希望の家族学こどもと出会い別れるまで
石川 憲彦
発行:ジャパンマシニスト社
この版元の本一覧
四六判 上製
定価:2,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-88049-133-2(4-88049-133-0) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2003年03月
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紹介

ぜひ、親としての大人に、また、子どもと関わる人々に、そしてできれば子どもたちにも、読んでほしいと願っています。とりわけいま、家族の問題と直面している人々、家族のことで悩んでいる人々が、問題から脱出する糸口をこの本から見つけ出していただけるなら、本望です。(石川憲彦)

目次

はじめに   1

第1話 まもる家族   13
人間は弱さを抱えた存在だから、たがいに守りあうために「家族」が生まれた

白血病の女の子とおばあちゃん   14
守ろうとして失われたもの   17
「公園デビュー」に身構えて   20
三人のお母さんの意見   22
「親が原因」という空気   27
統計の嘘   32
わが子の最期のことばで悟ったこと   36
「家」という囲い   40
魔法が起きるとき   41
1+1の答えは2だけじゃない   47
一直線に進むという幻想   50
弱さを引き受けあっていく   53

第2話 はぐくむ家族   55
育つとは、混沌とした循環系のなかに生き、周囲とともに変化していく過程

海の記憶   56
懐かしい「おうちの匂い」  60
嗅覚と「許す」という感覚   63
「見る」というのは、「区別し」「選別する」こと  64
親がこどもを見失うとき   69
「早く・ちゃんと・きちんと」では命は育たない   75
学校に行かない子に大人があわてるわけ   78
16歳の少女の叫び   82
体臭を消そうとする若者   88
チックの少年の恐れと怒り   91
見張りあう社会   94
私が「学習障害」という診断に懐疑的なわけ   97
迷惑をかけあうことを恐れない   101

第3話 わかつ家族   105
別れるということは出会い、それも痛みをはらんで出会っていくこと

わかる、わかちあう、わかれる   106
オギャーと新しい仲間が生まれて   109
「三歳児神話」という新しい信仰   112
「いないいないばあ」の意味   114
人類がつくりだしたおとぎ話   116
母系文化が生きている島   118
自分の弱さに気づいたとき   122
切り捨てられた分かちあい   126
自由が怖い   129
愛情は人を無防備にする   132
見えないという世界を欠けることなくもつこと   136
かけがえのない存在として   138
ふたたび出会うために   144

前書きなど

 家族というものをイメージしたとき、まっさきに頭のなかに浮かぶ光景があります。
 20年近く前、私は障害をもつこどもたちが暮らす、ヨーロッパのいくつかの施設を見学して歩いていました。ある日の夕方、旧ユーゴスラビアの海辺の町を散歩していると、浜辺に停めた1台のキャンピングカーの横で、食事をしているドイツ人の家族と出会いました。父親と母親、そして学齢期に達していそうな2人の姉妹。聞けば9歳と8歳だといいます。
 あれ、学校はお休みのシーズンでもないのに、と興味をひかれてたずねると、2人の入学を延期して家族で世界一周旅行をしている途中だ、とお父さんは答えました。
 こどもたちはもう、学校へ行く年齢になってしまった。この地球上でせっかく家族として出会ったのに、学校へ行ったら今までのようにこどもと自由にすごせない。それが悔しいから、こどもたちを学校へやる前にキャンピングカーを買って世界旅行に出発したとのこと。
 特別、裕福な家庭ということではないようでした。お金が尽きたらそこでストップするつもりで、そのためにお父さんとお母さんは仕事もやめてきたといいます。
 おどろいている私に、彼らは夕食の席を用意してくれました。
 だって世界にこんなにたくさん人間がいても、一生のうちに出会える人は限られている。ましてや親と子として出会うなんて、これは特別なチャンスなんだ。それでもやがて別れていくのだとしたら、家族だけの親密な時間があるうちに、せっかく出会った人間同士で地球をまわりたかったんだ、と。
 親と子を、人間同士の出会いとして捉える。当時、障害児医療のかたわらこどもの心理相談や精神療法に携わっていた私には、この家族観がとても新鮮に感じられました。日本ではその頃すでに、こどもたちの危機——とりわけ心の問題——が、大問題として喧伝されていました。少年事件、少年犯罪、ひきこもり、学級崩壊、幼児虐待__。今日ではそんなふうに呼ばれるようになった現象の原因として、育児能力の危機(今の家庭崩壊)が憂慮されていたのです。そんななかで、「自分はさておきこどもにだけは幸せになってほしい」という願いをこめて、外来を受診する親の数がどんどん増えていました。親としてこどもになにができるか。そのようなかたちで世間からの問いかけにやっきになって答えようとしている日本の家族観に、私自身が慣れっこになっていたからこそ、この家族観が新鮮に響いたのでしょう。
(「はじめに」より一部抜粋)

著者プロフィール

石川 憲彦(イシカワ ノリヒコ)

1946年、神戸生まれ。73年、東京大学医学部卒業。小児科医・精神科医として主に東大病院で臨床を重ね、そのかたわら障害児や親たちと“医療と教育を考える会”を結成し、活動を続ける。94年よりマルタ大学で2年間研究生活をすごし、静岡大学保健管理センター所長を勤め上げ、現在、開業準備中。『ちいさい・おおきい』編集委員。
著書に『子育ての社会学』(朝日新聞社)、『学校の精神風土』(アドバンテージサーバー)、『子育ての精神医学』(ジャパンマシニスト社)など。

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