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翰苑 創刊号 2014.3vol.1
巻次:創刊号
- 出版社在庫情報
- 絶版
- 初版年月日
- 2014年3月
- 書店発売日
- 2014年3月24日
- 登録日
- 2014年3月5日
- 最終更新日
- 2021年5月18日
目次
創刊の辞 綱澤 満昭2
菅家後集の詩「謫居春雪」を読む 渡瀬 茂 6
三木露風 第三詩集『寂しき曙』分析と鑑賞20
――(上)『廃園』からの詩想・詩風の変化 和田 典子
故郷喪失とナショナリズム 49
―― 柳田国男の場合 綱澤 満昭
現代宗教の指導者崇拝 66
―― シンボリズムの観点から 長崎 誠人
そばにいるということ 89
――「心のケア」とは何か 松島 京
教育、福祉の諸制度における「養護」概念 107
―― 社会的養護における「養護」概念の明確化に向けて 松浦 崇
近世港湾都市機構の「形成」過程 132
―― 兵庫津を事例に 河野 未央
播磨の災害記念碑 175
―― 安政南海地震碑・寛延二年大洪水碑 松下 正和
近世被差別民の「主体」としての信仰 204
―― 大坂渡辺村門徒を中心として 和田 幸司
前書きなど
創刊の辞
近大姫路大学 人文学・人権教育研究所
所 長 綱澤満昭
同憂同志の仲間がいまここに集結し、新たな息吹の誕生をみせようとしている。
「人文学・人権教育研究所」の設立と、雑誌『翰苑』の発刊がそれである。
私たちを囲繞するすべての事象に、楽観的なものはなにもない。この悲哀の海の中で、私たちはなにを為すべきなのか。
作為された情緒と、拙劣なポーズだけが、世の中を席巻し、じつにおぞましい状況の中で、やすっぽい人道主義、ヒューマニズムの類が横行している。
あの時、完膚なきまでに打ちのめしたかにみえた闇の部分を、今日、形骸化された民主主義が、それらをつつみ込みながら悪臭を放っているではないか。
民主主義が勝利したと思っていたのは、幻想であり、錯覚でしかなかったのである。
火中の栗を拾う勇気も根性もなく、安全地帯に身を置いて、ポーズだけの批判が横行している。
自分の存在を一度も疑うことなく、自由、平和、民主主義を声高に叫ぶ「幸福」な「知識人」ばかりが目立つことに私たちは、驚愕する。
自分の内面とそれを養ってきた深淵に測鉛を降ろすことから、すべては始まる。
悠久の歴史の中で、営々と築いてきた日常を剔抉することが、そのことにつながっている。
暗黒の海底に沈潜している怨嗟や憤怒も拾いあげねばなるまい。
私たちは、もはやなにものにもとらわれる必要はない。思いきり生命の唄をうたい、この荒涼とした偽文明の原野に立って、あらゆる思念と感性を磨き、生命の狼火をあげなければならない。
私たちは、このような想念を抱きながら、第一歩を踏み出したのである。
上記内容は本書刊行時のものです。