ソテツは恩人 奄美のくらし
盛口 満:編, 安渓 貴子:編
シリーズ・叢書「聞き書き・島の生活誌」の本一覧
発行:ボーダーインク この版元の本一覧
A5判 109ページ 並製
定価:1,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-89982-153-3 C0339
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年02月 書店発売日:2009年02月25日
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紹介

本巻では奄美の自然に根ざした村々のくらしについて奄美大島と請島、加計呂麻島での計8か所の聞き書きをまとめたブックレット。畑作と稲作についての話、島の自然が変貌して行くようす、炭焼きの話、海人の話、くらしの中でソテツがいかに重要で、どのように食べられていたかなど、忘れてはいけない自然と人間の関わりが淡々と語られている。

目次

第1章 瀬戸内町清水・畑仕事が人生だから
田んぼの肥料/ソテツは恩人/二期作の話/さまざまな植物利用/イノブタを最初に作った話/シマの死者の数/座っておっても畑はできる

第2章 瀬戸内町蘇刈・島に田んぼのあったころ
蘇刈に田んぼのあったころ/ソテツの葉の痛み/田んぼの溝にいた生き物たち/田植えのふるまい/稲作と行事/畑と家畜のこと/ワラビナカシと呼ばれたカズラ/シイの実と流木の利用

第3章 瀬戸内町嘉鉄・夏のウナギ捕りは楽しかった 
ソテツの葉の記憶/ウナギ捕りは夏の楽しみ/田んぼの周辺/竹山も重要だった/家畜のこと/村は森みたいだった/まるで浦島太郎のよう

第4章 瀬戸内町瀬相・住民の足を守り続けて
アメリカ生まれの変な外人です/地域の足としてバスを走らせ続ける/ 加計呂麻島に住んで二七年/歴史の香る加計呂麻の魅力/ケンムンと出会った話/最重要軍事基地だった加計呂麻島/ハブに打たれる/島づたい観光の提唱/島をよくするために

第5章 瀬戸内町請阿室・請島での炭焼きと山仕事
炭焼きの木を切る/人を雇って一年中炭を焼いた/塩炊きにも木を使う/パルプはもっぱらマツの木だった/段畑にサトウキビを作った

第6章 大和村・サンゴ礁の漁を語る 
山から海まで/ハマからスニウトゥシまで/チョウセンサザエ、タカセガイ、ヤコウガイ/冬と夏のタコ/スズメダイの網漁/スジアラとミナミイスズミの銛漁/タコ穴について/タコを釣る /漁業資源の減少/山が深ければ海の資源も豊富 

第7章 大和村戸円・ソテツを発酵させて食べる 
ソテツ澱粉の取り方/ソテツ料理のいろいろ/男ソテツと女ソテツ/

第8章 奄美市根瀬部・空襲前後のくらし 
高精細空中写真の衝撃/当時の畑仕事/ソテツの利用/山の利用/根瀬部は半農半漁/根瀬部のおいしいもの

前書きなど

はじめに

 いま、温暖化や生物の絶滅などの地球環境問題が大きく取り上げられています。解決の手がかりはどこにあるのでしょうか。これらは、自然科学の専門家にまかせておけばすむことではなく、私たちの暮らし方という人類の文化そのものから起こってくる問題だったのです。そうであれば、答えは足下にあるはずです。

 黒潮洗う島々の、世界的にも貴重な自然と文化の多様性に魅せられた私たちは、地域のみなさんからたくさんのお話をうかがいました。島の歴史や、さまざまな伝承と暮らしの知恵の数々……。そうした宝物を、読みやすい「聞き書き」の形で島々と地球の未来をになう世代に届けたい、というのがこのブックレットを編んだ私たちの願いです。

 この小さな試みが、文科・理科のわくをとりはらい、調査する側・される側の敷居を超えて、自然と共存して生きてきた人々の知恵をみんなで学びなおすためのきっかけのひとつになれば、これほどうれしいことはありません。

 奄美の島々からは、奄美大島とその南に接する加計呂麻島と請島を取り上げました。瀬戸内町での語りから、畑作と今はほとんど失われた稲作についてのお話を中心に、驚くほど豊かだった島の自然が変貌していくようすが語られます。その変化の速さは、一五年島外に出て戻ってみたら「まるで浦島太郎のよう」だったと表現されています。加計呂麻バスの二七年という語りと、請島の炭焼きのお話に引き続き、大和村の海人の知識、ソテツの食べ方と続きます。最後は、空襲の直前に撮影された、一軒一軒の家が写った空中写真をかこんで、奄美市根瀬部のみなさんが当時の暮らしを熱く語る座談会の記録です。

 本巻のタイトルは、とうていひとくくりにはできないほど大きな多様性をもつ、奄美の村々の暮らしに共通する、ソテツの大切さを示す表現を、冒頭の里力さんの言葉からいただきました。里さんは、いまもはだしで畑仕事をしながら「贅沢な世の中、これ以上ひらけてはいかんのじゃないか? 宇宙まで行かんでも、そこらに荒れている畑、いっぱいある」とおっしゃっています。

 総合地球環境学研究所(地球研)の支援を得て「聞き書き・島の生活誌」シリーズとして同時に刊行される『野山がコンビニ 沖縄島のくらし』もご愛読くだされば幸いです。

 お世話になった島の方々に感謝いたします。


版元から一言

戦前・戦後の島のくらしを聞き書きでまとめたブックレット第二弾。私たちの暮らし方から人と自然について学び、地球環境問題をとらえるシリーズ。従来の生活聞き書きと違い「理科系のミンゾク学」と言うように聞き手も人間だけでなく動物や植物、サンゴの専門家などさまざま。第二弾のタイトル「ソテツは恩人」は人びとのくソテツの大切を示す表現ですらしを支えてきた。地図や写真入りでやさしく読める一冊。

関連書

『野山がコンビニ 沖縄島のくらし』

著者プロフィール

盛口 満(モリグチ ミツル)

千葉県生まれ。博物屋。沖縄大学教員。主な著作に『生き物屋図鑑』(木魂社)『ゲッチョセンセのおもしろ博物学』(ボーダーインク)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

安渓 貴子(アンケイ タカコ)

愛知県生まれ。山口大学非常勤教員。植物屋。主な著作に『森の人との対話――熱帯アフリカ・ソンゴーラ人の暮らしの植物誌』(東京外語大AA研)など。

上記内容は本書刊行時のものです。
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