海よ山よ
柳本 通彦:訳, 松本 さちこ:訳, 野島 本泰:訳
発行:草風館
この版元の本一覧
四六判 360ページ 上製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-88323-140-9(4-88323-140-2) C0097
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年03月
書店発売日:2004年03月17日
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紹介

台湾原住民のための最初の文学賞『第一回山海文学奨』が登場したのは1996年のことである。本書に掲載の11民族19作品は、この10年という「時代」が生んだ、それぞれの民族の魂を刻んだ傑作群。いま30代から50代の青壮年期の原住民たち、時代の転換期に遭遇した彼らの戸惑いと苦悩、そして希望が、この一冊に凝縮されている

目次

1 母の歴史、歴史の母……孫大川(パッラバン)〔プユマ〕
2 ホレマレ……ワリス・ロカン〔タイヤル〕
3 パンノキ……アタウ・バラフ〔アミ〕
4 リヴォクの日記……ロゲ・リヴォク〔アミ〕
5 出 草……ユパス・ナウキヒ〔タイヤル〕
6 花 痕……蔡金智〔タロコ〕
7 どうしてケタガランなのか?……楊南郡〔平埔族/シラヤ〕
8 タイヤル人の七家湾渓……マサオ・アキ〔タイヤル〕
9 雲豹の伝人……アウヴィニ・カドリスガン〔ルカイ〕
10  生の祭……ホスルマン・ヴァヴァ(ブヌン〕
11  大地の歌……ブクン・イシマハサン・イシリトアン〔ブヌン〕
12  ムササビ大学……サキヌ〔パイワン〕
13  薑路……バタイ〔プユマ〕
14  プリンセス……リムイ・アキ〔タイヤル〕
15  紅 点……ヴァツク〔パイワン〕
16  霧の夜……ネコッ・ソクルマン〔ブヌン〕
17  聖地へ……イティ・ダオス〔サイシャット〕
18  親愛なるアキイ、どうか怒らないでください……パイツ・ムクナナ〔ツオウ〕
19  マカラン……シナン・シュムクン〔タオ〕
【解説】木霊する生命の歌  柳本通彦

前書きなど

解説「木霊する生命の歌」柳本通彦より
 本書では、現在、台湾政府に認定されている十二の民族を網羅するよう努力したが、日月潭のサオだけが、残念ながら漏れた。人口わずか数百人という民族で、適当な作品を見つけることができなかった。
 こうして、ここ十数年の間に登場し、いま活躍中の台湾全島の原住民族の主な作家たちの代表作を網羅してみると、実にわかりやすく、また的確な「台湾原住民ワールドへの入門書」になっていることに気づかされる。そしてなによりそこには、概説書にはない、彼ら自身の「生の声」がある。
 大半は別に本職をもった人たちである。それぞれ何らかのきっかけに遭遇して、執筆を始めた。掲載の作品は、その処女作か、それに準ずる作品だと思っていただいてけっこうだ。それだけに感性も初々しく、そしてなにより、彼らがもっとも書きたいことを書いていることに注目したい。
 それにしても、わずか四十万の集団から、選択に困るほどの質と量の作品が、この十年余りのうちにいっきょに出現したことは、驚異的もいえる。だからといって、これからも同じ調子で、さらに多くの作家たちが登場するとは思えない。これらは、この十年という「時代」が生んだ煌く傑作群なのである。
 主に、いま三十代から五十代の青壮年期の原住民たち、時代の転換期に遭遇した彼らの戸惑いと苦悩が、この一冊に凝縮されている。われわれ日本人は、それらと他人ではありえず、わたしにとっても重い一冊となった。

版元から一言

時代に翻弄される民族の言霊/汲めども尽きぬ悲しみの海
  歴史の母
 母の歴史は、わたしがプユマの歴史を捉えるための主要な手がかりであった。彼女の生命に宿る憂愁はプユマに宿る憂愁である。日頃から彼女の物静かで穏やかな表情を見ていると、そこにプユマの最後の黄昏が漂っているようにも思える。彼女が、周りの環境に対してときに見せるささやかな反応は、わたしが時代を見ぬく手助けとなってくれた。
 すべての台湾人が原住民と同じく勇気をもって過去の遺恨を忘れ去らない限り、われわれは共存の機会を失い、この台湾という土地に自己の歴史を創造するということは永遠にできないに違いない。そして原住民が台湾史の母となる日がきっと来る。わたしはそう信じていたい。(本書 孫大川『歴史の母 母の歴史』より)

著者プロフィール

柳本 通彦(ヤナゴモト ミチヒコ)

1953年京都市生まれ。ノンフィクションライター。アジアプレス台北オフィス代表。著書に、霧社事件のその後を追った『台湾・霧社に生きる』、台湾先住民慰安婦の証言を綴った『台湾先住民・山の女たちの聖戦』『タロコ峡谷の閃光』(以上現代書館)、そして激動の台湾現代史を生々しく記録した『台湾革命』(集英社新書)など。

松本 さちこ(マツモト サチコ)

1961年兵庫県高砂市生まれ。台湾輔仁大学翻訳学研究所(修士課程)卒業。現在、台湾真理大学日本文学科講師。共訳に、陳水扁著『台湾之子』(毎日新聞社)。

野島 本泰(ノジマ モトヤス)

1969年神奈川県座間市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(単位取得退学)。2004年度から女子美術大学非常勤講師。論文に、「Lexical Prefixes of Bunun Verbs」(1996年、『言語研究』110号)。

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