陪審裁判の理解のために入門・アメリカの司法制度
丸山 徹
発行:現代人文社
この版元の本一覧
A5判 284ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-87798-340-6 C0032
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年06月
書店発売日:2007年06月19日
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紹介

陪審裁判、司法取引、訴訟社会、銃社会……。アメリカの社会・文化は、アメリカの司法からはじまる。アメリカ留学・生活に最低限必要な法知識をやさしく解説。

目次

第1部 陪審裁判(Jury Trial) 
 1  陪審裁判
 2  なぜ陪審制度なのか
 3 大陪審
 4  評決と判決
 5  説示
 6  事実認定
 7  評議
 8  陪審裁判の具体例
第2部 刑事法(Criminal Law and Procedure)
 9  刑事手続の原則
 10  司法取引
 11  逮捕から起訴まで
 12  裁判の進行
 13  犯罪の類型
 14  死刑
 15 DV規制法
 16 ストーキング規制法
 17 少年法
第3部 司法機関(Law Enforcement Organization)
 18 裁判所と判事 
 19  連邦最高裁判所
 20 検察
 21 弁護士
 22  FBI
 23  警察官と保安官
 24  刑務所
 25 法医学者
第4部 民事法(Civil Law and Procedure)
 26 民事訴訟
 27  懲罰的賠償
 28 差止命令
 29 セクシュアル・ハラスメント 
 30 独占禁止法
 31 服部君裁判
第5部 アメリカ法の諸相(Characteristic of American Law)
 32 憲法
 33 制定法とコモン・ロー
 34 安楽死
 35 銃規制
 36 法廷テレビ
 37 弾劾

アメリカの司法制度を学ぶための文献
エピタフ出典一覧
エピローグ

前書きなど

◎プロローグ
 
 日本人は陪審制度に立脚した米国の司法制度をきちんと理解する必要がある。なぜなら日本は陪審制度を取り入れることを決定し、「シロウト」の市民が、人を裁くことに参加する「裁判員制度」に移行するからだ。
 陪審制度の変形である裁判員制度は2009年5月から実施される。裁判員制度の実施をにらんで2006年から一部の刑事裁判で、検察官、弁護士、裁判官が事前に協議して証拠と争点を整理し、裁判の迅速化を図る「公判前整理手続」が行われ始めた。検察庁は2006年7月から一部の検事取り調べをDVDに録画する試みを始めた(同年末までに12件について実施)。法曹人口を飛躍的に増やすため、法科大学院(ロースクール)も開校した。これらは裁判員制度を前提とした司法制度改革であり、すべて米国の司法制度に範をとっている。
 これ以外にも、日本で進められている司法制度改革は米国にならったものが多い。「犯罪と司法制度」という観点から見ると、日本の社会は米国を模倣し、追随しているかのようである。日本社会が米国化し、それに伴って犯罪が多様化、凶悪化しているのに日本の司法制度は旧態依然としている。これを打開するため日本は、米国の司法システムに学び、その最も良質な部分を取り入れることに活路を見い出そうとしている
 なぜ、この時期に陪審制度導入なのだろう。陪審制度は、司法の民主化につながるのだろうか。米国の司法制度の「移植」が日本社会の安定に寄与するのだろうか。その答えを探すには、本家本元の米国の陪審制度を知り、それを支える司法システム全体を正確に理解することが必須である。本書は、その最も簡便で包括的なガイドとなる。
 私は1993年11月から3年3カ月、ニューヨークのマンハッタンに住んで、記者生活を送った。この間、ニューヨーク地下鉄乱射事件、オクラホマシティ連邦ビル爆破事件、バトンルージュで起きた服部君射殺事件の民事裁判、大和銀行巨額損失事件の判決公判などを取材した。ニューヨーク市警で検挙率ナンバーワンの警察官にインタビューしたり、クイーンズで起きた日本人殺人事件を発生から有罪判決まで取材して担当検事や、判事に話を聞いた。ヘロインの密輸ルートを探るため麻薬取締局の捜査員に同行取材し、ミャンマーの麻薬王「クンサー」を起訴した元女性検事にインタビューした。チェーンギャング(鎖の足枷)を復活させたアラバマの州刑務所に行って受刑者に話を聞いた。オクラホマ州刑務所で死刑執行を取材、ペンシルベニア州刑務所では、無実を訴える死刑囚とガラス越しに会見した。デトロイトに赴いて「死のドクター」と言われたケボーキアン氏と会ったり、不治の病の妻を安楽死させ、実刑判決を受けたマンハッタンの男性に長時間インタビューしたりした。「ミリーシャ」と言われる反政府武装市民に会いにモンタナ州とミシガン州の山奥に行ったり、バージニア州にあるFBIアカデミーで、新人研修に一日つきあったこともある。これらの体験が、執筆の原動力になった。
 

 
 この本は、ひとりのジャーナリストが実体験を基に米国の司法制度について感じた素朴な疑問を、ひとつひとつ地道に解明した集大成である。私は、できるだけ専門語を使わないで、分かりやすく書くことに努めた。そして間口の広いこのテーマを、できるだけ多くの事例と新しいデータを使って具体的に、かつ正確に紹介するよう努力した。学術書とは違うが、レベルは落としていない。お手軽なハウツー本とは一線を画す。
 司法界の関係者はもちろん、米国の司法システムの全体像を知りたいと思っている学生やビジネスマンに読んでもらいたいと願っている。また、米国という国の成立ちに司法がどのような役割を果たしたか、そしてこの国の政治、経済の底流にある法的メカニズムはいかなるものか。それらに興味があるすべての人に、この本を読んでほしいと思う。
 米国の司法システムの基本知識は、米国の政治、社会、文化に対する一層深い理解に役立つ。否、それなしでは、米国の政治や経済を十分に理解することはできないはずだ。司法制度は想像以上に米国人の日常生活に浸透し、その行動や言動を律している。
 映画、テレビドラマ、ノンフィクションやミステリーのファンや翻訳家にも一読を勧めたい。字幕や日本語訳で簡略化されたり、意味不明の難解だったりする部分は、司法制度や法律に関する用語、表現であることが多い。本書を通読すれば、それらの疑問の多くが解消し、原書で読む際にも、難解な法律的記述や描写に困惑することもなくなるだろう。
 この十数年、円の対ドルレートは140円から80円まで変化したが、本書では円換算値を分かりやすくするため1ドル=100円に統一した。

 
2007年5月
丸山 徹

著者プロフィール

丸山 徹(マルヤマ トオル)

共同通信記者

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