発行:日本林業調査会
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A5判 348ページ 並製
定価:2,190円+税 総額を計算する
ISBN978-4-88965-145-4(4-88965-145-4) C0061
奥付の初版発行年月:2003年12月
書店発売日:2003年12月25日
紹介
新たな森林管理の担い手として注目される森林ボランティア。その実像と可能性、今後の課題を多角的に分析した初めての書。海外における市民参加の最新動向も分析しています。
目次
はじめに 山本 信次 3
序 章 森林ボランティアとは何か —どこから来て、どこに行くのか— 山本 信次 15
1 市民参加と森林保全 15
2 森林と人との多様な関係の再生を目指して —参加と分権に基づく森林管理— 17
(1)我が国の森林が抱える問題 —森林荒廃とは何か— 17
(2)農山村と都市の多様な関係の再構築に向けて 20
(3)地方分権的森林管理体制創出の必要性 21
3 中央集権的・官主導から地方分権的・市民主導の森林ボランティアへ 24
4 森林ボランティアとは何か 26
第1部 日本の森林ボランティア —その現状と課題— 29
第1章 森林ボランティアと支援政策 —トップダウンからボトムアップへ— 佐藤 岳晴 31
はじめに 31
1 国土緑化運動の歩み 32
(1)運動母体の結成 32
(2)主要事業の経緯と成果 34
2 変容する国土緑化運動 38
(1)「緑と水の森林基金」による公募事業 38
(2)「緑の募金」の助成対象の拡大 40
3 拡大する森林ボランティア活動 41
(1)森づくりフォーラムの誕生 41
(2)森林ボランティア活動の3つの特徴 45
4 森林ボランティア支援政策の広がり 47
5 これからの森林ボランティア支援政策 49
第2章 都道府県の森林ボランティア支援政策 —1998年のアンケート調査結果から— 佐藤 岳晴 53
1 アンケート調査の概要と全般的な動向 53
2 行政主導型グループの森林ボランティア支援政策 57
3 併用型グループの森林ボランティア支援政策 62
4 市民活動支援型グループの森林ボランティア支援政策 64
5 森林ボランティア支援政策の課題と展望 66
第3章 森林ボランティア団体の実態とNPO法人化への意向 —1999年のアンケート調査結果を中心に— 上野 圭司 71
はじめに 71
1 森林ボランティア団体の概要 71
(1)活動目的と活動形態 71
(2)財政規模と団体スタッフ 73
2 森林ボランティア団体の組織形態 75
(1)組織形態区分 75
(2)組織形態の動向 76
(3)組織形態別の特性と課題 77
① 組織形態別の活動形態 77/② 組織形態別の年間収入構成 78/③組織形態別の活動資金に対する意識 79/④ 組織形態別の活動資金強化策 79
3 NPO法人化の動向 80
(1)グループ別の動向 80
(2)法人化へのモチベーション 83
(3)法人化しない理由とNPO法の問題点 84
(4)NPO支援税制 87
むすび 90
第4章 森林所有者が森林ボランティア活動を受け入れる意義 —森林所有者の意識調査から— 嶋田 俊平 95
はじめに 95
1 調査の方法 96
2 森林ボランティアの活動する森林 97
3 森林所有者の意識 99
4 森林所有者にとっての意義 105
5 今後の動向と課題 107
第5章 人工林保全ボランティア活動の展開 山本 信次 111
はじめに 111
1 行政主導型と市民主体型森林ボランティア —市民のエンパワメントの視点から— 111
2 行政主導型森林ボランティアの意義と現状 113
(1)行政主導型森林ボランティアの意義 113
(2)兵庫県における行政主導型森林ボランティア活動の現状 113
① 「ひょうご豊かな森づくりプラン」に基づく市民参加 113/② 兵庫県主導による森林ボランティア活動の促進 116
(3)宮城県における行政主導型森林ボランティア活動の現状 121
① 宮城県による「みどり十字軍」の育成 121/② 活動の発展と課題の発生 —活動の自律化に向けて— 122/③ みどり十字軍の活動の自律化 123
(4)小 括 125
3 市民主体型森林ボランティアの意義と現状 128
(1)東京都西多摩地域の概要 128
(2)西多摩地域における市民主体型森林ボランティアの類型 129
(3)森林ボランティアから始まる多様な市民活動と市民セクター形成 133
おわりに 140
第6章 雑木林保全活動の展開とネットワーク化 水野 一男 143
1 雑木林保全ボランティアの発祥 143
2 組織化の方法 145
3 活動の広がりと成果 147
4 地域でのネットワーク 151
5 全国でのネットワーキング 153
6 活動のこれから 155
第7章 漁民の森づくり活動の展開について 斎藤 和彦 159
1 漁民の森づくりの魅力 159
2 漁民の森づくりの始まり 159
(1)「お魚殖やす植樹活動」 159
(2)「森は海の恋人植樹活動」 161
3 漁民の森づくりの全国への広がり 163
4 漁民の森づくり拡大の背景 166
(1)漁業を巡る背景 167
① 沿岸の重要性の高まりと森づくり 167/② 沿岸の環境悪化と森づくり 168/③ 地域連携と森づくり 169
(2)林業を巡る背景 170
① 林業の低迷と漁民の森づくり 170/② 国・公有林の公益シフトと漁民の森づくり 171
5 漁民の森づくりの持つ意味と課題 171
(1)漁民の森づくりの持つ意味 172
(2)漁民の森づくりの課題 173
(3)牡蠣の森を慕う会の成功要因 175
① 「農地造林」モデル 175/② 同質(ホモ)な連携から異質(ヘテロ)な連携へ 177
6 漁民の森づくりへの期待 179
第8章 森林ボランティアの可能性と課題 内山 節 183
はじめに 183
1 山村における伝統的「ボランタリー」な精神 186
2 オテンマとエイコ 191
3 森林と自治 196
4 森林ボランティアの課題 202
第2部 欧米の森林ボランティア —市民参加と自然資源管理— 207
第9章 米国国立公園・国有林におけるボランティア活動 前出 健太郎 209
1 歴史的背景と社会参加の理念 209
(1)開拓者とフロンティア精神 209
(2)経済恐慌下での国家再建を目指したCCC 210
(3)エリザベスと森の35人 210
2 ボランティア活動を支える法的根拠 212
3 ボランティアのためのバックアップ体制 213
(1)市民団体と行政との協調 213
(2)ボランティアセンターによるバックアップ 214
(3)内国歳入法(税法)による免税措置 215
4 ボランティア活動の種類 216
5 様々な参加の形態 218
6 米国国立公園・国有林におけるボランティア活動の実際 219
(1)山岳歩道(トレイル)の補修作業 219
(2)消防・レスキューボランティア 222
7 多様な人々によるボランティア活動 228
(1)「ハンディーを持つ人々」のボランティア活動 229
(2)非行青少年の更生を助けるボランティア活動 231
おわりに 234
第10章 米国ランド・トラスト運動におけるパートナーシップ —自然地保全NGOとしての発展のために— 土屋 俊幸 237
はじめに 237
(1)森林ボランティアの現状 237
(2)森林ボランティアの将来方向 239
(3)この章の目的 241
1 自然地保全NGOとしてのランド・トラスト 242
(1)ランド・トラスト運動の概要 242
(2)ローカルなランド・トラストのあり方 244
(3)ランド・トラストの階層構造 246
2 ランド・トラストを支える法制度 —保全地役権— 249
3 地域におけるランド・トラストの活動とパートナーシップ 253
(1)事例の概要 254
(2)ランド・トラストの関与 256
① トラスティーズの懸案 256/② 中間トラストのフットワーク 259/③ 地域コミュニティーが支えるトラスト 263
(3)保全への過程 264
(4)ランド・トラスト間のパートナーシップ 268
おわりに 273
第11章 市民参加と森林管理の方向 —OECD諸国の取り組みに学びながら— 柿澤 宏昭 283
はじめに 283
1 自然資源管理政策の転換 283
2 アメリカ国有林の市民参加 286
(1)失敗に終わった最初の参加の試み 286
(2)参加から協働へ、定着しつつある参加 288
3 広がる市民参加 290
(1)フィンランドにおける市民参加 291
(2)ニュージーランドにおける市民参加 293
(3)楽しみのための森林所有 295
4 これからの市民参加に求められるもの 297
(1)市民と市民、市民と行政の相互教育過程を 297
(2)求められる市民の実力 300
(3)地域の問題を総合的に解決する 302
(4)日本でも市民参加は着実に進んでいる 304
終 章 森林保全と市民セクター形成 —森林ボランティアの可能性— 山本 信次 309
1 市民活動の役割と参加者のモチベーション 309
2 市民活動の質的転換と市民セクター形成 313
3 森林ボランティア活動の現状と機能 315
4 新しい森林管理システムと市民セクター 316
5 先進事例にみる市民セクター形成の現段階 321
参考資料 327
1 森林づくり活動アンケート集計結果(平成12年9月・林野庁調査) 327
2 森林ボランティア団体数について(平成15年11月・林野庁調査速報値) 339
執筆者一覧 343
前書きなど
「森林ボランティア」と呼ばれる活動、あるいは社会運動が、注目を集めている。
「森林ボランティア」とは多様な活動を含むもので、一般的な定義は難しいが、少なくとも対象となる森林から直接的な利益を期待できない人々による森林保全活動であり、またそれが具体的な作業を通じて行われる「手を出し、足を運ぶ」活動であるということができるだろう。
編著者が、初めて学会で「東京周辺における森林ボランティア」について取り上げたのは、10年以上前のことになるが、当初の周囲の反応としては「大都市周辺にのみ成立しうる一過性の活動」、「気まぐれな都市住民・素人による活動」と捉えるものがほとんどであった。編著者自身、そうでないと言い切る自信もなかった。
しかしながら「森林ボランティア」の活動は、全国的に大きく広がりをみせると同時に、実際の森林管理作業にとどまらず、木材の消費拡大にむけた「近くの木で家を造る運動」への展開や行政・産業とのネットワーク形成、さらに国・地域レベルでの森林政策へのコミットなど、森林にかかわる市民活動の母体・市民セクターへと発展を続けていくことにより、そうした見方を覆しつつある。
また、編著者自身、継続的にこうした活動を調査しながら、「ミイラ取りがミイラ」の例えどおり、活動自体に深くかかわっていくこととなり、そのなかで見聞した森林ボランティア活動を実践する人々が抱く「森林保全への熱意」や「森林あるいは森林が立地する地域に暮らす人々との新しい関係づくり」へ向かう姿勢に尊敬の念を抱くと同時に、その可能性を確信するにいたった。
本書は、このような編著者の想いに端を発し、こうした活動の意義や可能性を整理し、世に問うと同時に、森林ボランティア活動を実践する人々やそれにかかわる林業関係者や農山村住民・行政関係者等に対して、今後の活動のさらなる発展に寄与する一助となればと念じて編まれたものである。
編著者以外の執筆者は、これまでの研究活動の中で問題意識を共有し、様々に議論を行うことがかなった先輩・若手の研究者の方々、ならびに森林ボランティア活動へのコミットを通じて知遇を得ることのかなった実践者の方々である。現状分析から理論的な論考、将来の可能性にいたるまで、余すところなく言及できる執筆陣をそろえることができたように感じている。にもかかわらず、不十分なところなどがあれば、それはひとえに編著者の力量不足によるものであり、お許し願いたい。
また、本書は、直接執筆いただいた方々のみならず、これまで森林ボランティア活動を実践してこられた皆様やそれと協力してきた農山村に暮らす皆様・行政関係者の皆様のご協力に基づいて完成したものである。あまりにも多くの皆様にご協力いただいたものであり、お一人ずつお名前を挙げることがかなわないのは甚だ残念ではあるが、ここに御礼申し上げる。
また、本書の編集について、編著者の力量不足を補うために通常に倍するであろう多大な御尽力を賜った日本林業調査会の辻潔氏にあわせて御礼申し上げる。
最後に、個人的な謝辞として、編著者自身が森林ボランティア、あるいは市民・住民参加に基づく森林保全を研究テーマとして取り上げるきっかけをつくっていただき、その後の研究にも大きな示唆を与えてくださった恩師である、元東京農業大学教授・紙野伸二先生に御礼申し上げさせていただくものである。
2003年12月
編著者 山本 信次
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著者プロフィール
山本 信次(ヤマモト シンジ)
1968年東京都生まれ。岩手大学農学部助教授。1996年に東京農業大学大学院博士後期過程修了後、東京農業大学副手、岩手大学助手を経て現在に至る。主要著書・論文に、『林業技術ハンドブック』(共著、全国林業改良普及協会、1998年)、『森林の百科』 (共著、朝倉書店、2003年)、「流域単位の森林の「社会的管理」にむけた都市住民参加の現状と課題 —多摩川流域を事例として—」(林業経済553号、1994年)、「市民参加活動における「林業教育」と森林管理 」(林業経済596号、1998年)、「森林ボラン
ティアの現状と可能性— 市民セクター形成を中心に—」( 林業経済研究 46巻2号、2000年)など。
佐藤 岳晴(サトウ タケハル)
1975年北海道生まれ。旭川市保健福祉部障害福祉課。1997年に北海道大学農学部卒業、1999年に北海道大学大学院農学研究科修士課程を修了した後、旭川市役所に勤務。主要論文に、「都道府県における森林ボランティア支援政策の動向」(北海道大学農学部演習林研究報告第57巻第2号、2000年)など。
上野 圭司(ウエノ ケイシ)
1976年岡山県生まれ。2000年に北海道大学大学院農学研究科森林管理保全学講座森林政策学分野修士課程修了(農学修士)、現在はエムエルアイ・システムズ(株)に勤務。主要論文に、「森林ボランティア団体の実態とNPO法人化への動向」(東北森林科学会誌第7巻第1号1-11、2002年)、「耕地防風林の維持管理方法における農家の意識構造—AHPを応用して—」(北海道支部論文集第51号138-140、2003年)。
嶋田 俊平(シマダ シュンペイ)
1978年大阪府生まれ。京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(森林情報学研究室)。主要論文に、「針広混交林化したヒノキ不成績造林地の成長解析」(森林研究第号、2003年)など。
水野 一男(ミズノ カズオ)
1951年岐阜県生まれ。(有)木文化研究所代表取締役。1975年に岐阜大学農学部卒業、建材メーカー技術職、森林・林業関係業界紙記者などを経て現在に至る。主要著書に、『Q&A 里山林ハンドブック』(共著、日本林業調査会、1999年)、『現代雑木林事典』(共著、百水社、2001年)、『調べてまなぶ身近な生きもの』(共著、合同出版、2002年)、『木材居住環境ハンドブック』(共著、朝倉書店、1995年)など。
斎藤 和彦(サイトウ カズヒコ)
1966年愛媛県生まれ。森林総合研究所環境計画研究室主任研究官。1993年に北海道大学農学部林学科卒業後、農林水産省森林総合研究所(現・独立行政法人森林総合研究所)に入り、現在に至る。主要著書・論文に、「漁協の森林づくり活動について」『森林整備の実行主体のあり方に関する調査報告書』(分担執筆、林野庁、1997年)、「森林管理への『参加』に関する議論の展開(1)」(森林計画学会誌28、1997年)、「かながわ森林づくり公社における林業労働力の需給動向について」林業経済627、2001年)、「Cognitive Mapを用いて見解の相違を抽出する方法の研究—市民参加の場における合意形成のために—」(環境情報科学論文集17、2003年)。
内山 節(ウチヤマ タカシ)
1950年東京都生まれ。哲学者。森づくりフォーラム代表理事。群馬県上野村に在住し、存在論、労働論、自然哲学、時間論などを中心に研究を進めている。主要著書に、『時間についての十二章』(岩波書店、1993年)、『自然と労働』(農山漁村文化協会、1986年)、『戦後思想の旅から』(有斐閣、1992年)、『貨幣の思想史』(新潮社、1997年)、『山里紀行』(日本経済評論社、1990年)など。
前出健太郎(マエデ ケンタロウ)
1974年兵庫県生まれ。三重大学大学院生物資源学研究科生物圏保全科学専攻(森林総合環境学研究室)。1997年に広島県立大学卒業後、京都大学研究生を経て、現在に至る。主要著書・論文に、『現代雑木林事典』(共著、百水社、2001年)、「米国における青年を対象とした森林教育の現状」(日本林学会論文集、1997年)、「米国国立公園ボランティア制度の現状と課題—人員削減に伴う諸問題—」(森林応用研究、1998年)、「米国国立公園・国有林における運用の実際と専門職員の現場裁量権について」(日本ボランティア学会2002年度学会誌「ボランタリー・エコノミー」)など。
土屋 俊幸(ツチヤ トシユキ)
1955年東京都生まれ。東京農工大学農学部助教授。1982年に東京大学大学院農学系研究科林学専門課程博士課程を単位取得退学後、農林水産省森林総合研究所北海道支所経営研究室長、岩手大学農学部助教授などを経て、現在に至る。主要著書に、『山村の開発と環境保全』(共著、南窓社、1997年)、『スギの新戦略Ⅱ 地域森林管理編』(共著、日本林業調査会、2000年)、『流域の環境保全』(共著、朝倉書店、2002年)、『アジアにおける森林の消失と保全』(共著、中央法規出版、2003年)など。
柿澤 宏昭(カキザワ ヒロアキ)
1959年神奈川県生まれ。北海道大学大学院農学研究科助教授。1984年に北海道大学大学院農学研究科修士課程修了、北海道大学助手を経て、1996年から現職。主要著書に、『エコシステムマネジメント』(築地書館、2000年)、『ロシア 森林大国の内実』(編著、日本林業調査会、2003年)など。
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