普久原恒勇が語る沖縄・島の音と光芭蕉布
磯田健一郎:編著, 普久原恒勇:編著
発行:ボーダーインク この版元の本一覧
A5判変型 160ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-89982-159-5 C0073
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年07月 書店発売日:2009年08月03日
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紹介

●本書は沖縄を代表するレコーディング・プロデューサー、作曲家である普久原恒勇氏へのロング・インタビューをまとめたものです。インタビューは2008年10月から2009年4月まで、面談のみならず電話、ファックス、電子メールをも使用して断続的に行われました。
 全体の構成としては、まず音楽家としての半生を語る第一章と「音楽家よりも写真家になりたかった」という写真への思いを語る第二章で表現者としての普久原氏の人間像を要約し、その後音楽家との交流を語る第三章、音楽観と作品を語る第四章と続きます。どこからでも入ることができますが、この順にお読み頂ければどなたでも違和感なくさまざまな普久原氏の表情にお会い頂けるのではないかと考えております。
 また、グラビアページには写真家としての普久原恒勇氏の作品を掲載しました。「わたしの写真はレコード・ジャケットで使用することを念頭に置いて、文字を載せる空間を空けたフレーミングにしたカットが多く、一枚で完結できる作品となったものは少ない」と氏は語られますが、沖縄の風土と自然を愛した写真家としてのまなざしを十二分に感じ取れるものと思っています。ことばとともにそのまなざしからも人間・普久原氏の横顔を読み取っていただければ幸いです。

目次

● カラーグラビア 8P 撮影:普久原恒勇 沖縄の自然と風土を中心に

●序 透明なるものへ
● はじめに

●第一章 録るひと ~プロデューサー・作曲家 普久原恒勇
 1 【少年時代】
 2 【大阪時代】
 3 【帰沖後】
 4 【制作活動へ】
 5 【作曲活動へ】

●第二章 撮るひと ~フォトグラファー 普久原恒勇
 1 【少年時代 ~父のカメラを持つ子ども~】
 2 【大阪時代 ~島へ向かうレンズ~】
 3 【帰沖後 ~沖縄の美とともに~】
 4 【敬愛するカメラマンたち】

●第三章 音楽とひと
 1 【歌い手と】
 2 【アレンジャー、バンドマンと】

●第四章 音楽を語る
 1 【西洋の音、沖縄の音】
 2 【自作を巡って ~歌の系譜~】
 3 【自作を巡って ~器楽の系譜~】

●結び 揺らぎゆくものへ
●あとがき
● 普久原恒勇 略年譜

前書きなど

(第三章 音楽とひと より 嘉手苅林昌について)
普久原:嘉手苅林昌の最たる魅力というのは、歌詞を、何を歌いだすかわからないというところです。ほとんど即興に近いような、素晴らしい歌詞が出てきますね。特に《ナークニー》とか、《ヒンスー尾類小》、《手間当》。これらは見事な歌唱です。わたしどものCDに残っておりますが、抜群のフィーリングです。《ナークニー》などはどんな歌詞を歌ってもいい。録音の前に彼は鉛筆を持って紙に歌詞を書こうとしていたんですが、何を歌っていいかわからず結局書けなかったんです。十分ぐらい考えていたけれど、歌詞が出ない。やはり三線を弾いて歌わないと出てこない人なんですよ。実に不思議ですね、書かないほうが歌いやすいなんて。普通は忘れるからカンニングペーパーを置いて歌うものなんです。彼は逆。何もないほうが歌いやすい。
 さらに注目すべきなのは、彼の声の質。図太い声ですね。美声ではありません。どちらかといえば悪声のほうに入る、かさついたような、ぬけない声ですけれども。彼の豪快なファルセットと力強いフィーリング、群を抜いていますよ。こうした部分にわたしはほれまして、これは絶対に残すべき人だと思ったんです。戦後の筆頭でしょう、嘉手苅という人は。ほかの人が持ってないものを持ってる人ですね。

(第四章 音楽を語る より 《芭蕉布》について)
普久原:これは重複するかも知れませんが、わたしはすでにあるもの、もう当たり前になっているようなものを作ることに非常に抵抗がある。今までになかったものを考えるのが創作する人間の目標じゃないかと思っています。かつてなかった実験的な作品ですね。沖縄にワルツはないわけです。だいたい四拍子。まあメロディが四分の四、リズムが四分の五という伊是名の「ティルクグチ」や、メロディが四分の四、リズムが四分の七という宮古の「クイチャー」。こういう不思議な例はありますが、四分の三というのはない。
 本来人間は三拍子では不自然なんですね。息だってしにくいでしょう。三拍子で息してごらんと言われたらできないですよね。スーハッハッ、スーハッハッ、苦しいね(笑)。四拍子が自然であり三拍子は不自然ではあるわけです。まあヨハン・シュトラウスが一番不自然な作曲家ということになりましょうか(笑)。その不自然さの中に美しさもあるわけですが。
 なぜ《芭蕉布》が三拍子か。それは沖縄に三拍子がなかったから。ただそれだけです。

版元から一言

沖縄の偉大な作曲家の、初めての本です。
戦後沖縄音楽のパイオニアの一言ひとことは、沖縄音楽を愛する人たちだけではなくて、沖縄の文化を愛する全ての人に手にとって欲しい一冊です。

著者プロフィール

磯田健一郎(イソダケンイチロウ)

音楽プロデューサー。ロックから民族音楽、クラシックまでジャンル横断的な制作活動を行う。主なプロデュース作品に芸術祭賞受賞アルバム『トーンプレロマス55』、普久原恒勇『史曲《尚円》』など。映画『ナビィの恋』では音楽監督を担当し第55回毎日映画コンクール音楽賞を受賞。自らのユニット・といぼっくすでは細野晴臣と共演したアルバムが話題を呼んだ。著書に『近代・現代フランス音楽入門』他。
http://toy-box.jp/

上記内容は本書刊行時のものです。

普久原恒勇(フクハラツネオ)

作曲家、レコーディング・プロデューサー。
《芭蕉布》《肝がなさ節》をはじめとする沖縄スタンダードソングの傑作群は「普久原メロディー」として沖縄人の生活・風景になくてはならない存在。その創作意欲は歌のみならず琉球民族楽器による器楽・管弦楽という前人未到の分野の開拓にまで及び、作品数は400曲以上。名実ともに沖縄戦後最大の作曲家である。プロデューサーとしては沖縄を代表するレーベル、マルフクレコードでその手腕を発揮。嘉手苅林昌らの決定的名盤を制作する一方、幅広い音楽的素養を活かし沖縄音楽に新たなサウンドを導入。今日の沖縄音楽隆盛の基礎を築いたパイオニアとなった。

上記内容は本書刊行時のものです。
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