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漁協の組織・経営十章
漁協役職員のために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2012年6月
- 書店発売日
- 2012年6月29日
- 登録日
- 2012年4月6日
- 最終更新日
- 2012年6月28日
目次
総目次
まえがき
第一編 漁協の組織と運営
序 漁村の共同・協同
第一章 協同組合の先駆と協同組合原則
一 協同組合の先駆
1 イギリスの消費組合
2 フランスの生産組合
3 ドイツの信用組合
4 アメリカの販売組合
二 日本における協同組合の先駆
1 明治初期・中期の協同組合
2 産業組合法の制定
3 漁村の産業組合
三 協同組合原則
1 ロッチデール原則
2 国際協同組合同盟による原則の採択
3 一九九五年の協同組合原則
第二章 漁協小史
一 漁業権管理団体として成立
1 明治十九年 漁業組合準則公布
2 明治三十四年 漁業法公布
二 共同施設組合から経済事業組合へ
1 明治四十三年 漁業法改正
2 昭和八年 漁業協同組合
3 戦時経済体制下統制機関化
三 戦後の新発足
1 終戦と新しい漁協制度
2 漁業制度改革
3 建設から成長へ
4 波乱と模索
5 平成年代の漁協組織
第三章 漁協の事業
一 指導事業
1 資源管理
2 経営及び技術指導
3 教育・研修・広報
二 信用事業・共済事業
1 信用事業
2 共済事業
三 購買事業・販売事業・漁業自営
1 購買事業
2 販売事業
3 漁業自営
第四章 漁協の特質
一 漁業権管理
1 組合管理漁業権
2 協同組合原則との調整
3 漁業行使権と漁業権行使規則
二 組合員資格
1 組合員資格とは何か
2 組合員資格の変遷
3 組合員の経済格差の拡大
三 漁協の類型
1 沿海地区出資漁協の類型
2 小規模漁協の存在
3 萬(よろず)屋型経営と連合会による補完
第五章 漁協の運営
一 組合員・総会
1 組合員資格の意味
2 組合員の権利と義務
3 総会・総代会
4 組合員組織
二 理事会・代表理事・経営管理委員会
1 理事・理事会
2 代表理事
3 参事及び会計主任
三 監事
1 監事の職務権限
2 員外監事・常勤監事
付論 漁場自主管理運動
第二編 漁協の経営と管理
序 経営学と漁協経営
第六章 経営管理の発展
一 イギリスとアメリカの労働問題
1 イギリスの事情
2 アメリカの事情
二 ティーラーの「科学的管理法」
1 ティーラーの「作業研究」
2 課業管理
3 ティーラーの協力者・後継者
三 フォード・システム
1 流れ作業
2 製品の標準化
3 フォードの経営哲学
四 ファヨールの管理過程論
1 経営の基本的活動
2 ファヨールの管理原則
3 ファヨールの原則の適用
五 人間重視のマネジメント論
1 ロバート・オーエンの工場経営
2 ホーソン実験と人間関係論
3 マズローとマグレガー
第七章 経営計画と経営組織
一 経営計画
1 長期計画
2 地域営漁計画の必要性
3 短期計画(事業計画)
4 経営統制
二 計画・統制を束ねる組織
1 組織と経営管理者
2 組織の一般理論
三 経営組織の部門化
1 初期の組織形態
2 専門化した組織
3 ライン・スタッフ組織
四 経営組織の階層化
1 管理監督範囲の限界
2 経営組織における権限の問題
3 職務権限規程と「稟議制度」
4 三面等価原則とピラミッド型組織
五 経営組織の分権化
1 集権管理の弊害と分権管理の導入
2 漁協は事業別の独立採算制を採用できるか
3 貢献利益による管理
六 リーダーシップ
1 リーダーとリーダーシップ
2 リーダーシップの原理
3 漁村・漁協のリーダーシップ
第八章 管理各論
一 生産管理
1 生産形態
2 生産計画と工程管理
3 直接原価計算
二 事務管理
1 事務分析
2 主な事務分析の方法
3 漁協事務の特徴
4 漁協事務改善の目的
5 事務改善の事例
6 オフィス・オートメーション
7 内部牽制
三 マーケティング
1 マーケティングとは
2 マーケティング管理
四 労務管理
1 労働契約
2 就業規則
3 労働条件―賃金、労働時間
4 変形労働時間・割増賃金
5 人事管理
第九章 財務管理
一 資本の調達と運用
1 資本の調達(資本と負債)
2 資本の運用(資産)
二 財務処理基準
三 利益計画と資金計画
1 必要利益
2 損益分岐点
3 資金計画
第一〇章 経営分析
一 経営分析の体系
二 財務流動性分析
三 経営収益性分析
四 生産性分析
五 すう勢分析および漁協総合評価指標
1 すう勢分析
2 総合評価
付論 平成漁協二十年の軌跡
版元から一言
あとがき
本書は、私の全国漁業協同組合学校における「漁協論・漁協経営論」の講義を、漁協の役職員向きにまとめ直したものです。
本書の第一編「漁協の組織と運営」は、協同組合としての漁協の特質を解説したもので、「農協・生協とどこがどうちがうか」を述べたつもりです。漁村の「共同・協同」と農村の「共同・協同」について船山信一氏の説を「序」とした所以です。
「まえがき」でも触れましたが、平成年代の漁協は「信用事業と組織規模」をめぐって揺れました。そして、東日本大震災の復興に絡んで経済界から「誤れる漁業権開放論」がむしかえされています。第一編は、このような外部の声に答えるために、漁協の特質について解説しました。しかし、本書第二編の付論「平成漁協二十年の軌跡」に見るように、漁協の現状も問題をはらんでいます。「漁協は何処へ行くのでしょうか」。私自身は、漁村経済の中核として揺るぎない経営を続けている、多くの漁協を見ており、漁協は「協同組合として本来のあり方」を求めるかぎり、決して揺らぐことは無いと信じています。
第二編は、漁協の経営についてやや詳しい内容にしました。第七章の「経営計画と経営組織」で「経営組織の階層化」と「フォレットの権限源泉説」を紹介し、「分権管理と事業部制及び独立採算制」で「貢献利益による部門管理」を提案しました。これは「県一漁協」のような大型漁協の存在を前提に、その経営管理のあり方について私見を述べたものです。私自身は「身の丈」が漁協の適正規模であり、「大規模であればよい」という考え方は採りませんが、現実に「県一漁協」が存在し、その経営のあり方が問われている以上、本書として触れざるを得ません。「分権化と貢献利益による管理」が今のところ私の解答です。
第8章の部門管理は、新しく「生産管理」を加え「工場部門の直接原価計算」の解説としました。たまたま某漁協の経営診断の機会があり、「実際原価計算」は財務諸表作成上は必要ですが工場部門の日常管理では役に立たないことを知りました。なお、「マーケテイング」は内容的に不十分ですので、婁 小波他編著『水産物ブランド化戦力の理論と実践-地域資源を価値創造するマーヶティング』を薦めたいと思います。
漁協役職員の方々が本書を漁協運動・漁協経営のための参考書として活用して下さることを願っています。
上記内容は本書刊行時のものです。