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海民の社会生態誌 北窓 時男(著) - コモンズ
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海民の社会生態誌 (カイミンノシャカイセイタイシ) 西アフリカの海に生きる人びとの生活戦略 (ニシアフリカノウミニイキルヒトビトノセイカツセンリャク)

歴史・地理
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発行:コモンズ
四六判
336ページ
上製
定価 3,200円+税
ISBN
978-4-86187-104-7   COPY
ISBN 13
9784861871047   COPY
ISBN 10h
4-86187-104-2   COPY
ISBN 10
4861871042   COPY
出版者記号
86187   COPY
Cコード
C3025  
3:専門 0:単行本 25:地理
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年7月
書店発売日
登録日
2013年3月25日
最終更新日
2014年7月2日
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紹介

西アフリカの海に関わって生きる普通の人びと(=海民)の生活世界を長年のフィールドワークをとおしていきいきと描き、ひとり歩きする市場経済という毒を周縁の社会の営みから逆照射する。
開発コンサルタントとしてセネガル・モーリタニアの沿岸社会に暮らす人びとと長く接するなかで著者は考えた。「市場経済システムから離れた周縁社会の生活のありようが、市場経済という毒を制する処方箋となる」

目次

プロローグ 西アフリカ海民世界への誘い

第Ⅰ部 砂漠の海民

 第1章 海民を旅する
  1 砂漠をつなぐ
  2 豊饒の海を行く
  3 押し出される、移動する

第Ⅱ部 都市の海民

 第2章 海に生きる
  1 老漁夫ロム爺さん
  2 都市近郊の漁師町

  3 生い立ち(一九二八年~)
  4 海を知る(一九三四年~)
  5 移動漁業の系譜
  6 老漁夫の生活世界
  7 変化する漁師町

 第3章 漁家を営む
  1 増加する零細漁民
  2 セネガルの漁業の概観
  3 ニャニン村はこんなところ
  4 大家族の漁家経営
  5 小家族の漁家経営
  6 地曳網漁家の経営
  7 漁家経済の環境と課題

 第4章 魚を商う
  1 漁村の社会関係
  2 魚商人世界の価値観と戦略
  3 漁民が魚商人になる村
  4 漁民魚商人の役割
  5 共時態としての沿岸コミュニティ

第Ⅲ部 マングローブデルタの海民

 第5章 マングローブデルタに暮らす
  1 村のマングローブ植林
  2 マングローブデルタの自然生態
  3 サルームデルタの景観と村の生活
  4 マングローブデルタの生業とジェンダー
  5 精霊や魔物が語られる空間
 第6章 資源とつきあう
  1 人と資源の関係を問い直す
  2 エビの生産を概観する
  3 エビの漁獲と流通
  4 エビ資源の管理
  5 資源管理から地域経営へ

 第7章 女性が働く
  1 女性労働の役割
  2 女性による貝の採取と加工
  3 女性グループの動態
  4 地域資源とうまくつきあう

 第8章 他者を率いる
  1 地域が求めるリーダー
  2 マングローブデルタの女性リーダーたち
  3 リーダーの条件と役割
  4 西アフリカ沿岸社会のリーダー像

第Ⅳ部 海民の社会生態

 第9章 海民社会を考える
  1 西アフリカの海民社会
  2 自然生態からの脅威
  3 市場システムからの脅威
  4 社会の変化に立ち向かう力

エピローグ 雨の匂いとマングローブ賛歌

 あとがき
 索 引

前書きなど

 開発コンサルタントとして、近代化という呪文を背負い「社会の発展を目指して行われる外部からの資本投入」である開発援助に参加するという行為と、「地域に生きる生活者たちが……経済的自立性をふまえて、みずからの政治的・行政的自律性と文化的独自性を追求する」地域主義への想いとの乖離という自己矛盾への自分なりの解答である。
 おそらくその乖離を埋める完全な解答はみつけられないだろう。そう思い悩んでいたとき、『朝日新聞』に掲載されたひとつの記事をみつけた。「アフリカの民の力生かす援助を」という題で、勝俣誠さんが書いたものである。そのなかに、「アフリカで今日最も使われていないものは、地域の人びとの専門性と知恵であるということを、しっかり認識することである」とあった。
 その言葉を座右の銘として、サルームデルタやプティコートの社会やそこで暮らす人びとと向き合った。そして、自分にできることは、近代化に裏付けられた技術を対象地域の自然生態や社会経済的な事情、技術体系にあわせて改変し、その地域の人びとがもつ専門性や知恵を活用して適用する「適正技術」への仲介者として生きることではないか、と考えた。ただし、その適正技術の適正性が「誰にとっての」あるいは「どういう立場からの」適正性なのか、またそれを「誰が判断するのか」は、常に留意しておかなければならない。
 それでもなお、自己矛盾を完全に解決することはできない。その煩悶のなかで、ドナーであり、開発コンサルタントの顧客でもある国際協力機構(JICA)という組織の論理に迎合した仕事ではなく、対象となる地域の事情とそこに住む人びとに寄り添い、その地域の人びとが将来、政治・経済的な自律性を養い、文化的な独自性を保持するために必要なものは何かを自分の目で見て確かめ、実行するための見識を養い、それに基づいて必要となることへ、堅実に結びつけていけるような支援に努める。そういう努力を続けていくことが、開発援助の実務に携わる者としての責務だと考える。それが、本書を書き進めるなかでたどり着いた、私なりの現時点での解答である。
(エピローグより抜粋)

著者プロフィール

北窓 時男  (キタマド トキオ)  (

1956年 兵庫県生まれ。
1997年 長崎大学大学院海洋生産科学研究科博士後期課程修了、水産学博士取得。
1999年 地域漁業学会奨励賞受賞。
 青年海外協力隊(1979~82年、フィリピン)、民間会社(1985~91年、インドネシア)で東南アジアの漁業・漁村・漁民の実態を調査。農林水産省国際農林水産業研究センター水産部科学技術特別研究員(1998~2001年)を経て現職。
現 在 アイ・シー・ネット(株)コンサルティング部シニアコンサルタント(2001年~)。大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員(2012年~)。国際開発コンサルタントとして零細漁村振興に関わるかたわら、海域東南アジアや西アフリカの海に生きる人びとを長年、社会と生態の視点からみつめてきた。
専 攻 海洋社会学。
著 書 『地域漁業の社会と生態――海域東南アジアの漁民像を求めて』(コモンズ、2000年)、『熱帯アジアの海を歩く』(成山堂、2001年)、『海のアジア③島とひとのダイナミズム』(共著、岩波書店、2001年)、『カツオとかつお節の同時代史――ヒトは南へ、モノは北へ』(共著、コモンズ、2004年)。

上記内容は本書刊行時のものです。