ。日本体育大学体育学部卒業。専門は幼児運動学。25年間継続研究を行い、4,000名以上の子どもたち(幼児期)に運動遊びを直接指導する。5年前から大脳活動、特に前頭葉の研究に着手し、「運動が子どもの精神的発育に大きな影響を及ぼす」との仮説から保育現場における運動保育援助の効果を調査・研究中。

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