イノチの際で共に棲まう私たちの日々不思議の天音
山口 平明, 山口 ヒロミ:画
発行:ジャパンマシニスト社
この版元の本一覧
A5判変型 248ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-88049-130-1(4-88049-130-6) C0077
在庫あり
奥付の初版発行年月:2000年06月
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紹介

山口天音さん19歳。大阪はアメリカ村から徒歩5分のビルの谷間に生きる、重い重い「障害」をもつ少女。果たして、何を喜び何を苦しんでいるのか、彼女の両親、平明・ヒロミさんたちにももちろん、彼女に関わる医療関係者にもわからない。平明氏いうところの「なぞなぞ少女」。そんな天音さんのイノチを支える父・平明氏が脳こうそくで倒れる! 一家の大ピンチからはじまる、『娘 天音 妻 ヒロミ』に続く第2弾。ヒロミさんの銅版画も必見。

目次

はじめに

1 魔の三角地帯

前書きなど

 今は昔。あんたのことは何でもわかってるよ、と母にいわれたとき、僕はじつに厭な気分になった。大人になっている自分が、にわかに小さな子どもになって母を見あげているように感じた。
 わかってほしいと願っていたはずなのに、わかってますよといわれたとたんに「わかってたまるか」と反発したのだった。
 ここには、およそ他人にはわかりえない自己が居る、と信じている私がいる。たとえ親であろうとも、おのれでさえいくら考えてもわからない自己をかんたんにわかられてたまるかっ、てね。
 私たちのたった一人の子ども・天音は、生まれてから今日まで19年間、誰にも理解されないままで暮らしてきた。ずっと家庭で暮らしをともにしてきた親ばかりでなく、その道の専門家であるお医者さんも「わからんねえ」とおっしゃる。言葉は通じない。天音の望みを受けとめようとすると、ともに同じ家に住みともに時を過ごしていること、すなわち共棲/「在宅」だけがかすかな理解への入口になるはず。 天音という存在は、一個の大きな謎である。だいいちおしゃべりできなくとも、歩けなくても親をはじめ周りの人間の扶けによってしっかりと生きている。生きにくくて重い重い「障害」をもっているのに。
 天音がくりだすなぞなぞは、解らないままで棲み暮らす、人間という生き物の「あいまいさといいかげんさ」をさとらせる。相互扶助ないし相利共棲とでもいおうか。『不思議の天音』たる由縁である。
 この本の文章は、大分県中津市で作家・松下竜一さんによって発行されている月刊「草の根通信」に、1997年3月号から99年6月号にわたり連載執筆させてもらったもの。ここから編集者によって19篇が選ばれ編まれた。妻・ヒロミの銅版画も連載時の順番をいれかえて収載できた。ここにきて、もしかして画だけが見られて文は読まれないのじゃないかと危ぶんでいる。
(2000年6月記す。天音の誕生月だ。)

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