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トートーメーの民俗学講座 波平 エリ子(著) - ボーダーインク
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トートーメーの民俗学講座 (トートーメーノミンゾクガクコウザ) 沖縄の門中と位牌祭祀 (オキナワノモンチュウトイハイサイシ)

社会一般
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四六判
224ページ
並製
定価 1,600円+税
ISBN
978-4-89982-194-6   COPY
ISBN 13
9784899821946   COPY
ISBN 10h
4-89982-194-8   COPY
ISBN 10
4899821948   COPY
出版者記号
89982   COPY
Cコード
C0039  
0:一般 0:単行本 39:民族・風習
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2010年12月
書店発売日
登録日
2011年1月17日
最終更新日
2011年1月17日
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紹介

今の沖縄の暮らしの中のしきたりや慣習を民俗学的視点で読み解く。日常生活で普通に使われるトートーメー、門中、シジ、ムートゥヤー、預かり位牌などについてもわかりやすく解説。トートーメーはお位牌のことで、その歴史や慣習、タブー、そしてこれからの位牌継承についても提言する。

目次

第一章 村の聖地はどこにあるのか
村とムラ/ムラの聖地・御嶽/沖縄の墓の変遷/御嶽の神/御嶽の数/御嶽のイビ/木を切ってはいけない/鳥居のある御嶽 /トゥンと神アサギ/ムラの「カー(井泉)」/ビンシーとヒラウコー/御嶽は集落のどこにあるか/名城の旧家と分家/北側が優位/屋号からみる「北」

第二章 生活空間と方角
家の向きと出入り/家の間取り/外見は洋風でも/逆構えの家/一番座と二番座/一番座では/家の中の神様 /仏壇という空間/亡くなった人の枕の向きは/出棺はどこから/沖縄の綱引き/真栄里の綱引き/西と東の勝敗/見えてくる東西の観念 

第三章 門中の人々
「チー」とは /「シジ」とは/娘のシジ/門中行事で門中意識/北部の女性たち/系図座の始まり/士族の筋目/「門中」という言葉/門中制と家譜/現在の系図作り/中国名の理由/中国的な姓の便利さ/名乗り頭/門中墓/墓をノック/門中の年中行事/門中のつながり
  
第四章 トートーメーについて
位牌祭祀の受容/お寺での先祖供養/位牌が語る歴史/位牌(トートーメー)について/位牌の種類/位牌札と並び/位牌札の不規則な配列/地方役人と農民/位牌の裏書きの見方/

第五章 位牌継承と禁忌
  長男による継承/海外からの位牌継承者/理想的養子 
⑴タチイマジクイ  同じシジで代々継承/同じシジの人を捜す
⑵チャッチウシクミ 長男以外の継承/ 是正の方法/チャクシウシクミ(例2)
⑶チョーデーカサバイ 兄と弟を一緒に祀る/預かり位牌 
⑷イナググヮンス 女性の初代元祖/グソーニービチとは/遺骨を移す/
引き取り手のない位牌
第六章 これからの位牌継承
門中化現象/王府時代の位牌祭祀/明治時代の旧慣存続/『シマの話』に見る位牌継承/禁忌のゆるやかな解釈/ウヤヌフチュクルとは?/「トートーメー問題」/家族構成の変化/地縁社会の変化/世代ごとの継承意識/

参考文献
おわりに

前書きなど

はじめに

私はここ数年、沖縄県の地方自治体やその他の組織の主催する市民講座等において、沖縄の民俗に関連する講座を担当する機会が幾度かありました。本書は、そのなかの二つの講座、那覇市立繁多川公民館での成人講座「沖縄の村落と位牌祭祀」と桜坂市民大学講座「トートーメー講座」で、お話しをした内容をもとにまとめたものです。
二つの講座は、沖縄のムラやそれを構成する門中、門中を構成する家とその祖先祭祀、そして位牌祭祀の継承を中心とした祖先祭祀の慣行といったことが主なテーマで、内容的には大きく重なるものでした。また、とり上げたテーマの内容はいずれも私たちが日常生活の中で普通に体験する事や見聞する事柄について、私の専門分野である民俗学の立場から説明したものと言えます。どこまで受講生に興味を持って頂けるか、講座が始まるまでは一抹の不安もありましたが、幸いにも多くの方々に最後まで熱心に聞いて頂き、受講生からの質問で講座の時間が超過するということも多々ありました。
以前から、このような講座を行うたびに、受講生から参考となる分かりやすい本はないかとの質問を受けたり、講座終了後に、本にまとめてほしいと声をかけていただくことがありました。そこで、この二つの講座については毎回の内容を録音して、それをもとにして、加筆修正を施して一冊の本にまとめたのが、本書です。
本書は、右のような成立の経緯から、本文中でも民俗学の専門用語にあまりこだわることなく、出来るだけ分かりやすい話し言葉で沖縄の民俗について紹介することを目的としています。本書のタイトルにも「トートーメー(位牌)」という一般的に使われている言葉をあえて使いました。そのように沖縄の日常生活で体験したり見聞したりする慣習やしきたりについて、その中で生活する人々の視点や言葉を大切にしながら述べていますが、それと同時に、関連する先行研究の成果を踏まえ、出来るだけ正確で客観的になるように心掛けたつもりです。しかし、啓蒙書としての性格から、それらの先行研究や参考にした学述論文等については、文中には注を付して掲げることはせず、巻末に参考文献一覧として掲載いたしました。
私はこれまで、多くの市町村史の民俗編、なかでも家族・親族や祖先祭祀について調査執筆を担当してきました。直接調査した地域は限られていますが、その多くが沖縄本島中南部所在の市町村でした。これらの地域は沖縄のなかでも門中制やそれと結びついた位牌祭祀の慣行が早くから発達したとされる地域で、私にとってはそこの各市町村を数多く調査できたことは貴重な経験となっており、その成果が本書でも生かされています。ここで逐一お名前を挙げることはできませんが、本書のテーマに関連してこれまでご教授を頂いた先学の皆様や、これらの調査に協力して頂いた多くの方々に心から感謝いたします。
本書が、沖縄の民俗文化に関心を抱く方々に入門書としてお役に立てれば幸いです。

著者プロフィール

波平 エリ子  (

波平 エリ子(なみひら えりこ)
1958年、沖縄県那覇市生まれ。成城大学大学院博士前期課程(日本常民文化専攻)修了。現在、沖縄大学・沖縄国際大学非常勤講師。日本民俗学会・日本民具学会・沖縄民俗学会会員。

主な著書・論文
『おきなわ軽便鉄道マップ』(ボーダーインク、2008年)、「沖縄県の高齢者福祉施設における回想法の取り組みについて―民俗学の視点から―」『地域研究』(沖縄大学地域研究所発行、№3、2007年)、「親族と女性たち」『なは・女のあしあと(前近代編)』(琉球新報社、2001年)「民間巫者と門中化との関係をめぐる一考察」『沖縄の宗教と民俗』(第一書房、1998年)

上記内容は本書刊行時のものです。